VFOの製作

◆はじめに(2015/1/24)
このHPで紹介しているトランシーバでは全てVXOを使っています。回路が簡単で周波数が安定しているという点では非常にメリットがありますが、発振周波数が水晶によって限定されたり、可変範囲が狭いというデメリットも併せ持っています。ならば発振周波数が安定し、周波数設定が自由なVFOの実験を進めることにしました。


5MHzVFO

◆5MHzVFOの回路(2015/1/24)
7MHzSSBトランシーバへ内蔵させるVFOを想定しており

  1. 発振周波数は4.8〜5MHz。
  2. 同調はバリキャップのFC54Mを使用し、10KΩのヘリポットで安定化した8Vの電圧を供給する。
  3. コイルは7Kボビンに巻いて高周波ニスで固め、コアとケースは使用しない。当初はトロイダルコアを考えていましたが、プリント基板への取り付けを考えると7Kボビンの方が収まりが良いと思います。
  4. 出力部のコイルは当初1個でしたがバンド内での出力が均一でないため、2個使ったスタガ同調に変更しました。

補正Rの値による周波数直線性の変化(2015/2/7)
ヘリポットに並列接続する補正Rの値による周波数直線性の違いを調べてみました。各回転においてできるだけ20kHz/回転に近くなれば良いわけで、ここでは3.3KΩとしました。


温度補償

温度補償とは(2015/2/20)
VFOで安定した周波数を発振させるには、機械的にしっかり作ること、電源の安定化と共にリグ内の発熱に対応した温度補償が必要になります。コイルは正の温度係数を持つため、それに並列接続するコンデンサに負の温度係数を持たせることで周波数変動を相互に打ち消そうというものです。

温度係数の正負(2015/2/20)
正の温度係数とは温度が上がると数値が増加するものです。
 コイルでは : 温度上昇 → コイルの直径が増加 → インダクタンスが増加 → 周波数が下がる

負の温度係数とは温度が上がると数値が減少するものです。
 コンデンサでは : 温度上昇 → コンデンサの極板間距離が増加 → 容量が減少 → 周波数が上がる

温度補償コンデンサの種類(2015/2/20)
温度補償コンデンサは頭頂部に付けられた色によってその温度係数が表示されています。また末尾のJは誤差を示し、J級は±120ppm/℃の意味です。


左から 黒、橙、黄、青、紫

温度係数(ppm/℃)

±0

-30

-80

-150

-220

-330

-470

-750

◆温度補償コンデンサの入手(2015/2/14)
先日日本橋のパーツ屋へ行ったところ、黒色着色の温度補償積層セラミックコンデンサは@20〜30で売っているものの、黄色や青色は姿を消していました。サトー電気では何種類かの温度補償コンデンサを扱っているのでそれを購入するか、こまめに通販や他地域のパーツ屋を探すか、誰かに譲ってもらうしか方法がなくなってしまったのは残念なことです。


デジットで見つけた150PF(NPO=0ppm/℃ J級)のセラミックコンデンサ(10本50円) 着色はされていませんが「NP0」と印字

◆VFOユニット(2015/2/14)
下の回路で実験を進めますが、発振部で温度に影響されそうなC1とC3〜C6は黒色を使い、C2のみ色々な温度係数のコンデンサを組み合わせて温度に対する安定化を図ります。またVFOユニットの発振部分にはアルミのケースを被せ、周囲の影響を受けにくくしています。また6Pのセラミックトリマは正の温度係数を持つようですから、それも合わせて温度補償の対象にします。

 VFOユニット(赤枠内がC2)

 発振部にカバーを被せる

◆使用するコイル(2015/2/20)
このVFOで使用するコイルはサトー電気で購入した7Kコイルのボビン部のみを使用し、4つの溝に0.1mmのウレタン線を各10回ずつ巻き、高周波ニスで固めました。7Kボビンを使用した理由は分割された溝があるため巻いた線が安定することと、ピンがあるため線の末端処理が楽で基板にも固定しやすいためです。中心コアや被せるコア、ケースは使いません。いわゆる空芯コイルになり、温度係数は+200ppm/℃ほどでしょう。

 7Kボビンの分割された溝にウレタン線を巻き、高周波ニスで固めたコイル

◆温度補償の実験方法(2015/2/20)

  1. VFOのカバーに温度計のセンサーをテープで貼り付け、VFOユニットを保温材でくるみ、保温バッグに入れる。
  2. VFOに電源をつないで発振させ、カウンタで周波数を読めるようにしておく。
  3. 電気アンカの上に保温バッグを乗せ、通電して温度を上げる。
  4. 温度計の数値が室温より10度ほど上がったらアンカの電源を切る。
  5. 自然冷却で温度がゆっくり下がるのを待ち、温度計の読みと周波数カウンタの読みを記録する。

  

◆温度補償の効果を調べる(2015/2/20)
回路図のC2を以下3種類の組み合わせで温度変化に対する周波数変動を測定すると

  1. 82P(紫)+33P(黒)=(−750×82+0×33)/(82+33)=−534ppm/℃
  2. 47P(黄)+47P(黄)+20P(黒)=(−220×47×2+0×20)/(47×2+20)=−181ppm/℃
  3. 75P(黒)+33P(黒)+2P(黒)=(0×75+0×33+0×2)/(75+33+2)=0ppm/℃

その結果

  1. +453Hz/℃
  2. −106Hz/℃
  3. −405Hz/℃

となりました。3は温度補償なし、1は過補償、2は補償が若干不足であり1,2,3の数値を使って計算すると −250ppm/℃ ほどの温度係数を持ったコンデンサがあれば周波数変動をゼロに近づけることができそうです。空芯コイルには黄色のコンデンサが合うとされていますから、−250ppm/℃というのは妥当な値でしょう。

温度補償コンデンサを組み合わせる(2015/5/22)
115PF −250ppmのコンデンサを作るため手持ちの温度補償コンデンサを組み合わせ 47P黄+30P青+7P紫+30P黒=−264ppm/℃ を作りました。それをVFOに取り付け温度特性を調べてみると 17Hz/℃ という結果が得られました。3の無補償と比較すると4%という値ですから、かなりの効果があったといえます。

 赤枠内が追加して4個になった温度補償コンデンサ

◆電源投入後の周波数変動(2014/3/6)
VFOユニットを保温バッグに入れ一晩置いて温度的に安定させ、周波数カウンタ電源ONから90分後より測定を開始しました。VFOユニットへ12Vを供給した最初の1分は100Hzほど急激に変動しますが、3分後から30分までの変動は6Hz以内であり、なかなかの成果が出ました。

<完了>