周波数カウンタ2                             戻る

◆はじめに(2020/8/7)
コロナ禍の第2波が到来し自粛生活が続いています。今年3月からの行動範囲は自宅を中心にした半径数kmの中にあり、パーツを買いに日本橋へも行ってません。古希を迎えた身としては感染すると重症になるリスクが高いため、GoToキャンペーンに踊らされることなく自己防衛の毎日です。しかし家にいる時間が長くなると何か作りたいという気持ちは抑えきれず、部品箱を漁ってみると以前周波数カウンタを作ろうと集めていた部品が見つかりました。当時はプリスケーラ用のICが入手できず製作には至りませんでしたが、今ではネットで調べるとヤフオクや通販で見つけることができました。ならば死蔵部品に光を当ててやるかと、まずは周波数カウンタの原理を理解するため回路図書きから始めました。なお、ここでは相当古い型式の部品を使っていますので、現在市販されている部品で作ろうという方には、参考にはならないことを予めお断りしておきます。

参考にした本(2020/8/7)
「高周波回路の設計・製作」という本を1996年に秋葉原へ行ったときに買い、当ホームページの製作記事を書くときに何かと参考にしています。周波数カウンタは5ページにわたって解説されていますが、論理回路の記号は動作を理解するには良いものの、実際の製作には向かないので書きなおすことにしました。またブレッドボードを使って部分的に動作を確認すると、参考にした回路図の誤植を見つけたり、アースに落とすピン番号が省略されていることに気付いたりと、いきなり基板を作るのではなく動作を理解する意味でも確認の実験が必要に思います。 

 周波数カウンタ本体の回路図(*1)

 プリスケーラの回路図(*1)


主な部品について

◆カウンタ用LSI(2020/8/7)
カウンタ用のLSIはICM7216B(インターシル社)という型式で、数年前にローカル局から譲っていただいたものですが、寝かしておくのは失礼に当たるので使うことにします。パッケージ内には周波数カウンタの機能が詰まっており、外付けとして広帯域アンプ、LEDドライバを付ければ周波数カウンタが完成するというものです。

 周波数カウンタ用LSI ICM7216B

プリスケーラ用ICの入手(2020/8/7)
カウンタ本体の上限周波数は10MHzと低く、測定周波数を広げるためにはプリスケーラが必要になります。参考にした本の回路図には200MHzまでと書かれていますが、仕様欄は安全を見込んでか150MHzとなっています。プリスケーラは1/4と1/25の分周で1/100にする必要があり、東芝のTD6102PとTC9122Pが使われているものの、すでに流通在庫も無くなり諦めていました。しかし、ネットで探すとTD6102Pは丹青通商にて(2個500円+送料250円)、TC9122Pはヤフオク(2個600円+送料63円)で見つけ、注文(落札)してから3日ほどで届きました。

 ヤフオクと通販で入手したプリスケーラ用IC

◆表示部LED(2020/8/7)
4つの表示部が1つにまとまったもので、配線が簡単になるという長所があります。カソードコモン型の秋月で@200したもので、これを2個使います。配線としては各表示部のA〜GとDPを全て並列接続し、コモン端子を高速切替することで各表示部が個別に光っているように見えるものです。

 

TCXO(2020/8/7)

1.旧回路図で使用したもの
秋月で購入した 超高精度温度補償型水晶発振器 VCTCXOユニット VM39S5G(12.8MHz±1ppm)という、いかにも信用できそうなものを@600で買いました。周波数が微調整できるトリマが付いていますが、出荷時に±1ppmに調整されているため、ここはいじらない方が良いでしょう。

 

2.新回路図で使用したもの
発振周波数は10MHzですが、トリマが付いてないことから精度は上のものほどではなく、たぶん±2ppmとか±3ppmほどでしょう。


試作編

◆全体の構成(2020/8/14)
周波数カウンタの基本的な構成で、測定周波数を拡げるための1/100分周プリスケーラが付いています。

 (*1)

◆動作確認で気づいた点(2020/9/4)
カウンタ本体はブレッドボード(BB102 165×55mm)を2枚つなぎ、カウンタ用LSI、表示部LED、ドライブ用TRなどを挿入し、ジャンパ線で回路を組みました。実際に動作させてみると思っていたのとは違う点がありました。

