高周波で使う部品とその使用方法
◆はじめに(2017/3/24)
大手の本屋へ行っても自作に関する本はなかなか見つからず、図書館・古本屋・ネットで探しても少なくなっています。高周波で使う部品のノウハウや実装技術はベテランにとってはあたりまえのことでも初心者は知らないことが多く、それを伝えるための解説本が手に入りにくい状況です。ならば手持ちの本を読みかえし、高周波に関し一般的に入手できる範囲で部品を使うときの注意点をまとめてみようと思います。
1.抵抗
◆高周波回路に適した抵抗(2017/3/24)
高周波に適した抵抗とはL成分(インダクタンス)やC成分(キャパシタンス)が少なくて純粋にR成分だけのものが望ましいのですが、パーツ屋で入手できる範囲では下のようになっています。
- カーボン抵抗(炭素被膜抵抗)は円筒状の炭素被膜にらせん状の溝を入れたもので入手は容易です。らせん状の溝によりその部分がコイルとして動作するため、低抵抗ほどL分は少なく高周波特性は良好ですが、高抵抗になるとL成分が大きくなって高周波特性は悪くなります。下のグラフを参考にすると10KΩで100MHz程度までは使えるでしょう。
- 寸法は出来るだけ小さいことが望ましくい、電力的に許せば1/2Wより1/4W、更に1/8Wのほうが高周波特性は良くなります。
- リード線部が短いほど望ましく、カーボン抵抗のようなリード線タイプよりはチップ抵抗のような直接半田付けできるものは高周波特性が良好です。
- 巻線型はL成分が多いため高周波回路には使用できません。
- 抵抗体は炭素粉末を容器に詰め込んだソリッド抵抗のようなL成分の少ない形状が望ましいのですが、現在は入手難となりました。
(左)カーボン抵抗 上は1/6W、下は1/4W (右)巻線型抵抗
新・低周波/高周波回路設計マニュアル P229
より引用
◆抵抗の固定方法(2017/3/24)
- プリント基板に取りつける場合は横に寝かせた方がリード線が短くなり、機械的にも安定するため好ましく思います。
- 縦型に取り付ける場合は @インピーダンスの高い信号側はリード線の短い方に Aインピーダンスの低い電源またはグランド側をリード線の長い方にします。
2.コンデンサ
◆高周波回路に適したコンデンサ(2017/3/31)
高周波に適したコンデンサとはL成分(インダクタンス)の少ないものが望ましく、配線する場合には注意が必要になります。
- (高誘電率系)セラミックコンデンサは形状が小型でありバイパス用、結合用、同調用として高周波に適しています。ただし温度変化による容量の変化が大きいため同調用としてVFOのような発振回路には適しません。
- VFOの同調回路には温度補償セラミックコンデンサを使用し、コイルとコンデンサの温度係数が相互に打ち消し合ってゼロになるよう選択します。
- チップコンデンサはリード線部が極小であり、バイパスコンデンサとして適しています。ただし基板から外すとクラックの入ることがあり、再利用は不可能と思ってください。
- スチロールコンデンサ、マイラーコンデンサは絶縁物に電極を蒸着して巻き込んだ構造のため、L分が大きくなり高周波回路には適さない。
(左)セラミックコンデンサとチップコンデンサ (右)温度補償セラミックコンデンサ各種
◆バイパス用として使う場合の注意点(2017/4/7)
- バイパスコンデンサとして 1〜100MHzでは0.01μF、100MHz以上では0.001μF以下 を使用。
- セラミックコンデンサをバイパス用に使う場合はリード線を出来るだけ(1mmでも)短くする。
バイパスコンデンサの半田付け
◆リード線のインダクタンスによる影響(2017/4/7)
- リード線のインダクタンスとコンデンサのキャパシタンスで直列共振した周波数でインピーダンスは最低になりますが、それ以上ではコンデンサがインダクタンスとして動作しインピーダンスが上昇してしまいます。したがって出来るだけリード線を短く配線することが必要になります。
- 0.001μFのセラミックコンデンサでリード線長2mm(片側)の場合、共振周波数は60MHz程になります。
高周波回路設計ノウハウ P23より引用
3.コイル
◆空芯コイル(2017/9/8)
- 線材を筒状に巻くだけの空芯コイルは安価でもあり高周波回路にはよく利用されます。
- 筒状に巻いたコイルはソレノイドコイルと呼びます。
- VHFまでは何回か巻いたコイルを使いますが、UHF以上になるとワンターン(1回巻き)または帯状のストリップラインを使います。
- 磁力線がコイルの外部に出るため、同じ周波数の他コイルと結合すると異常動作の原因になります。
- 他のコイルとの結合を減らすため、直角に配置するか、コイルの間にシールド板を入れます。
(左)コイルの直角配置 (右)コイルのシールド
◆コアありコイル(2017/8/11)
- コイルの中心にコア(ダストコア)を入れることでインダクタンスが増加するためコイルの巻き数を減らすことができます。
- コアの位置をずらすことでコイルのインダクタンスが増減できます。
- 真鍮をコアに使うとインダクタンスを減らすことができます。
- トロイダルコアであれば磁力線は内部に封じ込まれますが、ボビンに巻くタイプ(ソレノイドコイル)は磁力線が外部に出るためシールドが必要です。
- コアの材質はフェライト(ニッケル−亜鉛)の場合は100MHz程度までですが、カーボニル鉄は更に高い周波数(アミドンT25−12であれば200MHz程度)まで使用可能です。
(左)10Kボビンにコイルを巻く (中)10Kボビンにシールドケースを被せたところ (右)トロイダルコイル
トロイダル・コア活用百科 P26より引用
4.プリント基板
◆プリント基板の材質(2017/4/21)
プリント基板の材質としては @テフロン Aガラスエポキシ B紙エポキシ Cベークライト(紙フェノール) とありますが、一般的に入手できるのはAとCです。私がよく使う平ラグ板の材質はベークライトで、そこに144MHzの回路を組んでいます。損失があることは承知の上で使っていますが、ガラエポの平ラグ板があればと思うことはありますが(hi)。ただし200MHzを超えると明らかな損失があるとのことです。
材質
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価格
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上限周波数
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@テフロン |
高価 |
5GHz |
Aガラスエポキシ |
中位 |
1GHz |
B紙エポキシ |
中位 |
300MHz |
Cベークライト(紙フェノール) |
安価 |
100MHz |
(左)ガラスエポキシ基板 (右)ベークライト基板
◆フラックスについて(2017/4/21)
プリント基板の銅箔面に塗るフラックスは高周波特性が余りよくないため、出来れば使わないほうが良いようです。私の場合50MHzまでは使っていますが、144Mや430Mでは使用しません。半田付けが終わった後は手アカとか半田のヤニをシンナーやベンジンでふき取っておきましょう。
プリント基板用フラックス
参考・引用文献
- 高周波回路設計ノウハウ 吉田武著 CQ出版社
- ビギナーのためのトランシーバー製作入門 千葉秀明著 CQ出版社
- 無線機の設計と製作入門 鈴木憲次著 CQ出版社
- 高周波回路の設計・製作 鈴木憲次著 CQ出版社
- 新・低周波/高周波回路設計マニュアル 鈴木雅臣著 CQ出版社
- トロイダル・コア活用百科 山村英穂著 CQ出版社
- アマチュアのV・UHF技術 CQ出版社
- 抵抗&コンデンサの適材適所 三宅和司著 CQ出版社
- 波形で学ぶ電子部品の特性と実力 稲葉保著 CQ出版社
- 最新トランジスタ規格表 CQ出版社
- 最新高周波デバイス規格表 CQ出版社