7K、10Kコアの比較評価                               戻る

はじめに (2011/06/24)
高周波増幅回路の定番部品として使われているFCZコイルが2011年6月で製造・販売が停止となりました。34年にわたり供給されてきた日本の標準部品ともいえるFCZコイルだけに、これが手に入らなくなると自作派が減ってしまうのではないかと危惧されます。しかしコイルは手巻きできるものであり、OM諸氏はジャンクのボビンを解き、新しくコイルを巻いています。しかしそこで使われているコアが何MHzまで使えるものなのかは見ただけでは判りません。このページではサトー電気で販売されている7K、10Kボビンを題材に測定方法を考えてみることにしました。


測定方法 (2011/06/24)

高周波増幅の入力部をイメージし、7Kおよび10Kボビンにコイルを巻き、コアを交換しながら出力電圧を測定すれば、コアの性能を比較評価できるのではないかと測定回路を考えてみました。

  1. 入力 : 低周波発振器+FT817+アッテネータで10mWの信号を加える。

  2. 出力 : 測定回路に与える影響を少なくするため小容量のコンデンサを介して高周波電圧を測定する。

  3. 芯コアの位置はインダクタンスが最大になるコイルの中央とする。

  4. C1で同調を取り出力電圧が最大になるようにする。

  5. FCZ144(7S、10S)は被せるコアが無いため芯コアのみ使用する。

 
                空芯コイル                               コアを被せる


各周波数におけるコアの評価

基準は空芯コイル (2011/06/24)
コアの評価方法として空芯コイルで測定した高周波電圧を基準にした下記の”空芯コイル比”を使いました。値が小さいほどコアの損失が大きいと考えます。

空芯コイル比 = 各コアにおいて測定した高周波電圧(V) ÷ 空芯コイルで測定した高周波電圧(V)

◆7MHz(2011/06/24)

7MHz

7K

10K

コアの種類

コアなし

芯コア+被せるコア

コアなし

芯コア+被せるコア

空芯

サトー(緑)

サトー(黒)

空芯

サトー(従来品)

サトー(中国製)

高周波電圧計の読み(V)

3.4

3.8

3.8

3.2

3.6

3.6

空芯コイル比

1.0

1.1

1.1

1.0

1.1

1.1

(注)7MHzのFCZコイルはボビンとコアの形状が違うためデータは取っていません。

◆21MHz(2011/06/24)

21MHz

7K

10K

コアの種類

コアなし

芯コア+被せるコア

コアなし

芯コア+被せるコア

空芯

サトー(緑)

サトー(黒)

空芯

サトー(従来品)

サトー(中国製)

高周波電圧計の読み(V)

3.1

3.4

3.4

4.7

5.2

5.2

空芯コイル比

1.0

1.1

1.1

1.0

1.1

1.1

◆50MHz(2011/06/24)

50MHz

7K

10K

コアの種類

コアなし

芯コア+被せるコア

コアなし

芯コア+被せるコア

空芯

サトー(緑)

サトー(黒)

FCZ50

空芯

サトー(従来品)

サトー(中国製)

FCZ50

高周波電圧計の読み(V)

1.6

1.8

1.7

1.8

1.7

1.9

1.8

1.8

空芯コイル比

1.0

1.1

1.1

1.1

1.0

1.1

1.1

1.1

◆144MHz(2011/06/24)

144MHz

7K

10K

コアの種類

コアなし

芯コア+被せるコア

芯コアのみ

コアなし

芯コア+被せるコア

芯コアのみ

空芯

サトー(緑)

サトー(黒)

FCZ144

空芯

サトー(従来品)

サトー(中国製)

FCZ144

高周波電圧計の読み(V)

1.8

1.4

1.1

2.0

2.0

1.4

1.5

1.5

空芯コイル比

1.0

0.7

0.6

1.1

1.0

0.8

0.8

0.8

価格

-

5個735円

5個630円

250円

-

5個630円

10個735円

250円

(注)FCZ144−10Sの芯コアを見ると他のコアと同じようにツヤが無いが、7Sは少しツヤがあるため違う材質(カーボニル鉄?)を使っているのかも知れず、材質の差が出力の差になっているようにも思える。

空芯コイル比をグラフ表示(2011/06/24)

  1. 空芯コイルにコアを入れることで1次と2次コイルの結合度が増し、出力が増えている様子がわかります。
  2. 7、21、50MHzまでは一定ですが、144MHzではコアによっては倍近い差があり使用には注意が必要です。
  3. 線図は50MHzから急に折れ曲がっていますが、これはデータが少ないためであり、実際にはもう少し上の周波数から損失が増えるのではないかと思います。

7Kボビン(緑色)の144MHzでの使用実績(2011/06/24)
サトー電気で販売している7Kボビン(緑)を144MHzで使う場合、FCZ144−7Sに比べると損失は多いですが、といって使えないわけではありません。私がこれまでに作ってきた20台近い144MHzのトランシーバーではこのボビンを使い続けており、コアの損失分は増幅段がカバーしているとも言えます。仮にFCZ144−7Sに交換すればトータルゲインがありすぎて発振してしまうかも知れず、回路定数の変更が必要になるでしょう。


◆あとがき(2011/06/24)
2011年5月にFCZコイルの製造・販売が停止になるという発表がありました。コイルはほとんど手巻きしている私にとっては影響は少ないものの、これまでFCZコイルに頼ってきた人たちやこれから自作を始めようという人にとっては梯子を外されたような思いもあるでしょう。コイルの手巻きは多くのOMがやっておられ、その一端を当HPで紹介していますが、閲覧の方から「サトー電気で販売している中国製(10個735円)の10Kボビンは従来品(5個630円)と性能上の差はあるのでしょうか?」という質問をいただきました。7K,10Kボビンは使用可能な周波数が明示されておらず、それならば確かめてみようと測定方法を考えてみることにしました。プロが使うような測定器は持ってないのでコアの損失を絶対値で示すことはできませんが、空芯コイルでの測定値を基準にすれば相対評価はできるだろうと思いついたのが上述の方法です。困る→考える→やってみる→判ってくる こんなサイクルを回せば見えなかったものが見えてきて、自作をより深く楽しむことができると思います。

<完了>