SWRメータ検出部                           もどる

◆はじめに(2022/4/1)
使うつもりで買ったのにそのまま部品箱に残っている「休眠部品」に陽の目を当ててやろうと、時々思い出したように製作してみたくなることがあります。下の写真は数年前に日本橋のデジットで買ったメータ(@450)です。バリキャップによる電子同調の周波数表示用にと買ったものですが、SWRの目盛りが印刷されており、これを活かしてみたくなりました。

 デジットで購入したSWR目盛り付きメータ

この目盛りは正しいのか?(2022/4/1)
「この目盛りは正しいのかな」との疑問が沸き「高周波回路の設計・製作」の「SWRメータの製作」ページに反射波電流値の表を参考に調べてみました。

 高周波回路の設計・製作 P239より

上表より次の計算式を導き、下の表の計算値を得ました。メータはフルスケール200μAです。

  反射波電流値 I = 200(SWR-1)/(SWR+1)

  1. デジタルテスタ(電流レンジ)とメータを直列につないで電流を流し、その時の目盛りを読み実測値としました。
  2. SWR1〜3までの計算値と実測値を比較してみましたが、SWR1.5以外はほぼ合っているようなので、実験を進めます。

SWR

反射波電流値(I)

計算値

実測値

1

0

0

1.2

18

18

1.5

40

35

2

67

66

2.5

86

85

3

100

100

SWRメータとは(2022/4/1) (*2)

  1. 送信機の高周波エネルギをアンテナから効率よく輻射するためには、給電線のインピーダンスが50Ωの場合に、アンテナの給電点インピーダンスが50Ωであることが必要です。
  2. 50Ωより多いか少ないとミスマッチングになり、この高周波エネルギの一部が給電点から反射波として送信機側へ戻って来るため、輻射効率が悪くなります。
  3. その反射波を測定するためのものがSWR計で、アンテナを調整して反射波がゼロになると、高周波エネルギが効率良く(≒100%)アンテナから輻射されます。
  4. とは言え余り神経質になるほどでもなく、反射波はSWR1.5で4%、2.0で11%、3.0で25%であり、1.5以下で十分、2.0でもまあOK、3.0以上はNG、といったところでしょうか。
  5. 各社のSWRメータの写真を確認すると、SWR3.0以上で目盛りが赤く着色されているため、「これ以下にしましょう」と言う一つの目安になるでしょう。

  SWR3.0以上は赤く着色されています


試作1

CM型SWRメータの原理(2022/4/8)

  1. 「トロイダル・コア活用百科」(*1)及び「高周波回路の設計・製作」(*2)に載っている回路ですが、プリント基板は使わずに1次コイルは片側アースの同軸を使い、検出部は6Pの平ラグ板に組みました。
  2. トロイダルコアを貫通する同軸(1回巻きのコイル)から、10回巻きのコイルによって-20dB(1/10の電圧)の信号を取り出します。(M結合)
  3. 同軸の両端に発生する電圧を10Pのコンデンサと30Pのトリマ+82Pで分圧して1/10の電圧を取り出し(C結合)、ダイオードで電圧比較し、その値をメータで読みます。(*1

 試作1の検出部

TC1,TC2の調整(2022/4/8)
コイルの接続を逆にすると MEAS と SET は逆になります。スイッチを切り替え、メータの振れが少ない方で下記の調整を進めてください。

  1. TX端子に送信機、ANT端子に50Ωのダミーロードをつなぎ、送信状態にしてスイッチをMEAS側に倒し、TC1を回してメータの振れ(反射波)を最小にします。
  2. ANT端子に送信機、TX端子に50Ωのダミーロードをつなぎ、送信状態にしてスイッチをSET側に倒し、TC2を回してメータの振れ(反射波)を最小にします。

何MHzまで実用になるのか(2022/4/8)

  1. 送信機として八重洲のFT-817ND(CWモード)、アンテナは50Ωのダミーロードを使い、FCZ研のSWRメータと比較しながら測定してみました。
  2. その結果今回の試作機は50MHzまでは使えそうですが、144MHzでは明らかに差が出てしまいました。
  3. 試作機は6Pの平ラグ板に組みましたが、FCZ研のSWRメータは最短距離で配線されており、構造的な差もあると思います。

MHz

SWR値

試作1-SWR

FCZ-SWR

7 1.05 1.0
21 1.05 1.0
50 1.1 1.0
144 5.0 1.05

試作2

◆FCZ研SWRメータ(2022/4/15) (*3)

  1. 試作1の結果が思わしくなかったので、FCZ研の回路を手持ち部品の範囲で再現してみました。
  2. 試作1に比較すると検出部は片側のみで、スイッチによりコイルの極性を切り替えています。
  3. トロイダルコアと同軸の周囲を0.5スズメッキ線でゆるく巻き、アースラインとします。
  4. 「アマチュア無線自作電子回路」P98にはフェライトコアは外径8mm、内径4mmでμ3000ほど必要と書いてあり、FT37-77(μ2000)かFT37-75(μ5000)あたりがよさそうですが、手持ちの関係でFT50-77を使いました。しかしフェライトコアが大きすぎると周波数の伸びが悪いとのことです。
  5. 測定したところ7〜50MHzは試作1と同じ結果ですが、144MHzではSWR1.5と改善されたものの、まだFCZ研には及びません。

 FCZ研SWRメータの内部

 試作2の検出部

MHz

SWR値

試作2-SWR

FCZ-SWR

7 1.05 1.0
21 1.05 1.0
50 1.1 1.0
144 1.5 1.05

★トロイダルコアFT50-77をFT37-77に変更してみたところ、周波数特性が改善されFCZ研並みになりましたので、別のページで公開予定です。(2022/4/22)


試作3

◆SWRブリッジ(2022/4/22) (*3)

  1. 「アマチュア無線自作電子回路」のP99には「HF〜430MHz QRP用SWRブリッジ」という製作記事があります。
  2. 原典はThe ARRL Antenna Bookにあり、そのSWRブリッジは50MHzまでしか使えなかったものですが、それを改造して430MHzまで使えるようにしたとのことです。
  3. FCZ研のものはチップ抵抗と両面プリント基板を使っていますが、ここではカーボン抵抗を使い、空中配線で組みました。
  4. 51Ωが無い場合は、100Ω2本を並列接続します。
  5. 測定の結果、7〜50MHzでSWR1.0、144MHzでSWR1.05、430MHzでもSWR1.3となり、良い結果が出ました。
  6. ANT端子とTX端子の間に51Ωが入っており、通過型ではないため測定が終わればこのSWRブリッジは外してください。

 試作3の検出部

MHz

試作3-SWR

7 1
21 1
50 1
144 1.05
430 1.3

<完了>


参考文献(*印)

  1. トロイダル・コア活用百科 山村英穂 著 CQ出版社 P380-P384
  2. 高周波回路の設計・製作 鈴木憲次 著 CQ出版社 P237-P239
  3. アマチュア無線自作電子回路 大久保忠 著 CQ出版社 P94-P102
  4. アマチュアのアンテナ設計 岡本次雄 著 CQ出版社 P55-P56
  5. アンテナ・ハンドブック 角居洋司 吉村裕光 編著 CQ出版社 P319-P320
  6. アンテナ調整ハンドブック 角居洋司 著 CQ出版社 P97-P114
  7. BEACON エレクトロニクス工作室 No.36 冨川寿夫 著