FET(電界効果トランジスタ)

◆はじめに(2020/7/15)
 真空管時代が長かったOMはゲルマニウムトランジスタが世に出た頃、真空管に比べると性能が劣っていたり、バイアスのかけ方など動作が違ったこともあって、なかなか馴染めなかったと聞いています。1970年前後にFETのMK10が三菱から売り出され、動作が真空管に似ているとのことで三極管の代わりに使ったこともありました。その後は様々なFETが市販され、2SK19、3SK35などの時代を経て、2SK241、3SK73といった使いやすい性能のものが出てきました。自作においては製作記事の回路をそっくり真似してもそれなりの性能が出ていたため、バイアスなどについても「トランジスタとは違うんだ」程度の認識でした。しかし同じ回路でリグを何台も作っていると 「これで良かったのかな? 本当に正しい使い方なのかな?」 と思うこともあり、改めて文献を読み返しながら、おぼろげでバラバラだった知識をリセットし、FETの基本的なことから調べてみることにしました。


1970年ごろに市販された三菱のMK10−2(@280)の頭部には種別を示す黄色のマークがある。MK10−3はオレンジ色だった(かな?)


FETとは(2020/7/15)

  1. FETとはField Effect Transistor(電界効果トランジスタ)の略で、トランジスタのコレクタ電流はベース電流によって制御され増幅や発振といった動作をしますが、FETのドレイン電流はゲートにかかる電圧によって制御されます。
  2. ドレインからソースへ向かって流れる水路(チャネル)の間にあるゲートという門を開閉することによって、水量を調整しているというイメージです。

 
(左)トランジスタとFETの各電極の名称 (右)FETのイメージ図

◆特徴としては(2020/7/15)

  1. 電圧(電界)で制御する素子である。
  2. 入力インピーダンスが非常に高く、接合型で100MΩ以上、MOS型は更に1万倍以上高い。
  3. 高周波特性が優れており、直流からUHFまで使用できる。
  4. 温度特性が良い。
  5. 低雑音である。
  6. 周波数特性が良い。
  7. 伝導特性が2乗特性であり、混変調に強い。

 増幅回路として使用した例

FETの分類(2020/7/15)

 (*2 P41)

1.接合型とMOS型(2020/7/15)

  1. 接合型はP型半導体とN型半導体を接続したものです。
  2. MOS型はP型とN型の間が薄い絶縁層(酸化膜)によって分離されています。

2.Pチャネル型とNチャネル型(2020/7/15)

  1. P型はマイナスのドレイン電圧で使い、型番としては「J」のつく2SJ○○、3SJ○○があります。
  2. N型はプラスのドレイン電圧で使い、型番としては「K」のつく2SK○○、3SK○○があります。

 (*1 P35)

3.デプレッション型とエンハンスメント型(以下はN型で説明)(2020/7/15)

  1. デプレッション型はゲートにマイナスの電圧をかけて使います。接合型FETはこのタイプです。
  2. デプレッション型+エンハンスメント型はゲートにマイナスからプラスの電圧をかけて使うことができ、2SK241や3SK○○はほどんどこの型です。
  3. エンハンスメント型はゲートにプラスの電圧をかけて使うため、トランジスタと同じような使い方ができ、スイッチングに向いています。

   (*6 P7)


接合型FET(Junction FET = JFET)

  1. 下の図はFETの原理を示しており、ゲート(P型)にマイナス電圧をかけるとN型のチャネルに空乏層という自由電子のない部分ができ、ドレイン電流が流れにくくなります。
  2. ゲート電圧を増減することでドレインからソースへ流れる電流を制御し、増幅動作を行います。

参考(2020/7/24)

  1. N型半導体はシリコンやゲルマニウム(4個の価電子を持つ真性半導体)に、ヒ素などの不純物(5個の価電子)をわずかに混ぜたもので、自由電子の数が正孔よりも多く、マイナスの性質を持っている。
  2. P型半導体はシリコンやゲルマニウム(4個の価電子を持つ真性半導体)に、ホウ素などの不純物(3個の価電子)をわずかに混ぜたもので、正孔の数が自由電子よりも多く、プラスの性質を持っている。
  3. ドレインとソース間の電気が流れる部分を「チャネル」と言います。

