144F2機のスプリアス測定        ホームに戻る

新スプリアス規格(2025/11/14)
デジタルの時代に逆行してアナログ回路で組んだ144F2機ですが、FT817で会得した手法でスプリアスを測定してみましょう。 なお、以下の測定に関しては現時点で私が理解している範囲で進めており、理解不足の点があれば今後修正していきます。

 JARDの資料より

無線設備規則 第一章 第二節 第七条 別表第三号(令和5年12月22日施行) から抜粋

今回の測定は下表の赤字部が該当

基本周波数帯、モード

空中線電力

帯域外領域

スプリアス領域

BN(必要周波数帯)

±2.5BN

30MHz以下
(41項にアマチュア用の例外規定あり)

1W〜5W

50mW以下かつ40dB

50μW以下

4kHz未満

±10kHz

1W以下

100μW以下

50〜54MHz

1W〜50W

1mW以下かつ60dB

60dB

25kHz未満

±62.5kHz

1W以下

100μW以下

50μW以下

144〜146MHz、FM(F3E)

1W〜50W

1mW以下かつ60dB

60dB

1W以下

100μW以下

50μW以下

430440MHz
(10
項にアマチュア用の例外規定あり)

1W50W

1mW以下かつ60dB

60dB

1W以下

100μW以下

50μW以下

不要発射測定周波数範囲

送信周波数の範囲

測定周波数範囲

9kHz〜100MHz

9kHz〜1GHz

100MHz〜300MHz

9kHz〜第10高調波

300MHz600MHz

30MHz3GHz

600MHz5.2GHz

30MHz〜第5高調波


LPFの追加(2025/11/14)
スプリアスとしては規格の50μW以内にはなんとか納まりましたが、もう少し改善したいため終段の後にLPFを1段追加しました。

測定系統図(2025/11/14)


帯域外領域

無変調で測定(2025/11/14)

  1. JARDの資料では帯域外領域でのスプリアス測定は「搬送波を無変調で送信、占有周波数帯域幅の外側のスプリアスを測定」となっています。
  2. 測定系統図においてVRを左に回し切った状態を「無変調」とします。

◆帯域外領域の測定(2025/11/14)

  1. 144F2→BNC/SMA変換コネクタ→30dBアッテネータ→SMAケーブル→スペアナ の順に接続する。
  2. スペアナは145.000MHzを中心に±100kHz(144.9MHz〜145.1MHz)を表示するよう設定する。
  3. 必要周波数帯BNは25kHz未満、帯域外領域は±100kHz、RBWは200Hz。
  4. 帯域外領域では3T=144.9841MHzの-57.4dBm(1.81μW)が最大であり、規格の100μW以下に入りました。

測定環境

スプリアス

周波数

電波形式

搬送波電力

必要周波数帯幅

帯域外領域

RBW

アッテネータ

周波数

強度

規格限度値

判定

145.000MHz

F3E

0.6W (28dBm)

25kHz

±100kHz

200Hz

30dB

144.9841MHz

1.8μW

100μW以下

適合

 帯域外領域の測定


スプリアス領域

スプリアス領域(2025/11/14)
スプリアス領域における測定方法は、「正弦波1kHzで最大周波数偏移の70%に設定後、疑似音声に切り替え10dB増加」とのことで、1000Hzの正弦波と疑似音声の音源が必要です。音源のサイト→ITU-T G.277準拠疑似音声発生サイト

◆周波数偏移(2025/11/14)

  1. 最大周波数偏移を±5kHzとし、測定時はその70%の±3.5kHzとします。
  2. 「疑似音声に切り替え10dB増加」とあり、音源サイトの画面は下のように「Gain -20dB」がデフォルトなので、これを-10dBにします。
  3. JARDの資料にはJ3E、A3E、H3Eは「同じレベルの疑似音声に切り替え」と書いてありますが、F3Eは「同じレベル」とは書いてありません。上記音源サイトの出力電圧をしらべると「1000Hz正弦波 -20dB」よりも「疑似音声 -20dB」の方が4割ほど電圧が高いため、ここは同じレベルに揃えてから10dB増加(3.16倍)すべきではないかと思います。

 音源サイトの画面

スプリアス領域の測定(2025/11/14)

  1. パソコン(1000Hz)→144F2→BNC/SMA変換コネクタ→30dBアッテネータ→スペアナ の順に接続する。
  2. スペアナの周波数範囲を144.990MHz〜145.010MHzに設定する。
  3. 周波数偏移がほぼ±3.5kHzになるようVRを調整し、その時の電圧を低周波電圧計で読む。(4mVでした)
  4. 音源を疑似音声に切り替え、1000Hzの時と同じ電圧(4mV)になるよう音量を調整する。
  5. パソコン画面の音源のGainを-10dBに増やす。(デフォルトは-20dB)
  6. スペアナの周波数を9kHz〜1.5GHzに設定する。
  7. スプリアスとしては2Tの290.6MHzが-50.2dBm(9.6μW)で観測できました。

測定環境

スプリアス

周波数帯

電波形式

搬送波電力

測定周波数範囲

アッテネータ

周波数

強度

規格限度値

判定

145.000MHz

F3E

0.7W (27dBm)

9kHz1.5GHz

30dB

290.6MHz

9.6μW

50μW以下

適合

  
(左)1000Hz正弦波 周波数偏移±3.5kHz (右)疑似音声に切り替え+10dB

 スプリアス領域の測定(9kHz〜1.5GHz)

◆測定を終えて(2025/11/14)
SSBのリグは多数作ってきましたがFMは経験がなく、暗中模索の中で作ったものの消化不良のまま押し入れの中で10年以上眠っていました。今年になってスペアナを手に入れ、JARDのスプリアス測定に関する資料を参考に、FMモードの測定を経験したことがきっかけとなって再生を思いつき、何とかFMのリグに仕上げることが出来ました。自分にとって未踏の分野でも、同じ経験を何度か繰り返すことによって次第に判断基準が身に付き、更に適切な測定器があれば絶対的評価を下すことが出来ます。根底にあるのは「出来ることが1つ増えた」という満足感で、それが行動の原点なのでしょう。

<完了>


参考資料

  1. 総務省無線設備規則
  2. JARDのスプリアスに関する資料
  3. CQ出版社 ダウンロードサイト 疑似音声発生器の製作
  4. ITU-T G.277準拠疑似音声発生サイト