定電流充電器

◆電池の種類を調べれば(2000/12/9)
シャックの中を見渡せばニッカド、ニッケル水素と充電池の種類と数は随分増えました。年に1、2度行く秋月では必ずと言ってよいほど何らかの充電池を買って来ます。特に単3と単4は行く度に新しい容量の物が置いてあり、ついつい買ってしまいます。さて一体どんな種類があるのかと調べれば。。。

種類 容量(mAH)
単1  4000
単2  2200
単3  500,700,1100,1250,1500,2000
単4  220,550,600,650,800
単5  150
006P  100,150

おそらく15年以上前に買った物から最新の物まで、さらにこれの組電池があるわけでして、節操もなく良く集めたものです。さて、このページでは機械式タイマーと定電流電源を組み合わせた充電器の製作を計画して行きたいと思います。手元の資料を探すとハイハイありました。「やさしい電子工作教室」(CQ出版)30ページの「3端子レギュレータを使った定電流回路」中山さんの記事を参考にしましょう。この回路では1種類の充電電流となっていますが、手持ちの電池は100〜4000mHAまで14種類ありますので、抵抗とスイッチを組み合わせて何種類かの制御電流を作ることにします。

 回路図案

◆トランスを選び充電電流を決める(2000/12/10)
手持ちのトランスということで16V1Aのものが有りました。整流後平滑回路を通せば1.4倍の22V程出るはずです。さて充電電流はどうしましょう。手持ちのナショナル製機械式タイマーは最大11時間までアナログ的に調整出来ます。また充電に必要電流
X時間は電池性能の1.5倍といったところですから、単1ニッカド4000mAHをフルに充電するには6000mAH必要で、それを10時間で充電するには600mAの電流が必要になります。最小容量は006Pの100mAHでこれを6時間で充電するなら25mAとなります。

◆充電電流の段階を決める(2000/12/10)

  1. 25〜600mAまでをR1からRnの抵抗とスイッチを組み合わせることで色々な種類の充電電流を作ることにし、あとはタイマーの時間で調整しましょう。
  2. 静止動作電流は常に4mA流れています。従って抵抗値は R=5/(I-0.004)Ωとなり、21mAの時はR=238Ωですね。
  3. また抵抗の必要電力容量は P=I^2*R=0.021^2*238=0.105W です。充電電流のステップは25mAとしスイッチを5個使い25、50、100、200、300mAの5段階にすれば、20〜675mAまでカバーすることができます。
  4. R1=238Ω(0.1W)、R2=109Ω(0.23W)、R3=52Ω(0.48W)、R4=26Ω(0.98W)、R5=17Ω(1.48W)と計算され、市販の抵抗を近似値で当てはめればR1=220+18、R2=220/2、R3=51、R4=51/2、R5=33/2といったところでしょうか。

◆回路のテスト(2001/8/25)
ラワン板にトランスやラグ板をねじ止めにしてテスト用のボードを作りました。ほぼ設計値どおりとはいえ、電流値が多くなると3端子レギュレータの発熱によってか10%程度の誤差が出てきます。なお電流計は300uAのラジケータ(共立 @460)を使いました。2.2Ωを並列につないで約100mA、0.22Ωを更につなぐことで1Aまで計測が出来ます。

◆ケース作り(2002/7/29)
1mm厚のアルミ板とL型アングルを使ってケースを作りました。サイズは110幅*70高*160奥行です。正面パネルにはメータ、出力端子そしてスイッチです。

 
         ケースを作る                    配線終了

◆試運転(2002/8/4)
配線を終え通電します。正常に電圧が出ていることを確認し、1500mAの単3NiMH6本を充電してみました。1500*1.5=2250。これを11時間で充電するには約200mAを通電すれば良いことになります。さて実際にやってみるとトランス、3端子レギュレータ等あちこちから発熱があり、蓋をした状態で室温33度にてケース温度は47度になっていました。ちなみにダイオードブリッジや3端子レギュレータはケースに放熱していますが、かなりケース内にこもる熱がありそうなので、蓋に空気を通す穴を開けることも必要に思います。

◆目盛りを作る(2002/8/7)
塗装を除いてほぼ完成したので、メータの目盛りを作ります。「Sメータを自作する」コーナーでも紹介しましたが、ここで使うラジケータはもともとバッテリーチェッカーとしての用途であり、直線目盛りでもなく、途中に段のあるような特性曲線で、また数個を測定しても個体差が10%ほどあります。出力に負荷(8Ω20W)をつなぎ、テスターを直列に入れて実測しながら目盛りの位置を決めました。目盛りの間隔に多少いびつさを感じますが、まあ目安ということで。。。

