50MHz SSB 2Wトランシーバ
◆はじめに(2005/06/11)
50MHzは自作のしやすさとアンテナの小ささ、移動運用、Eスポによる交信など、アマチュア無線を楽しみが凝縮されたような周波数と思います。これ以上になるとアンテナは更に小さくなるものの、リグの自作は少し困難でEスポ通信の楽しみがなく、これ以下になると技術的には容易でもアンテナが大きくなります。このページでは入手しにくくなったBM用ICの使用をやめ、リング変調方式にするなど、SSBトランシーバの原点を意識した製作を進めます。
◆大まかな仕様(2005/05/28)
◆その他の特徴(2005/05/28)
◆まずは試作から(2005/05/28)
回路を決めるには試作を行います。手持ちのケースに平ラグ板を使っておおよその回路を組み、動作確認を行いながら回路定数を決めていきます。一通りの回路が決まれば試作を終わり製作にかかります。リグが完成しても実際に運用すれば変更したい部分も出てきますが、ラグ板配線は回路変更が容易なので、必要に応じ改造を加えていきます。
試作機
◆配置図(2005/05/28)
回路図から下のような配置図(実体配線図)を起こします。ラグ板の上に部品をどう配置し、配線をどう引き回すか。高周波部分の配線はできるだけ短く、どう配置すれば無駄がないか。一番頭を使いますが、一番楽しい時間でもあります。
◆製作はケース作りから(2005/05/28)
私がケースを自作するのは、好きなデザインで最適なサイズのものを安く手にでき、またどこかで加工ミスがあっても、その部材だけ作り直せば容易に修復が可能だからです。しかし四角い箱を作るのは意外に難しいもので、机の上においたらガタガタすることはしばしばあります。そんな時はあけた穴をヤスリで修正し、各部分が直角になるよう調整しますが、それがきかない場合は部材を作り直す勇気も必要です。確かに時間はかかりますが、リグの製作において手を加える部分が多いほど、より自分のものとして愛着が湧くのではないでしょうか。無論「そんな時間が無い」「そんなに手間をかけられない」方は市販のケースをお使いください。でもいずれ時間ができたらケース作りにチャレンジしていただきたいと思います。
◆ケース作り(2005/05/28)
ケースは正面パネル2mm、後面パネル1.6mm、それ以外は1mm厚のアルミ板と、9*9*1mmのアングルを使いました。ケースの製作で約4時間、パネルの穴明けを含めると一日仕事です。これから回路を組み上げ、調整など動作確認をしてから、一旦分解して塗装とレタリングをします。配線中はケースをひっくり返したり、あちこちぶつけて塗装膜を痛めることがあるため、そのような順番にしています。
ケースの各部材 組み立てたケース
◆バリコンと減速機(2005/05/28)
同調用にはデジットで買ったFM用3連のエアーバリコン(@380)を使います。ポリバリは小型で使いやすいですが、長期的な安定性には疑問があります。その点でエアバリは安定感があり、ここではプリント基板に固定して使うことにしました。銅箔面にはファインチューニング用のバリキャップも取り付けています。また、6:1の減速機とタイトカップリングを使い締結します。
VCの取り付け 裏面 カップリングを使って減速機に締結
8mm長のスペーサを使ってVCを固定 2mm厚アルミを▽に切って作ったカーソル(裏から2mmビスで引っ張り締め)
◆ラグ板の使用(2005/05/28)
回路は平ラグ板(20Pを4枚、15Pを2枚)を使って組んでいきます。ケースの中央に1mm厚のアルミで作ったシャーシがあり、その上下にラグ板をM3×40mmビスの頭を落としたものとナットを使い固定します。ラグ板配線はプリント基板に比べると数倍の面積を使いますが、配線を終えてからでも部品交換が容易なことや、回路変更も比較的簡単です。リグというものは完成してからでも常に改造の誘惑に駆られます。改造のしやすい配線方式にすることは、創作意欲を満足させるためにも必要なことではないでしょうか。
ラグ板を取り付け(上面) 下面 ラグ板の固定方法
◆コイルの製作(2005/06/04)
