高周波電圧計3

◆はじめに(2008/02/23)
直流や交流電圧はテスターで簡単に測れますが、我々に馴染みのある高周波電圧を正しく測るのは中々に難しいものです。RFプローブ+テスターでは、メータの振れで高周波出力の大小を見ることは出来るものの、それが何Vを示しているのか正しくは判りません。トランシーバを製作していると、VXO部の出力やバラモジ部の入力電圧などを記録として残したい場合、正確とは言わないまでも数%の精度では知っておきたく、手に入り易い部品で自作出来ないものかと試行してみることにしました。


全体構成

◆回路案(2008/02/23)
全体はセンサー部と表示部に分けます。センサー部で半波整流した電圧を表示部ではアッテネータを通した後、FETを使って増幅しメータを振らせます。具体的な抵抗値は回路実験しながら決めていきますが、課題としてはどの程度の感度にするかということです。ダイオードの特性上0.2Vのように微弱な電圧では直線性が悪くなりますが、更に低い電圧を測定したいときもあり、センサー部の初段に広帯域増幅を入れ、その後整流するという方法も考えられます。要はトランシーバを自作する時に、必要な各部の高周波電圧が測定できればよい訳で、そのために試行・実験を進めて行きます。

校正方法(2008/02/23)
測定器を自作する場合には校正方法が課題になりますが、センサー部の100Pに10μ程度のケミコンを並列につなぎ、50Hzまたは60Hzの商用電源と6V程度のトランスを使うことで校正が出来ます。あるいはトランシーバがあればダミーロードをつないで送信することにより、ダミーロードの両端電圧を使うことが出来ます。V=SQRT(P*R)の式により、例えば2W出力であれば、50Ωのダミーロードには10Vの電圧が発生し、20mWであれば1Vになります。身の回りの道具をフルに使い知恵と工夫で乗り切りましょう。

図1

 試作風景


センサー部

ゲルマかショットキーか(2008/3/8)
入力電圧を0〜25V(60Hz)まで変化させ、そのときの出力を測定しました。下図の青色の線はゲルマダイオードの1N60の特性ですが、10Vを越えたあたりからカーブが曲がり始めます。これではまずいので、次はショットキーバリヤダイオードの1SS108に交換して測定したところ、リニヤな特性が得られました。ゲルマとショットキーでこんなに違うものかと驚きましたが、測ってみないと判らないものですね。

 図2

微小入力の入出力特性(2008/3/8)
ダイオードは微弱な入力では動作が非直線的になるといいますが、どの程度のものかと調べてみました。下のような回路を組み、入力として60Hzの交流を0〜1Vまで変化させ、そのときの出力をデジタルテスタで測定したのが次のデータです。(Y軸は見やすくするため上下をひっくりかえしています)

下図の青線がダイオードの特性で、ピンクの線は参考に引いた直線です。また黄色の線は誤差を表示しています。入力電圧0.5Vのとき誤差5%、0.2Vで16%となりました。ショットキーバリヤダイオードの閾値が0.2〜0.3Vになっていることが、直線性に影響しているのでしょう。したがって入力0.5V程度まではダイオードの前段にアンプを入れ、それ以外はダイオードで直接整流する方式を取ろうと思います。

なお、非直線性を是正するため、ダイオードにバイアス電流を流して動作点をずらす方法があります。下の回路図では9Vの電圧を220KΩを通し、ダイオードに順方向の電流を約50μA流しています。しかしこの方法は、表示部側でレンジを切り替えるとメータの0点がずれるため、不採用としました。

 図3

 図4

どの程度の感度が必要か(2008/03/09)
製作したモノバンドトランシーバ21MHz機の各TPにセンサー部を接続し、仮に電圧を測ってみるとTP1〜TP7では0.1〜2Vの値を示すことがわかりました。また10Wのトランシーバでは50Ωのダミーロードに22.4V発生することから、レンジは0.25V、2.5V、5V、25Vの4つとし、0.25Vは直線性を確保するため、広帯域アンプを1段入れようと思います。

