水晶発振回路                ホームに戻る

◆はじめに(2020/12/25)
安定した周波数を発振できる水晶発振回路はクリスタルコンバータや局部発振回路などに使われています。また古くは50MHzや144MHzFM送信機で送受信部の各チャンネルごとに水晶が準備され、ロータリースイッチで切り替えながら使われていました。代表的な回路としてはピアースBC、ピアースBE、無調整の3種類があり、それぞれの特徴について紹介します。

ピアースBC発振回路(2020/12/25)

  1. ピアースと言うのはこの回路を考えた方の名前ではないかと思うのですが、BCとはベースとコレクタ間に水晶が入っているという意味です。また真空管の場合がピアースGP(グリッド/プレート)とか、ピアースGK(グリッド/カソード)という名前が付きます。
  2. 下の左が基本回路で、周波数を微調整したいときはトリマコンデンサTC1またはTC2のいずれかを追加します。ちなみに下の回路で5kHzほど可変できました。
  3. OUT端子にRFプローブ(高周波電圧計)をつなぎ、T1を回して出力が最大になる少し手前の位置(b)にすると安定した状態になります。気持ち的には出力が最大になる(a)にしたいのですが、何かの拍子に(a)点より左側にずれると発振が止まってしまうため(b)の位置に設定します。
  4. T1の共振回路が容量性から誘導性に変わる所で急に発振が停止します。(*4 P102)
  5. 水晶発振回路の特徴は、水晶のQが極めて高く、しかもその温度特性が良いことを利用しているものです。したがってその高いQがトランジスタの低いインピーダンスのよって損なわれないようにすることが大切です。トランジスタのベースとコレクタ間のインピーダンスはベースとエミッタ間のインピーダンスよりもはるかに高く、水晶の高いQを損なわないためにもピアースBCが推奨されます。(*3 P292)

 

 
(左)14MHzの出力波形 (右)FFTの波形

ピアースBE発振回路(2021/1/15)

  1. ベースとエミッタ間に水晶が入っているという意味ですが、実際はベースとグランド間に水晶が入ります。また別名は「エミッタ帰還型発振回路」と言います。
  2. エミッタに入れるパスコンは小さいほど帰還量が増加し、75〜250Pの範囲が発振しやすいですが、つい103(0.01μF)を入れてしまい発振しないと慌てることがあるので注意してください。(*2 P193)
  3. 下の左が基本回路で、周波数を微調整したいときはトリマコンデンサTC1またはTC2のいずれかを追加します。ちなみに下の回路で5kHzほど可変できました。
  4. OUT端子にRFプローブ(高周波電圧計)をつなぎ、T1を回して出力が最大になる少し手前の位置(b)にすると安定した状態になります。気持ち的には出力が最大になる(a)にしたいのですが、何かの拍子に(a)点より右側にずれると発振が止まってしまうことがあるため(b)の位置に設定します。

  

無調整発振回路(2021/1/22)

  1. コレクタに同調回路が無く出力はエミッタから取り出しています。
  2. 出力波形は歪んでおり高調波が多数含まれています。
  3. SSBトランシーバーの局部発振器として使われる回路ですが、高調波についてはその後のクリスタルフィルタや同調回路で取り除かれます。
  4. 発振周波数を下げたいときは水晶と直列にコイルを入れ、いわゆるVXOにしています。

 
(左)出力波形 (右)FFTの波形

<完了>


参考文献(*印)

  1. 解説・無線工学 CQ出版社
  2. 実用電子回路ハンドブック CQ出版社
  3. 新トランジスタ実用百科 時田元昭著 CQ出版社
  4. 高周波回路の設計・製作 鈴木憲次著 CQ出版社