(*6 P33) (*4 P110)
(左)接合型FETの原理 (右)P型半導体とN型半導体が接合したときの電流方向

 
(左)2SK19GRのゲート電圧対ドレイン電流 (右)測定回路

(*5 P34)  接合型FETの2SK19と2SK30

◆ゲートにはマイナスの電圧をかける(2020/7/24)

  1. 接合型FETは全てデプレッション型であり、ゲート電圧をマイナスにして使います。
  2. 下の回路図は自己バイアス回路と呼び、ゲート電圧Vgは0Vですがソース電圧Vsは1.6Vであるため、ソースから見たゲート電圧は−1.6Vとなり、マイナスの電圧がかかっていることになります。
  3. JFETはゲートにマイナスの電圧をかけることが基本ですが、ゲート(P型)にプラス電圧をかけた場合、PN接合のダイオードとして考えると0.6Vを超えたあたりからN型側に電流が流れるため、入力信号の振幅が小さい場合は1KΩをショートしたゼロバイアスでも使うことができます。

 自己バイアス回路

 (*1 P73)
JFETのゲート電圧は+0.6Vまでは動作する


MOS型(Metal Oxide SemiconductorFET

  1. ゲートとチャネル間が絶縁層の酸化膜によって分離されているもので、図の左から(金属)、(酸化膜)、(半導体)の順に並んだことが名前の由来です。
  2. 3SK35などの古い型番のMOS型FETは人体の静電気などで酸化膜が破壊されるため扱いには注意が必要でしたが、その後のものはダイオードで保護されており安心して使えるようになりました。
  3. MOS方にはゲートが1つのシングルゲート、ゲートが2つのデュアルゲートがあります。

1.シングルゲートFET(2020/7/31)
2SK○○や2SJ○○のMOS型のもので、FET規格表では2SK241がこれに該当します。2SK241は3本足ですがパッケージの内部で2個のFETがカスコード接続されたものであり、下図とは違った構造になると思われます。

  
(左)シングルゲートMOS型FETの構造図(*5 P34) (中)2SK241外観 (右)2SK241の内部接続(*3 P36)

2SK241の特性(2020/7/31)
以前は@40ほどで購入できた2SK241ですが、流通在庫が減り今では@200ほどになってしまいました。そういった型番の部品を取り上げるのは恐縮ですが、代表的な品番で本にもよく解説が載っているため引用することにしました。

  1. 2SK241はFET規格表のモード欄には「DE」と書かれており、デプレッション型+エンハンスメント型に該当します。下の測定回路でゲート電圧をプラスからマイナスへと変化させると、ドレイン電流は図のように変化しました。
  2. 内部の接続は上図の通りです。ソース接地部の負荷抵抗は次段のゲート接地部の入力インピーダンスになり、ゲート接地部の入力インピーダンスは大変小さな値なので、ソース接地部の利得も大変小さくなります。利得が小さければミラー効果による帰還容量Crssの影響は大変小さくなり、高い周波数まで安定した増幅ができます。(*2 P127)
  3. つまり、カスコード接続はソース接地部に利得を持たせないで、インピーダンス変換だけさせ、利得はCrssの影響を受けないゲート接地部で得る回路です。(*2 P128)

 (*2 P127)

 

2.デュアルゲートMOS型FET(2020/7/31)

  1. ゲートが2個あるデュアルゲート型FETは第1ゲートを信号入力に、第2ゲートを交流的に接地して使うことで、ソース接地回路とゲート接地回路のカスコード接続と等価になります。そのためドレインからゲートへの帰還容量が少なくなり、高域まで安定した増幅を行うことができます。
  2. 第1ゲートに信号入力、第2ゲートにAGC電圧を加えることでゲインの制御が容易にできる。

(*5 P34) 
(左)デュアルゲートFETの構造 (右)MOS型デュアルゲートFET

<完了>


参考文献(*印)

  1. (定本)続トランジスタ回路の設計 鈴木雅臣著 CQ出版社
  2. 新・低周波/高周波回路設計マニュアル 鈴木雅臣著 CQ出版社
  3. 高周波回路の設計・製作 鈴木憲次著 CQ出版社
  4. 解説・無線工学 野口幸雄著 CQ出版社
  5. 実用電子回路ハンドブック CQ出版社
  6. 2001年FET規格表 CQ出版社