終端型パワー計              ホームに戻る

はじめに(2017/9/15)
送信機の出力測定器としてはFCZ研のQRPパワーメータを使っていますが、最大が2Wでそれ以上の測定ができずに不便を感じることがあります。ここでは最大10Wまで測定できる終端型電力計を作ってみます。課題は @目盛りの校正方法 Aフラットな周波数特性 です。


目盛りの校正(2017/9/15)
測定器の校正については60Hzの交流や低周波発振器を利用するという文献(*1 P214,P237)があります。50Ω負荷で10Wの目盛りを打つには22.4Vの信号が必要なため、ここでは60Hzの交流を使うことにします。

  1. 24V1A(タップは0V,6V,12V,24V)のトランスを使い、500Ω50Wの巻線型可変抵抗器(VR)を通して50Ω(200Ω 3W×4)のダミーロードに交流電圧を加えます。
  2. ダミーロードの端子電圧は交流電圧計(デジタルテスタの交流レンジ)で測定します。
  3. ダミーロードの端子電圧を1SS108で整流しVR2を通してDCA1電流計(100μA)に加えます。
  4. ACV1の交流電圧が22.4Vの時にDCA1の電流計がフルスケールになるようVR2を調整します。このときのダミーロードの消費電力は10Wです。
  5. 交流電圧(ACV)を下の表のように可変し、そのときの電流計の目盛りを記録します。
  6. 電圧が低い場合はトランスのタップ位置を適宜切り替えます。

  巻線型VR

W

ACV

100μA目盛

W

ACV

100μA目盛

0.1

2.2

10

1

7.1

32

0.2

3.2

14

2

10

45

0.3

3.9

17

3

12.2

55

0.4

4.5

20

4

14.1

63

0.5

5

23

5

15.8

71

0.6

5.5

25

6

17.3

78

0.7

5.9

27

7

18.7

83

0.8

6.3

28

8

20

90

0.9

6.7

30

9

21.2

95

1

7.1

32

10

22.4

100


 上の表を参考にして作成した目盛り(電流計は日置のR-45 100μAを使用)。CADで描き、フォトペーパーに印刷して、両面テープで貼り付け。

周波数特性と補正回路(2017/9/29)
HF〜VHFまで均一な周波数特性を得るためには補正回路が必要になります。

  1. 下の回路はFCZ研の寺子屋シリーズ206(QRPパワーメータ 100mW/2W 1〜440MHz)を参考にしたもので、周波数特性を改善するためにイコライザを入れています。
  2. QRPパワーメータで確認しながらFT817の出力を1Wに設定し、終端型パワー計側に切り替えてそのときの出力を記録します。
  3. この測定を3.5,7,14,21,28,50,144MHzで繰り返します。
  4. イコライザ用TCの容量を最小にして7MHzで1WになるようVR1,VR2を設定し、144MHzにおいても1WになるようTC1を調整します。
  5. なおQRPパワーメータの特性は1〜440MHzまで全くフラットではありません。dBm目盛り(1mWを0dBとする)で±0.5dBほどの誤差はありますが、ここではその誤差は無視して目盛りました。

  1. イコライザ有無の効果は上のグラフに示すとおりで、全くフラットにはならず14MHzで少しふくらんでいます。
  2. R1は2.2K,3.3K,4.7K,6.8K,10KΩの5種類を交換しながら特性を比較しましたが、4.7KΩがほぼフラットで、それ以外はうねりが大きくなります。
  3. イコライザが抵抗のみの場合は周波数が上がるにつれて出力が下がっており、抵抗と言うよりは炭素被膜のラセン構造がチョークコイルとして動作をし、それをコンデンサによって補正しているように思えます。

製作(2017/10/13)

  1. ケースはタカチの「MB-2」という100×70×50mmのものを使用します。
  2. イコライザと検波部は空中配線によって最短で配線しました。
  3. VR1とVR2は25×30mmのプリント基板に彫刻等で溝を入れ部品を半田付けし、ケースの内側に両面テープで固定しました。
  4. メータは日置のR-45 100μAを使用。

 
(左)イコライザと検波部は空中配線による (右)プリント基板に彫刻等で溝を入れたVR1,VR2部

 
(左)内部 (右)外観

<完了>


参考文献(*印)

  1. 高周波回路の設計・製作 鈴木憲次箸 CQ出版社
  2. 寺子屋シリーズ206 QRPパワーメータ取説 FCZ研究所