VX-3用ホルダ                     ホームに戻る

◆はじめに(2023/8/4)
ハンドマイクほどの大きさの小型トランシーバーは、手のひらに収まるサイズでありながら、高性能かつ機能満載でと、昔のずっしりした単機能のトランシーバーに比べれば、信じられないほどの進化をとげています。私が持っているのはSTANDARDのVX-3という144/430MHzデュアルバンドのものですが、待ち受け受信の時に腰のベルトやリュックの肩ベルトに下げられるホルダを作ってみようと思います。

 (左)FT-817用ハンドマイク (右)VX-3

構造を考える(2023/8/4)
部材は @ホルダ本体 A前カバー B腰ベルト の3つに分け、ソフトケースのようにカバーしたままで使用するのではなく、運用する時はホルダから取り出して使います。

 おおまかな設計図

木型を作る(2023/8/4)

  1. 革を水で濡らしてトランシーバの形に合わせる「革絞り」という手法を使うため、VX-3の形に似せた木型を作ります。
  2. 材料は「ファルカタ」というバルサ材に似たもので、軽くて加工しやすく、なおかつ安いというのが特徴の木材です。
  3. 革は水に濡らしてから乾燥させると多少縮みます。また出し入れのことを考えると2mm程度の隙間が必要なので、それを見込んで木型は少し大きめに作ります。
  4. VX-3の寸法は 幅53×高さ84×奥行24mm(ツマミ部含まず)です。
  5. 木型のサイズは幅55×高さ85×奥行26mmとし、表示6mm厚(実寸6.5mm)のファルカタ材から4枚切り出し、ボンドで接着し、φ2.8の穴をあけ竹串を通し、ボンドが乾くまでのズレ止めにしました。
  6. 木型の周囲は軽く面取り(R取り)しておきます。

   
(左)切り出した板にボンドを塗って4枚重ね、ズレ止めの竹串を通す (中)竹串を切る (右)木型とVX-3

革絞り(2023/8/4)

  1. 使用するヌメ革は厚さ2mmのものです。
  2. 前カバー部に使う革は仕上がり寸法より大き目のものを準備し、水に10分程浸した後、表面の水分をタオルでぬぐい、木型に沿って曲げます。
  3. 革を木型に沿わせて伸ばすことは出来たものの、縮める事はできなかったため、底部に富士山型の切り欠きを追加したりと修正しながら進めました。何か方法があるのかも知れませんが、革細工初心者としては未知の領域です。
  4. 革の三方を木材で押さえ、シャコ万で締め付けて形を整え、乾くまで室内干しします。

 
(左)革を水に浸す (右)シャコ万で固定し乾燥

 
(左)木型から外した前カバー (右)VX-3を入れてみる

 切り出した部材 (左)前カバー (中)ホルダ本体 (右)腰ベルト


穴開け(2023/8/11)

  1. 手縫いやホック付けの準備として革に穴をあけておきます。
  2. 手縫いの穴は菱目キリ(1,2,4穴)とゴムハンマーを使い、下に10o厚のゴム板を敷いて4oピッチで穴をあけます。
  3. 4穴を同時にあけ、その後にキリを抜くにはかなりの力がいるため、4穴は印付けに使い、1穴か2穴で空けているのが現状です。
  4. 開けた穴は丸ではなく菱型になっており、2本目の針を通しやすい形状です。
  5. ホックの穴やスピーカーの穴(5個)はφ2.5のポンチを使い、下に10o厚のゴム板を敷き、ゴムハンマーで叩いて開けます。
  6. ゴムハンマーは金槌に比べると衝撃音が少ないように思え、周囲に対する気遣いなのでしょうか。
  7. 前カバーのホック位置は、液晶画面や各ボタンに力がかからないよう、外した箇所にしました。

 
(左)穴開け工具 (右)穴開けした各部材

◆床面仕上げ(2023/8/11)
革の床面(裏面)や切断面の毛羽立ちを抑えるため「トコフィニッシュ」という仕上げ剤を塗ります。ガラス板で磨けば艶出しもできるようですが、必要ないのでそこまではやっていません。

◆ホック付け(2023/8/11)
ホックは次の2個所に付けます。@トランシーバーを出し入れする部分 A腰ベルト部 ポンチと治具を使って穴開けした箇所にカシメました。

 
(左)ホック付けの道具と部品 (右)ホックを付けた各部材

◆手縫い(2023/8/11)
針を2本使い、革細工専用の細いヒモのようなロウ引きした糸で、縫いあげる寸法の4倍強の長さを使い、表と裏から交互に針を刺し、毎回引き締めながら縫うという作業です。別々に準備した各部材が、縫うことで一体化していくという充実感があります。

  (左)縫い始め (右)縫い終わり

  
(左)ホルダとVX-3 (中)正面 (右)裏面

待ち受け受信のスタイル(2023/8/11)
待ち受け受信時は両手をあけておきたいため、腰のベルトあるいはリュックの肩ベルトから下げます。仲間からの呼び出しがあれば、トランシーバを取り出してすぐに応答することが出来ます。また革絞りの時、縮める事が出来ず仕方なしに底部にあけた穴ですが、リグを取り出すときにその穴に指を入れて押し上げれば良く、けがの功名と言ったところでしょう。

 
(左)腰に下げる (右)リュックの肩ベルトに下げる

◆ホルダを作ってみて(2023/8/11)
仕事の関係で知り合った方の趣味が革細工で、手提げバッグやキーホルダー等を見せていただいたのがきっかけとなり、「自分でも出来そう」との思いから、ネットで調べ、ネットで購入し、手順を考えて試行錯誤しながら作り始めて2ヶ月経ちました。アマチュア無線の自作ジャンルの中に、革のケースやホルダを作る記事をこれまで見かけたことはありませんが、私がアルミ板で作る自作ケースの延長線上に、こういった革細工があっても面白いように思います。独自の物を持ち、手作り出来るという満足感は、どの世界にも共通する価値観ではないでしょうか。この製作記事では全体の流れを説明する程度に留めています。各作業の注意点やコツについてはネットや下の参考資料のページをご覧ください。

 同じ要領で作ったスマホホルダ

<完了>


参考資料

  1. ホックの付け方
  2. 革の縫い方
  3. 床面磨き
  4. 型絞り