ミリバル(電子電圧計)                                          もどる

はじめに(12/3/10)
トランシーバに使う低周波アンプやフィルタの特性を調べるためには、数千Hzまでの周波数特性を持った電圧計が必要です。しかしデジタルテスタは感度は良いものの数百Hzまで、アナログテスタは数十kHzまで図れるものの感度不足です。そんなわけで100Hz〜10kHzまで計れ、10mV程度の感度があるミリバル(電子電圧計)を作ってみようと思います。オペアンプを使えば周波数特性は問題ないですが、入力に対しどこまでリニアに増幅できるか、また微小入力に対する検波部の直線性が課題です。


仕様を決める(12/3/10)
ミリバルを作る目的は、トランシーバーで使う低周波アンプやフィルタの特性を調べるためのものです。したがって測定する電圧や周波数範囲は以下の範囲を満足すればよいと思いますが、オーディオ家さんから見れば測定範囲は狭いと思われるでしょう。

  1. 入力レベル 10mV〜3V(6段階)
  2. 周波数特性 100Hz〜10kHz

増幅度と飽和について(12/3/10)
動作電圧が12Vの場合に、オペアンプがどの程度の入力信号に対しリニアな増幅が出来るものでしょうか。そこでオペアンプの入出力部にデジタルテスタを接続し、400Hzの信号を加えてレベルを徐々に変化させたところ、出力電圧で3.5Vまではリニアな増幅ができ、そこを超えると飽和が起こりはじめました。したがって出力は最大3Vと決め、10mVから3Vまで約3倍ステップで増幅度を設定することにします。

オペアンプは数十円で買え、負帰還をかけることで良い周波数特性を得ることが出来る便利なものです。またこの負帰還用の抵抗値を変えることで増幅度を自由に設定することが出来ます。ここでははTL082CPという8ピンパッケージの中にアンプが2個入ったものを使います。

増幅度の計算は R2/R1=330K/33K=10(倍) となります。

増幅度と周波数特性(12/3/17)
ミリバルに使うオペアンプの増幅度と周波数特性の関係を調べました。2段で300倍の増幅をする場合、3×100 10×30 15×20 を比較したのが下のグラフです。1段で大きな増幅をするよりも、負帰還を効かせて増幅度を抑え、1段目と2段目のバランスをとることで周波数特性の良いアンプになることが分かります。

入力電圧と目盛りの関係(12/03/24)
検波用のダイオードは微小入力域において入出力の関係が非直線になります。直線に引いた基準となるピンクの線に対し、メータの振れは紺色の線になりました。

目盛りを作る(12/04/20)
ダイオードの非直線性は目盛りを作ってしまうことで対応します。入力に400Hzの低周波を加え、デジタルテスタで交流電圧を読みながらそのときのメータの振れを記録し、CADで目盛りを作り、印画紙にインクジェットプリンタで印刷しました。これを切り取ってメータの目盛り板に両面テープで貼り付ければ出来上がりです。ついでにレンジ切り替え用ロータリースイッチの目盛りも作りました。メータは秋月で購入した45型100μAと言うもので@1000でした。@2000以上するメータに比べると持った感じは軽く、あちこちにコストダウンの箇所は見られますが、ここは使う人の選択にまかされるところでしょう。

ケースの塗装(12/04/22)
いつもはスプレー塗装ですが、春は砂埃が多いので室内でのハケ塗りにしました。アサピペンの「油性スーパーコート」はアルミにも塗装可能なので下地処理をする必要がありません。また塗装屋さんに聞いた話では、スプレーよりもハケ塗りのほうが塗料を押し付ける分、乗りが良いとのことです。カバーはボール紙で作った台にセロテープで貼り付け、台を持って塗装すると手に塗料がつきにくく作業がしやすいです。また塗り終わった後は台のまま立てておけば、乾かすにも都合が良いです。

  

塗装を終えて完成(12/04/27)
塗装後は24時間そのままの状態で十分に乾かします。インスタントレタリングで文字をいれ、その上にツヤ消し透明ラッカーをスプレーし、さらに24時間放置します。最後に組み上げて完成です。感度切り替えの目盛りの上には2mm厚のアクリル板を切って押さえ板としました。

 


トラブル対策

10mVレンジで動作が不安定に(12/04/07)
40×40mmの基板に回路を収めてみましたが、10mVレンジで入力をオープンにするとメータが振り切れ動作が不安定に、他のレンジは安定しています。回路実験のときはトグルスイッチで増幅度を切り替えていたため配線も短く動作は安定していましたが、基板化することでロータリースイッチまでの配線が長くなってしまったことに原因がありそうです。とりあえずの対策として周波数特性は若干悪くなりますが、初段の増幅度を15→10、次段を20→30 に変更することで、振り切れることはなくなりました。

 
(左)基板化してロータリースイッチと一体化 (右)ミリバルの回路実験の様子

電源のノイズを拾ってしまう(12/04/14)
10mVレンジは高感度なので電源がバッテリーならば問題ないものの、トランスを使った安定化電源やスイッチング電源では電源からのノイズを拾ってしまい、信号入力がゼロの場合でもメータが1mVほど振れてしまうという問題が出てきました。三端子レギュレータを通してみたりとかいろいろ試行しましたが、ここはオーソドックスに電源回路に470μの電解コン2個と10Ωの抵抗によるπ型フィルタを追加することでメータの振れは納まりました。

 追加した470μ×2の電解コン

<完了>