7MHzCWトランシーバの製作

◆はじめに(2013/1/5)

10年ほど前に7MHzのCWトランシーバを自作して数局交信したものの、長くは続かずリグは押入れの中へ。「電信より電話の方が楽」との気持ちがあり、キーよりはマイクを持ってしまいますが、QRPでも世界とQSOできるCWは通信の原点でもあり、これまでの反省点も踏まえ新たにCWトランシーバの製作を進めてみようと思います。

 10年前に作った7MHzCW機


◆リグの構想(2013/1/5)

CW機というものは本来シンプルな構成なのですが、未熟なオペレータにとって運用の負担を軽減するにはオプションも必要になります。エレキーは外付けとし、以下のような構成を考えました。

  1. 周波数は相手局の多い7MHzとする。
  2. 送信と受信では局発の周波数を800Hzほど変化させ、トランシーブ操作が出来るようにする。
  3. 終段は2SC2078を使い、出力は2W程度とする。
  4. VX0の発振部はケースの中に入れて周囲の温度変化緩やかに受ける構造とし、RITで受信周波数を微調整できるようにする。
  5. 受信部は6素子の狭帯域水晶フィルタを使った高1中2のシングルスーパーとし、低周波段には高域カットのLPFを入れる。
  6. 送受切替はブレークイン回路を採用する。
  7. 部品は現状で入手しやすいものを使う。


共通部

ケース(2013/1/12)
ケースは以前fujiyamaの開発に使った幅160×高70×奥行220mmのものを使うことにしました。ツマミとかスイッチが多めに付いており試作には便利です。回路は平ラグ板(20P×4枚+12P×2枚)に組み、VXOの発振部のみはプリント基板を使用します。バリコンには6:1の減速機をつけているのでチューニングは容易になっています。

VXO&RIT部(2015/9/26)

  1. 20MHzの水晶を使ったVXOですが、周波数安定化のため発振部だけはプリント基板に組み、基板の上にカバーを被せて周囲温度の変化を緩やかに受ける構造にします。
  2. RITに供給する送信部と受信部の電圧はそれぞれに9Vの三端子レギュレータで安定化し、逆流防止用のシリコンダイオード1S2706Aを通すため、電圧は8.4Vに降下します。そのためRITのセンター位置や送信およびRIT−OFF時の電圧は半分の4.2Vにセットします。
  3. RITの可変範囲は自分の聞きやすい音に微調整する範囲とし、300Hzもあれば十分と考えています。スプリット運用といった高度な運用は考えていません。hi

 
(左)VXO基板 (右)RIT部に使った3端子レギュレータ

電力増幅部(2013/2/2)
受信時にスピーカをならすための電力増幅部は、送信時にもサイドトーンを鳴らすために使います。また送受切替時に発生するクリックノイズは耳障りなので、前段に2SC1815を入れ、ベースに電圧を加えることでノイズを抑えています。

ノイズ抑制部(2015/10/9)
7C1機には送受切替時に発生するクリックノイズを抑えるため2SC1815を使った抑制回路をつけており、この回路の効果をオシロで観測してみました。抑制回路が無い場合はA点のピーク電圧は送信→受信切替時で3.8V、受信→送信で0.5Vとなり、スピーカーからはガリッという耳障りな音が聞こえますが、抑制回路を付けるとクリックノイズの発生は 送信→受信/受信→送信とも20mVに下がり、スピーカーから出てくる音は気になりません。原理としては送受切替え時に発生する電源からのパルス性ノイズが低周波増幅部に入り込んで耳障りな音になるため、ノイズが発生する瞬間だけA点の電圧をグランドに落とすようにしています。

  1. 受信→送信 : 送信部電圧12Vを10kΩを通して2SC1815のベースに加えてコレクタ−エミッタ間を通電状態にし、A点の電圧をグランドに落としてクリックノイズを抑制します。
  2. 送信→受信 : 2SC1815のベースに並列接続しているケミコン22μの残留電圧で通電状態をわずかな時間保持してクリックノイズを押さえ、放電後はA点を低周波信号が通常通り流れるため、音声として聞こえることになります。