  1. 1000Hzは「1.000」と表示されるはずだが「10.00」と表示され小数点の位置がおかしい。(上記の回路図に誤植があるのかもしれません)
  2. 分周比1/100のプリスケーラをONにしても小数点の位置が2個ずれるわけではなく、毎回頭の中で小数点の位置をずらさねばならず不便である。
  3. プリスケーラに使っているTD6102Pはfmax=150MHzだが、次段のTC9122Pはfmax=15MHzであり、1/4分周してもカウンタとしての測定上限周波数は15×4=60MHz程度ではないのか。実際に測定してみると144MHzは表示できなかった。

 
(左)ブレッドボードにカウンタを組む (右)1000Hzが「10.00」と表示される

◆上記3問題点の対策をとる(2020/9/4)

1.カウンタ回路の変更(2020/9/4)
桁表示が正しくなるよう参考になる回路をネットで探してみると、JA6HIC内村さんのHPに周波数カウンタの製作記事があり、その回路に変更することで1000Hzは「1.000」と正しく表示されました。基準時間信号は10MHzのTCXOに変更しています。

 

2.分周比を1/1000に変更する(2020/9/4)
MHzを1/1000分周すればkHzになり小数点の位置はそのまま使えるため、TD6102PとTC9122Pの分周比を変更できないか、データシートをダウンロードして読み解いてみました。

分周比 1/1000 = 1/8 × 1/125

  @TD6102Pの分周比を1/8に変更する(2020/9/4)
   8ピンをグランドに落とせば分周比は1/4、電圧を加えれば1/8になる。

   

  ATC9122Pの分周比を1/125に変更する(2020/9/4)
   125は 100+20+4+1 に分解されるため、下の図から A2、B1、C0、A0 をONにすればよいことになります。

 

3.測定上限周波数を上げる(2020/9/4)
TC9122Pのfmaxは15MHzであるため、TD6102P分周比を1/8にすると、15MHz×8=120MHz に上げることが出来るはずです。試しに144MHzのトランシーバー出力を測定したところ表示できました。

 プリスケーラを通して144MHzを測定

◆広帯域アンプとシュミットトリガ回路(2020/9/18)
広帯域アンプで10Hz〜10MHzの信号を増幅し、その後、シュミットトリガ回路により波形整形して矩形波を作ります。広帯域アンプの入力電圧は10MHzにおいて30mV以上必要であり、15MHzまでは測定可能でした。

 正弦波を矩形波に整形 (上の黄色)入力信号 (下の青色)出力信号

 15MHzまでは測定可能でした。

◆ゲートタイムについて(2020/9/18)
周波数カウンタは計測時間内に通過する測定信号のパルスの数を数えて表示する機能です。測定開始から終了までの時間をゲートタイムと呼び、その時間によって精度が異なります。ICM7216Bはゲートタイムを4種類(0.01S、0.1S、1S、10S)選ぶことができ、0.1S(秒)で小数点以下2桁、1Sで小数点以下3桁まで表示されます。今回の製作では0.1Sと1Sの2種類が実用的と思われるため、トグルスイッチで選択できるようにしました。


製作編

◆基板とケースの設計(2020/9/11)
基板は @カウンタ本体 Aプリスケーラ BLED表示部 の3つに分けます。

 カウンタ本体(120×80mm)

 プリスケーラ(50×40mm)

 LED表示部(120×33mm)

 ケース(幅140×高60×奥行110mm)

◆基板作成と部品取付(2020/9/18)
主基板は120×80mm、プリスケーラは50×40mm、LED表示部は120×33mmのガラエポ基板を使います。

◆ケースの自作と収納(2020/9/18)
ケースはアルミ板で自作し、サイズは幅140×高さ60×奥行き110mmとし、正面パネルは1.5mm厚、他は1mm厚を使いました。LEDの前にはセピアスモーク色のアクリル板(3mm厚)を付け、正面から蛍光灯などの光が当たった場合でも表示がくっきり見えるようにしています。

 ケース上部を正面から見る

 ケースの裏面にはプリスケーラを取り付け

 144MHzのトランシーバー出力周波数を測定

 カバーを被せて完成です。

<完了>


参考文献

  1. 高周波回路の設計・製作 鈴木憲治著 CQ出版社
  2. YC−500 取扱説明書 八重洲無線