放熱シート

放熱シート(2020/5/1)

  1. 大きな電流を流すトランジスタには放熱器を使いますが、トランジスタのケース(またはフィン)は一般的にコレクタに接続されており、グランド(放熱器)に電気的に接続することができません。そのためトランジスタと放熱器の間に絶縁材を挟みます。
  2. 絶縁材として古くは雲母(マイカ)が使われていましたが、その後シリコンシートに代わりました。
  3. トランジスタの取りつけに金属のビスを使うには絶縁ブッシュを併用しますが、ポリカーボネイトのビスを使えば絶縁ブッシュを使わなくても済みます。
  4. トランジスタを取り付けるとき、マイカの場合は間に放熱グリスを塗って熱伝導を良くしますが、シリコンシートの場合は軟らかいため密着性が良く、グリスを塗る必要はありません。


トランジスタの形にカットされた雲母の絶縁材とブッシュ(すでに閉店した名古屋のカトー無線で40年以上前に15円で買ったもの)

 M3×8ビス (左)ポリカーボネイト (右)ステンレス

 
シリコンシート 200×200mmのものが@2600(高かった!)hi

 
(左)トランジスタの形にカット (右)使用例

放熱シートの誘電率(2020/5/8)
雲母はマイカコンデンサにも使われている誘電率の高い素材であり、2SC1970のようなコレクタがフィンに接続されており、そこに絶縁材として使うとコレクタとグランドの間にコンデンサが接続された状態になって、VHFでは増幅度が落ちるという問題がありました。これをシリコンシートに変更することで若干改善する事ができたという経験があります。

そこで容量がどの程度のものなのか、2SC1970を放熱器(アルミ板)にポリカーボネートのビスで固定し容量を測定してみました。(*1、2)

  1. シリコンシート : 誘電率 4 、厚み0.25mm (カタログより)
  2. 雲母(マイカ) : 誘電率 5〜9 、 厚み0.1mm (ノギスで測定)
  3. 2SC1970 : フィンの面積 97mm(コレクタが接続された金属部分のみを実測)

 2SC1970のコレクタとグランドの間に放熱シートをはさんで容量を測定する。

 マイカ 28.6PF

 シリコンシート1枚 18.5PF

 シリコンシート2枚 10.3PF

 何も挟まずに距離を離す 0.5PF

◆静電容量の計算(2020/5/8)

シリコンシート1枚の場合

静電容量 C 、コレクタの面積 S 、シリコンシートの厚み L 、シリコンシートの誘電率 εs 、真空中の誘電率 εo=8.855×10^-12 とすると、静電容量の計算式から(*3)

C=εo×εs×S/L=(8.855××10^-12)×4×97×10^−6/0.25×10^−3=13.7×10^-12=13.7PF となり、18.6PF に近い値となりました。

◆放熱器はグランドから離す(2020/5/8)

  1. シリコンシート1枚でも18.5PFというVHFでは結構大きな値であり、144MHzで2SC1970を使う場合はラグ板配線の時は放熱器自体をグランドから浮かした状態で使い、静電容量が発生しないようにしています。
  2. プリント基板を使う場合、放熱器はグランドには接続せず、取り付ける裏側の銅箔を無くすことで容量を減らすようにしています。

 放熱器を取りつける部分の裏側

<完了>


参考文献(*印)

  1. 電子通信ハンドブック  電子通信学会
  2. クールシート説明書  共立電子産業
  3. 上級ハムになる本 CQ出版社