 ノイズ抑制回路

 
(左)ノイズ抑制回路なし (右)ノイズ抑制回路あり

ブレークイン回路(2013/1/19)
ブレークインとはキーをたたき始めると送信状態になり、たたき終わると受信状態になる回路で、いちいちスタンバイスイッチで送受を切り替える必要がありません。フォーンで言えばVOXに当たるものでしょう。また@フルブレークインとセミブレークインがあり、それぞれに特徴があります。

@フルブレークイン
キーがONになると送信、OFFになると受信というように、頻繁に送受が切り替わるもので、多局からのブレークがあってもすぐに気づくことが出来るなど、高度なオペレーションに向いていますが、反面送受の切替時にクリックノイズが発生したり、ノイズを抑えようとすると送信波形が鈍ったりと、リグ作りの難しさがあります。

Aセミブレークイン
文字を連続して打っているときは送信状態が続き、文字を打ち終わると受信状態になるという回路です。高度なオペレーションが必要なければ落ち着いて打電ができ、通常の運用には十分と思います。

どちらを使うかは試作しながら決めようと思いますが、運用初心者にはセミブレークインで十分でしょう。

アンテナ切替部(2013/01/19)
切り替え用ダイオードの三菱MI301はV/UHFまで使え、最大通過電力5Wと言う仕様です。送信時に順方向の電流を流すことで高周波信号がアンテナ側に流れます。受信側のダイオードには逆バイアスとなるため、送信信号は受信側には流れません。送信時はダイオードに20mAほど流しますが、受信時は通過信号が弱いため省エネの意味で数mAに抑えています。このダイオードに流す電流を調整すればゲインコントロールが出来るので、遠隔操作でアッテネータとして使うことができるでしょう。

局部発振回路(2013/01/19)
2SC1815の無調整発振回路ですが、水晶と直列に6.8μHのマイクロインダクタを入れることでVX0になっています。送信時は12.9575MHzで発振、受信時はダイオードに電流を流して800Hzほど発振周波数を下げ、ビート音が聞こえるようにしています。


受信部

◆高周波増幅、混合(2013/01/26)
2SK241を使った定番の回路です。高周波増幅ではゲートにAGC電圧を加え、ゲインを自動でコントロールしています。

◆水晶フィルタ(2015/10/3)
12.96MHzの水晶を6個使いラダー型のフィルタを組みました。フィルタの中心周波数は12.9571MHzで、水晶の表示周波数に対し3kHzほど低くなりました。C1=220PF、C2=470PFとして帯域は420Hzほどです。

水晶フィルタのインピーダンス計算と9:1トランスの追加(2015/9/18)
PICKキーヤを内蔵するかたわら回路を見直してみると気になる箇所が見つかりました。受信部の水晶フィルタは12.96MHzの6素子ですが、水晶の端子間容量を測ってみると2.3PF、それからストレー容量0.4PFを引いて計算してみると帯域500Hzの場合は負荷インピーダンスが61Ωとなりました。SSBでは数100Ωでも帯域が狭くなると随分低くなるため、トロイダルコアのFT37−61で9:1のトランスを作りフィルタの両端に入れることにしました。

中間周波増幅(2013/2/9)
2SK241により2段増幅をします。ゲートには高周波増幅と同じくAGC電圧を加え、強力な信号が入ったときに動作を抑制しています。

検波(2013/2/9)
ダイオードを4個使ったリング回路に局発からの信号を注入して音声信号を取り出しています。半田付けするときにダイオードの極性を間違えると、音声出力が小さくなるので気をつけてください。

AFフィルタ(2013/1/26)
100mHのインダクタと224(0.22μF)を2個使った1段のπ型フィルタを低周波増幅段に入れています。カットオフ周波数は1400Hzほどですが、SSBトランシーバに入れた時も隣接する信号のキンキンした音や高域の雑音をほどよくカットでき、イライラ感がやわらぐ感じがしました。