2SK439による増幅(2008/03/22)
2SK439による簡単なアンプを追加し入出力特性を測りました。デジタルテスタの性能から低周波による測定となるため、結合コンデンサは4.7uFとし、入力に400Hzの低周波を0〜0.6Vまで可変させ、そのときの出力電圧を調べました。青い線が測定値、ピンクの線は参考のために引いた直線ですが、0.3Vを越えるあたりから。直線性が悪くなります。

 図5

 図6

センサー部の周波数特性(2008/03/22)
下のような構成で周波数特性を測定しました。センサAのFETは当初2SK241を使いましたが、VHFでのゲイン不足を感じ2SK439に変更し、同時にドレイン負荷を1mHのRFCから470Ωに変更したところ、144までほぼフラットな特性になりました。

 図7

 図8

センサー部の製作(2008/03/16)
万能基板に回路を組み、熱収縮チューブで覆い絶縁します。先端はミノムシクリップを使い、測定部に固定出来るようにします。リード線は半田付け後バインド線で基板に固定します。また配線が終われば、全体を熱収縮テュー部で被い、絶縁と共に部品の保護をします。

センサー部@ 2.5V、5V、25V用

 

センサー部A 0.25V用

プローブ型センサー(2008/04/12)
テスターのリード棒やアルミパイプを使ってプローブを作ってみました。

 


表示部

表示値の直線性は?(2008/03/09)
表示部の入力に0〜1Vの直流電圧を可変しながら加え、メータの振れが直線的かどうかを確認しましたが、これは問題なく直線的な特性を示すことがわかりました。

メータ用の目盛りを作る(2008/03/16)
測定レンジとしては0.25V、2.5V、5V、25Vの4種類とします。メータは38型100μAを使いますが、目盛りが100分割のため読み取りの時に頭の中で換算しなくてはならないため、ここでは目盛りを自作することにしました。実物のメータから寸法を読み取ってCAD上に図形を描き、目盛りは5分割と25分割の2種類としました。図形が出来ればLサイズのフォトペーパーにインクジェットプリンタでプリントし、ハサミで切り出したあと、両面テープで貼り付けます。

ケース作りと配線(2008/03/30)
デザインは縦長の測定器らしい感じにします。幅65×高さ115×奥行き115mmとし、1mmのアルミ板で作りました。回路は8Pの平ラグ板に組み、電源は外部から12Vを供給します。ケース上部にメータを配置し、その下にレンジ切り替えのロータリースイッチと0点調整のボリューム。下部には電源スイッチと表示LED、コネクタを置きました。

 

ラグ板上の配線図(2008/04/06)

校正方法(2008/03/30)
図7に示す回路を組み、21MHzで校正を行ないました。特にセンサAでは0.25Vを測る場合、送信機の出力を1mWに設定しますが、QRPパワー計の目盛り(1mW)では精度が怪しくなるため、FT817の出力を100mWに設定し、20dBのアッテネータを通して1mWの出力を得ることにしました。FT817の出力を表1の値に設定し、レンジを切り替えながら半固定抵抗を回し、メータの針が所定の電圧を示すようにします。

50Ωダミーロードに発生する電圧(表1)

出力(W) 電圧(V)
0.001 0.22
0.1 2.24
0.5 5.00
2 10.00

 校正風景

最後の仕上げは塗装です(2008/07/26)
高周波電圧計の回路部分を本体から外し、ケース部分を塗装しました。

  1. スチールたわしでケース(アルミ板)を磨き、汚れを水で洗い流し、水分をふき取った後、シンナーで油分をふき取る。
  2. ツヤ消し黒のスプレーで塗装する。
  3. 白のレタリング(サンハヤト)で文字を入れる。
  4. クリヤーラッカーをパネル面に拭きつけ、レタリングの文字を固定する。

 こんな風にお化粧をすることで、測定器の雰囲気が出てきました。

<完了>