このリグに使うコイルはファイナル部とBPFはトロイダルコアを使いますが、それ以外はサトー電気で購入した10K型(5個500円)や手持ちのボビン(ミツミ製のものを巻きなおした)で、巻き数はFCZコイルにあわせ、14t/5t(FCZ7と同等)が7個、6t/2t(FCZ50と同等)を7個作りました。ただしセンタタップのついたものはそれぞれ1個で、他はセンタタップをつけていません。
「コイルまで自作するのか」と思われるかも知れませんが、昔はテレビ用に作られた56MHz10K型コイルが安く大量に出回っていたので、それを巻きなおして使うのが習性になっているからです。今ではサトー電気でボビンがFCZコイルよりは安く手に入るため、空ボビンさえ持っていれば、色々な周波数のコイルを作ることが出来ます。「コアの材質が違うじゃないか」とのご指摘があるかも知れませんが、実質的に使えるので気にしていません。hi コイル巻気が完了したら、ケースに巻き数をマジックで書いておきましょう。これはどんなコイルを使っていたか、後々チェックするのに便利だからです。ケースの表面には少し油分があるので、ティッシュでふき取ることもお忘れなく。
通販で買った10K型ボビン 1セットのボビン
コイルの巻き始め コイルを巻き終える 巻き数を書いて完成
◆配線の色分け(2005/06/10)
0.3SQのビニール線を使い回路チェックを容易にするため色分けします。黄色(送受共通)、青(送信部)、赤(受信部)の3色で、高周波を長く引き回すところには0.8QEVの同軸、低周波を長く引き回す場合はシールド線を使いました。またリード線が交差して接触しそうな部分は、細見のエンパイヤチューブで保護しておきます。またアースは卵ラグを使いシャーシに落とします。
◆VXO部(2005/06/05)
VXO用の水晶は市販のHC18U(13MHz)を使いました。2SC1906で発振し、2SK241で3逓倍します。出力が単同調では2倍波が強く現れるため、複同調としています。VXO用のコイルは上記ボビンに0.1のウレタン線を40回巻いて作りました。13MHzの水晶に対しては、この程度の巻き数が合います。
◆RF増幅、MIX部(2005/06/05)
高周波(RF)増幅はデュアルゲートFETの3SK51(秋月で@80)を使います。もし入手できない場合は3SK73(サトーで@240)が使えます。MIXは2SK241を使いVXOからの出力をソースに注入して混合し、11MHz台の中間周波数を得ています。
◆水晶フィルタ(2005/06/06)
ここでは以前サトー電気の通販で購入した11.2735MHzのフィルタを使います。既にこのフィルタは入手出来ませんが、代替品として9MHzのものをサトー電気の通販で買うことが出来ます。その場合VXO用の水晶は13.76MHzほどのものが必要になり、これはアルト電子や川崎電波で特注することが出来ます。
◆中間周波増幅部(2005/06/06)
3SK51を使った2段増幅です。ラグ板配線でデュアルゲートFETを使うには周辺部品が多くて大変ですが、空中配線も併用してコンパクトに収めることにしました。部分的にエンパイヤチューブを使い、リード線の接触を予防します。
◆検波、低周波増幅、AGC増幅部(2005/06/06)
ゲルマダイオード(1N60)を4個使った検波部です。スピーカからの音が小さいので、おかしいなとチェックしたら、1つのダイオードの極性を間違えて取り付けていました。検波後に低周波増幅して次段につなぎます。また低周波増幅後AGC増幅しダイオードで倍電圧検波してマイナスのAGC電圧を作ります。
◆電力増幅部(2005/06/05)
LM386による一般的な回路です。スタンバイ時のポップノイズ除去のため、抵抗と電解コンデンサによるミューティング回路と、TRによるスイッチング回路を追加しています。また電源回路には220μ(2)+10Ωのデカップリング回路をいれ、音量を上げた時の発振防止策としています。
◆スタンバイ回路(2005/06/05)
コンプリメンタリTRの2SC2120,2SA950を使った簡単なスイッチング回路です。
◆平衡変調部(2005/06/11)