AGC増幅(2013/2/2)
2SC1815で低周波信号を1段増幅したのち、ダイオードで倍電圧整流してマイナスの電圧を作り、高周波および中間周波増幅部のゲートに加え増幅度を抑制します。またその電圧を利用してSメータも振らしています。倍電圧整流後に220μのケミコンを入れていますが、この値が少ないとボコボコというモーターボーディングを起してしまうのでご注意ください。


送信部

◆周波数変換部、前置増幅部(2013/2/2)
VXOからの20MHzの信号と局発からの12.96MHzの信号をTA7358Pに加え、2段のバンドパスフィルタを通して7MHzの信号を取り出し、2SK241で1段増幅します。また2SK241のドレイン電流をブレークイン回路の2SA1015で制御しキーイングを行います。

励振増幅部、終段増幅部(2013/2/2)
終段を働かすために十分な励振増幅を行った後、2SC2078を使ってC級増幅を行い、2W程度の出力を取り出します。またL型に曲げたアルミ板へ絶縁シートを間に入れてポリカーボネートのビスで取り付け放熱します。2SC2078はサトー電気にて210円で販売されていますが、以前は170円ほどで買えており、徐々に在庫が減ってきているのでしょう。また終段のコレクタ電圧をTESTスイッチでON/OFFできるようにしており、運用時はONに、キーイングの練習など電波を出したくない時はOFFにして使います。

LPF(2013/2/9)
トロイダルコアを使った定番の2段ローパスフィルタで、7MHz以上の高調波を抑制するためのものです。

エレキー機能の追加(2015/9/11)
7C1機はストレートキー用で、エレキーを使う場合は外付けになりますが、知人よりエレキー機能を持つPIC(12F629)を譲っていただきましたので、早速組み込んでみました。ロジックICを5個使って組んだエレキーに比べると随分コンパクトになり、平ラグ板の空きスペースに納まっています。スピードコントロールは正面パネルからできるので、使い勝手もよくなりました。


問題点と対策

◆ブレークイン回路とクリックノイズ(2013/2/9)
フルブレークインとセミブレークインの両方を試してみましたが、受信から送信に切り替わったときのクリックノイズがなかなか取り除けません。セミブレークインは送信が始まるときの1回だけですが、フルブレークインの場合はキーをONにする毎回になり耳障りなので、とりあえずセミブレークインで進めます。なお送信から受信に切り替わるときのクリックノイズは、ノイズカット2SC1815のベースに10μを入れ、少し動作を遅らして抑制しています。

◆クリックノイズ抑制(2013/2/16)
CWトランシーバーでは送信時もサイドトーンを鳴らすために常時LM386を動作させており、クリックノイズ対策にSSBトランシーバとは違った工夫が必要になります。送信から受信に切り替わる時に発生するクリックノイズは2SC1815のベースに接続した100μによりの時定数で動作を遅らす手法によって納まりましたが、セミブレークインで最初にキーをONしたときのクリック音だけが取れませんでした。しかしノイズカット用2SC1815のベースに2種類の電圧(ブレークイン2SA1015のコレクタ電圧+リレーからの送信時電圧)を加えることで、動作を速めると共に動作を維持することができ、耳障りな音を抑えることが出来ました。

◆送受切替リレーの音(2013/2/16)
送受切り替え用のリレーは当初秋月で買ったHSIN DA(シンダ)プレシジョン製のY14H−1C−12DS(80円)を使いましたが、ラグ板の上に乗せているせいか切替音が大きく感じたので、OMRONのG5V−1(12V)に交換したところ静かになりました。

励振増幅を2SC1815に交換して動作の安定化(2013/2/16)
励振増幅段の石として2SC1906(fT1000MHz)を使っていましたが、7MHzではゲインがありすぎるせいか発振気味になったため、2SC1815に変更することで動作の安定化をねらいました。

海外放送の混入(2015/9/26)
製作当初の周波数関係は、VXO=18.1MHz、中間周波=11.0592MHzでしたが、夜間になると海外放送らしきモゴモゴとした音声が入るため周波数関係を調べてみましたが良くわからないため、ためしにVXO=20MHz、IF=12.96MHzに変更したところ音声の混入はなくなりました。

<完了>