VXOのQRH対策

◆はじめに (2004/02/28)
トランシーバを自作する方にとってVXOは馴染み深い回路ですが、通電後の時間経過と共に起るQRHは避けがたく、逓倍段数の多いVHF機では気になるものです。ここではQRHの少ないVXOを目指し 

  1. 消費電力
  2. 温度補償

という観点から実験を進めました。


◆実験回路と測定装置

 

VXO回路は実験用ボードに組み、ヒーターとして8Ω20Wのホーロー抵抗を取り付けました。それを保温バッグ(缶ビールやジュースなどの保温用)にいれ、安定化電源から4〜15Vの間を4段階に変化させ通電します。

周波数カウンタの八重洲YC−500Jは、測定前に2時間以上通電し基準発振器を安定化しておきます。以前はいきなり電源を入れて測定していましたが、後で確認してみると14MHz台を測定している時に、カウンタ自身が通電後90分で60Hz程変動していることがわかったためです。同じシリーズの恒温槽型や温度補償型はもっと精度が良いのでしょうが、私が買った標準型の精度はここまでのようで、その分測定前にしっかり通電しておき、測定器を暖めておいてから計測を開始するようにしました。


回路の消費電力とQRH

回路にかける電圧を4段階に変え、周波数変動を測定します。測定時間は30分、測定周波数は14.680MHz(バリコンの容量最大値)。

  1. 4V*0.4mA=1.6mW
  2. 7V*0.75mA=5.3mW
  3. 10V*1mA=10mW
  4. 15V*1.5mA=22.5mW

QRHは上のグラフのようになりました。保温バッグ内の温度変化は0.1度です。測定誤差を割り引いて考えても、回路の消費電力が数mW程度であれば安定したVXOになりそうです。


温度補償を試みる

測定方法

  1. 実験ボードを保温バッグに入れ、ヒーター(8Ω20Wのホーロー抵抗に12V×1.3A=15.6W)で加熱。
  2. 保温バッグ内の温度を35度まで上げた後、ヒーターを切ってから自然冷却で温度が25度まで下がる間の周波数変化を記録。
  3. VXO回路には安定化電源から4V、0.4mAを供給。消費電力は1.6mW。
  4. 測定周波数は14.680MHz(バリコンの容量最大値)。
  5. C1、C2の温度補償セラミックコンデンサは3種類(0,-470,-750ppm/℃)を交換してデータをとる。
  6. バリコンはエアーバリコンとポリバリコンの2種類を交換してデータをとる。

実験結果

セラミックコンデンサ(C1,C2) 周波数変化率(Hz/℃)
温度係数(ppm/℃) エアバリ(20PFX2) ポリバリ(20PFX2)
0 -25.5 -19.7
-470 -17.5 -11.5
-750 -8.9 -3.4

保温バッグ内の温度を変えることによってQRHが発生します。しかし温度補償コンデンサの種類を変えることによって、周波数変化率に差が出てきました。これは正の温度係数を持つ7Kコイルを、負の温度係数を持つセラミックコンデンサで補償しているということです。またポリバリの方がエアバリよりも周波数変化率が少ないということは、ポリバリはエアバリよりも負の温度係数を持っていると推察できます。

なお、今回の実験は、あくまでもサトー電気で購入した7Kボビンにウレタン線を40回巻いたコイルに対して温度補償をしたものであり、コアの材質が異なれば違った特性になるでしょう。また、VXOのコイルにはダストコアはなるべく使うな、というのが安定したVXOを作る上での鉄則ですが、温度補償をすれば特性の改善が可能であるということが今回の実験で判ってきました。また、周波数調整が終われば、ダストコアは接着剤やローソクなどで機械的に固定する事が必要です。


◆おまけ (2004/3/21)

VXO発振TRのBーE間(C1)とE−GND間(C2)コンデンサの値を変えてみると発振出力が変化し、30PF辺りで出力が一番大きくなりました。またエミッタに入れる抵抗の値も1.5kΩ辺りで最高出力が得られます。QRHを減らすため発振部の消費電力を出来るだけ押さえ、最大出力を得るためには回路定数をどう選んだらよいのか。今まで製作記事を参考に何気なく決めていた値も、それぞれに意味があるようです。ちなみにC1、C2はいずれも共立電子で買った-470ppm/℃のセラミックコンデンサ(青色)@20を使っています。