コンデンサマイクからの音声出力を2SC1815で増幅し変調部に加えます。また局部発振の周波数は11.272MHzになるよう、トリマコンデンサで調整します。平衡変調はショットキーバリヤダイオード1SS99を4本使ったリング変調で、ダイオードの特性をそろえるため10本ほどのダイオードを準備し、テスタの抵抗レンジ(1KΩ)で測定し、よく似た特性(抵抗値)のものを4本選びます。平衡変調によってDSB波が作られ、その後2SK241により1段増幅して水晶フィルタに加え、USB波のみを取り出します。
マイクアンプ部 局発部 平衡変調部
◆周波数変換部(2005/06/11)
2SK241を2本使ったバランスドモジュレータで、入力部には水晶フィルタからの11MHz台の信号、ソースにはVXOからの39MHzの信号を加えて合成し、2段のBPFを通して50MHzの信号を取り出します。
◆励振増幅(2005/06/11)
2SK241,2SC2053により周波数変換部からの信号(SSB波)を増幅し終段部に加えます。
◆終段部(2005/06/11)
2SC1971はエミッタがフィンにつながっているため、直接シャーシに固定することが出来ます。5W程度までの増幅なら、HFからVHFまで使いやすいTRです。入力部と出力部は同調回路を使い、終段回路の設計によりL、Cの値を決めました。
◆送受切替(2005/06/11)
ここではオムロンのG2Q-187P-V(DC9V)というリレーを使いました。9V用なので75Ωの抵抗を直列に入れ、電圧を落としています。またコイルと並列にシリコンダイオードの10D1をつなぎ、サージ電圧を抑制します。
◆BPF、送信出力表示(2005/06/11)
トロイダルコアT37−10を使ったコイルと、トリマコンデンサによるツインTフィルタです。送信出力は1Pのコンデンサで取り出し1N60で整流します。
◆Sメータ回路(2005/06/11)
Sメータはシリコンハウスで購入した横振れのバッテリチェッカ用のメータで、S目盛りを書いた紙を貼り付け、Sメータとして使います。
上面 下面
◆スピーカーの取り付け(2005/09/18)
スピーカーは口径6cmのダイナミックスピーカーを使い、ケースの底面に取り付けました。ケースに2.2mmのドリルで穴を開け、1mmのアルミ板で作った押さえ金具4個でスピーカーを固定します。
スピーカーホール 押さえ金具 取り付けた状態
動作確認と調整
◆準備するもの(2005/06/12)
周波数カウンタ 高周波電圧計 QRPパワー計 低周波発振器
◆配線を確認(2005/06/19)
このラグ板方式は当たり前のことですが、間違いの無い配線をすることが基本です。回路図と見比べながら各部をチェックしてください。
◆VXO部(2005/06/12)
2SC1906のエミッタに周波数カウンタをつなぎ、バリコンを最大容量の位置にしてVXOコイルのコアをまわしながら周波数が12.955MHzになるよう調整します。これは(50.14−11.2735)/3=12.955 という意味です。またバリコンを最小容量の位置にして12.995MHzほどになっていれば周波数可変できていることになります。また周波数カウンタを外してエミッタにRFプローブをつなぎ、バリコンを回してメータの振れがほぼ一定(周波数が下がると出力は若干下がる)であればVXOとして正常な動作をしていることになります。しかしメータの針がピクピクと動くようであれば異常発振しているので、コイルと並列につないだ抵抗の値を少なくしてください。次に高周波電圧計を出力(T11の2次側)につなぎ、メータの振れが最大になるようコアを回して調整します。このときT10とT11が39MHz台に同調しているか周波数カウンタをつないで確認してください。場合によると2倍波に同調していることがあるので気をつけて。
◆局部発振器(2005/06/19)
T14の2次側に高周波電圧計をあて、出力を最大にします。また周波数カウンタをつなぎ、トリマを回して周波数を11.272MHzにあわせます。
◆受信部の調整(2005/06/19)
出力に近い側から動作確認をします。
◆平衡変調部の調整(2005/07/10)
◆送信部の調整(2005/07/10)
塗装して完成です
<完了>