 

◆最大充電電圧(2002/8/7)
さて定電流の状態をどの程度まで維持できるのでしょう。普段の充電本数を思い出してみると、懐中電灯は2本、デジカメは4本、自作のトランシーバは6本、あるいはまとめ充電で8本。ということで通常は2〜8本を充電しています。目盛りが出来たので、電池の本数を変えながら測定してみると7本までは設計どおりですが、8本の場合600mAの設定で実測は500mA,、また単1*10のNicd組電池を充電してみると100mAが上限で、それ以上は流れませんでした。ダイオードやAVRを低ドロップのものに交換するか、あるいはいっそトランスを24V程度のものにする必要があるかもしれません。これはテストの時、負荷に8Ω20Wのホーロー抵抗を使い定電流を意識して進めたため、電圧に対する考慮の無かったことが原因です。まあ、とりあえずは「こういうもの」として使うことにしましょう。

◆放熱用の穴を開ける(2002/8/7)
ケース内にかなり熱がこもるため、ケースの上面と両側面に3.2のドリルで165個の穴を開けました。もっとも冬場になれば気にする程でも無いのですが。。。

◆充電電流と充電時間(2002/08/16)
充電電流と時間はスイッチの設定電流25,50,100,200,300mAの5段階を組み合わせて決めます。下の表は左記5段階にピタリとは合いませんが、あとは充電時間で調整します。充電電流は電池容量に1.5を掛け、それを充電時間で割ったものです。トリクルは電池容量に0.033を掛けたもので、正しい使い方かどうか判りませんが、電池容量が若干減ったなと感じた時、トリクルでそれを補っています。

充電電流と充電時間一覧

サイズ

電池容量(mAH)

*1.5

時間

トリクル

5 8 10
単1 4000 6000 1200 750 600 132
単2 2800 4200 840 525 420 92
単3 700 1050 210 131 105 23
  1100 1650 330 206 165 36
  1200 1800 360 225 180 40
  1300 1950 390 244 195 43
  1500 2250 450 281 225 50
単4 220 330 66 41 33 7
  550 825 165 103 83 18
  600 900 180 113 90 20
  650 975 195 122 98 21
単5 150 225 45 28 23 5
006P 100 150 30 19 15 3
  150 225 45 28 23 5
組電池 1400 2100 420 263 210 46

表の値にて充電を行いますが、25mA程度の充電電流でも結構発熱します。これは整流した電圧をAVRで充電電圧まで落とすため、その損失で発熱しているのではないかと思え、1つの充電器で幅広い電池の充電をカバーしようとする事に無理があるのかなとも思っています。

◆ケースの塗装(2002/08/16)
ケースを塗装するため中身を取り出しました。つや消し黒スプレーで塗装後レタリングをし、つや消しクリヤーで保護膜を作ります。乾燥後部品を取り付け配線をしなおして完成です。

  
(左)ケース (中)中身を取り出しました (右)完成です

◆倍電圧整流に変える(2002/12/15)
16Vの交流をブリッジ回路で全波整流すると、出力のケミコンには16*1.4=22.4Vの電圧が得られます。その後5VのAVRを使った定電流回路を通すと5Vドロップして17Vほどになります。この状態で12Vの組電池を充電しようと充電電流を600mAに設定しても、100mAほどしか流れませんでした。組電池の端子電圧は14Vほどです。トランスの仕様上仕方ないかと思っていましたが、ふと倍電圧整流を思い出し実験することにしました。結果、整流回路の出力には約45Vが得られました。12Vの単1組電池を負荷としSW1〜5のスイッチを全てONにすると約700mAの充電電流が流れ、当初の設計どおりとなりました。この時45Vの電圧は31Vほどに落ちていますが、まだまだゆとりがあります。

◆倍電圧と半波を切り替えるようにする(2003/06/15)
整流回路を倍電圧にして充電する場合、電池の数が1〜4本では充電電流が10mAほどしか流れない状態になりました。入出力の電圧差が大きすぎるのかも知れないと思い、整流回路を倍電圧と半波で切り替えるようにしてみました。電池の本数が1〜4本では「L」、5本以上では「H」とします。

<完了>