送受切替回路

◆はじめに(2005/01/30)
30年以上も前でしょうか、半導体を使ったスタンバイ回路として、トリオの144FMトランシーバTR2200に紹介されたのが、アマチュア無線界のリグでは最初だったように記憶します。リレーのようにはっきりした動作が見えるわけでなく、なんとなく頼りない感じはしましたが、応答が速く消耗部品が無いため、使い慣れてしまえば便利な回路です。しかしシンプルな回路から凝った回路までバリエーションは様々で、各所の部品がどんな意味があるのか回路図から読み取るのは難しいものです。ここでは簡単な回路から実験を進め、動作を確認して行きましょう。


◆半導体スイッチ1(2005/01/22)
下の回路はコンプリメンタリトランジスタの2SC2120と2SA950を使った簡単な回路です。スタンバイスイッチがOFFの場合はRX側に電圧が出ていますが、スタンバイスイッチをONにすることで、TX側に電圧が出て、RX側はOFF状態になります。この回路の消費電流はR1、R2が1KΩの場合、送信状態で12V時に約25mAで、受信状態はほとんどゼロとなり、ほぼリレーを使った回路と同じです。

 回路1 

メリットとしては無接点化したことで消耗する部品が無いことですが、電流がTRを通過することで電圧降下が発生します。この回路に負荷として100Ωの抵抗をつなぎ、R1,R2を1K〜4.7Kの間で4種類変化させた時のTX部とRX部の電圧を下に示します。

COM=12V

R1,R2 TX(20V) RX(20V) 無負荷 I(20mA)
1K 11.96 10.9 25
2.2K 11.93 10.43 11.5
3.3K 11.92 10.25 7
4.7K 11.89 9.91 5

COM=7.2V

R1,R2 TX(20V) RX(20V) 無負荷 I(20mA)
1K 7.16 6.21 14
2.2K 7.13 5.91 6.5
3.3K 7.13 5.75 4
4.7K 7.11 5.52 3

送信時の電圧降下はさほどでもありませんが、受信時は1Vほど下がっています。またR1、R2を大きくすると回路の消費電流は減るものの電圧降下も大きくなるため、1K〜2Kが妥協点でしょうか。

クリック防止(2005/01/30)
クリック防止のため、スタンバイスイッチと並列に小容量のコンデンサをつないだ回路を見かけます。上記測定回路においてクリック音を聞くためのクリスタルイヤホンを接続し、スイッチと並列に4.7uの電解コンをつなぎスタンバイ動作をすると、ONにおいては鋭いクリック音が発生しますが、OFFでは和らいだ音になりました。

これはいけると、50MHzトランシーバのミューティング回路をはずし

  1. クリック防止の4.7uをつけない状態でスタンバイすると、ON、OFFともクリック音が発生します。
  2. 4.7uをつないでスタンバイすると、ONでクリック音、OFFではダブルクリックのような音が発生しました。

なぜこのようなダブルクリック音が発生するのか今のところ判りませんが、いずれにしても4.7uの効果は無いようなので、ミューティング回路を元に戻しました。 hi


◆半導体スイッチ2(2005/01/30)

ミズホ通信のピコに使われている回路です。原回路のTRは2SC2320と2SA719ですが、この実験では2SC2120と2SA950に変更しています。回路1に比べるとダイオードD1が追加されています。SW1をON/OFFさせながらTR1のB−E間電圧を測ると、ONで0.6V、OFFで0.7Vとなり、TRの動作点ギリギリのところでスイッチングしています。C1があることでSW1がOFFになる時のクリックを軽減します。

 回路2


◆半導体スイッチ3(2005/01/30)

回路1、2では受信時において1Vほどの電圧降下があります。電源電圧が12Vもあれば、さほど気にすることもありませんが、6Vとか、それ以下になると1Vとは言え貴重なものになります。回路3はTR1、2共PNPタイプを使ったもので、QRPハンドブックP58のJA7CRJ千葉さんの記事の中にあり、TR1のベースに接続している2Vのツェナーダイオードは、手持ちが無かったのでLEDに置き換えました。ただしカソードとアノードは逆接続としています。またTRは2SA950に変更しています。この回路の特徴は負荷抵抗に100Ωを接続し、電流を120mA流した時でも電圧降下が0.1Vほどであることと、回路自体の消費電流が少ないことです。

 回路3

条件 STANDBY 12V 7.2V
無負荷時消費電流 ON 5.5mA 3mA
無負荷時消費電流 OFF 2mA 1mA
100Ω負荷時のTX部電圧 ON 11.9V 7.1V
100Ω負荷時のRX部電圧 OFF 11.9V 7.1V

◆リレーを使う(2005/01/23)

 

回路1
リレーをスタンバイスイッチで直接ON/OFFするという一番簡単な回路です。リレーと並列に接続したダイオード(10D1)はコイルをON/OFFしたときに発生する高電圧(サージ電圧)を抑制するためのものです。

回路2
リレーを1石のTRで制御しています。スタンバイスイッチが直接リレーをON/OFFしないため、多少接触が悪くても動作してくれるというメリットがあります。


ブレークイン回路

ブレークインとはキーをたたき始めると送信状態になり、たたき終わると受信状態になる回路で、いちいちスタンバイスイッチで送受を切り替える必要がありません。フォーンで言えばVOXに当たるものでしょう。また@フルブレークインとセミブレークインがあり、それぞれに特徴があります。

フルブレークイン(2013/1/19)
キーがONになると送信、OFFになると受信というように、頻繁に送受が切り替わるもので、多局からのブレークがあってもすぐに気づくことが出来るなど、高度なオペレーションに向いていますが、反面送受の切替時にクリックノイズが発生したり、ノイズを抑えようとすると波形が鈍ったりと、リグ作りの難しさがあります。

セミブレークイン(2013/1/19)
文字を連続して打っているときは送信状態が続き、文字を打ち終わると受信状態になるという回路です。高度なオペレーションが必要なければ落ち着いて打電ができ、通常の運用には十分と思います。

<完了>