横行ダイヤル

◆はじめに(2014/8/9)
1960年代の代表的な受信機としてトリオの9R59やJR60があります。正面パネルに大きな横行ダイヤルがデザインされ、短波帯をカバーするたくさんの目盛りがいかにも通信型受信機という雰囲気を持っていました。しかしAM全盛だった時代からSSBへと移り変わり、1kHz直読をうたう丸型ダイヤルへとデザインは変化しました。ただポータブルラジオには今でも横行ダイヤルのデザインは残されているのは、針の位置で周波数が直感的に判るというメリットがあるのだと思います。

  TRIO 9R59

自作名人激集合での横行ダイヤルリグ(2014/8/9)
2012年のKANHAM自作名人激集合で、コリンズPTOの軸にプーリーをつけ、そこに糸を巻きつけた横行ダイヤル構造のトランシーバーを見たことがあります。多回転の軸に使えるなら10回転ヘリポットに応用できるとの連想につながりました。

  自作名人激集合に出展された横行ダイヤルの構造


まずは作ってみた試作1台目(2014/8/9)
10回転ヘリポットの軸径は6mmなので指針の移動距離は 6×3.14×10=188mm となります。これではリグとしての幅を取り過ぎるので半分のφ3の軸を使うことにしました。プーリーは手持ちがなかったのでφ6×3mmのスペーサーの両端にφ10のワッシャを半田付けしたものを作りましたが、模型店で購入できると思います。糸はホームセンターで見つけた墨つぼ用の「純絹坪糸」という15m258円のもので、「伸びずに」という文言に惹かれました。また引っ張りバネは 線径0.6、外径3.5、自由長25mmのステンレス製のもので 2個入って94円でした。糸やバネが手に入らない場合は、ラジオ少年の通販で購入することができるようです。

 

 
プーリーはスペーサーの両端にワッシャを半田付けし、電気ドリルで回転させながらφ3の丸ヤスリで内側を成形しました


◆試作2台目(2014/8/13)
試作1台目で横行ダイヤルの基本的な動きは確認できましたが、いくつかの不具合点がありました。

  1. 購入したバネは張力が強すぎるため、もう少し弱いバネがほしい。
  2. プーリーの軸としてM3ビスを使ったが回転がスムースではない。
  3. 針がスライドする部分は糸と1箇所で固定しているが左右に動かすとガタガタとする。また針の位置を自由に調整したい。
  4. φ3の回転軸とヘリポットのφ6とを連結するジョイントが必要である。
  5. バネを引っ張りながら糸をかけるのは大変である。
  6. 針の移動距離が当初予定の94mmではなく110mmになった。

◆引っ張りバネを作る(2014/8/13)
ホームセンターで売っていた引っ張りバネは強すぎたため、0.5mmのピアノ線を使ってバネを作ることにしました。φ3の棒にピアノ線を12回巻き、ラジオペンチを使って末端を90度に曲げてフックとしました。フックの部分は中々うまく曲げられず何個も作り直しました。

  0.5mmピアノ線で作った引っ張りバネ

◆プーリー軸の製作(2014/8/13)
当初はプーリー軸としてM3のビスを使っていましたが、糸をかけない状態ではカラカラと回るものの、糸を掛けると回転がぎこちなくなってきました。そのためφ3真鍮棒を軸として使い、固定のため末端にM3のダイスでネジを切りました。また抜け止めとしてM3ナットのネジ部分をφ3のドリルでさらったものを軸の反対側に半田付けしたものを作り、回転はスムーズになりました。

 
(左)プーリーの軸として使ったM3×15のビスを止め、φ3真鍮棒にネジを切り反対側の先端にナットを半田付けした (右)プーリーを組み立てたところ

◆指針部の工作(2014/8/16)
0.3mmの真鍮板を幅20×長さ18mmに切り出してU字型に曲げ、2.6mmのナット2個を端に半田付けし、正面側には0.9mmの真鍮棒を指針として半田付けしました。糸をワッシャで挟み込むことによって針の位置を自由に調整できるようにしました。

 
(左)正面側には指針を半田付け (右)裏側にはM2.6のナットを半田付けしてネジを立て、ワッシャの間に糸を挟み、ナットで締めこんでいる

◆φ3とφ6の軸を連結する(2014/8/16)
φ6用の連結ジョイントでヘリポットの軸を固定し、反対側には外径φ6内径φ3.2長さ12mmのスペーサを入れ、端から5mmのところにφ3.2の穴を開けて連結ジョイントのM3ネジが通るようにし、ダイヤル軸のφ3真鍮棒を締め込むことができるようにしました。

 ダイヤル部の各パーツ


各部品を組み立てたところ。ヘリポットはM3×40mmの高ナット3個でパネルから浮かして固定

◆テンションプーリー機能(2014/8/23)
横行ダイヤルでは程よい張力で糸をかけるのが中々大変です。弱すぎると回転軸で糸がスリップし、強すぎると回転が硬くなります。またバネを引っ張りながら糸を結ぶのは苦労するため張力を調整できるテンションプーリーを追加しました。原理はプーリーを固定する穴を幅3.2mm長さ8mmの長穴にして、最も緩めた状態で糸を結んでから長穴に沿ってプーリー軸をずらし、程よい張力のところでナットを締め固定するようにしました。

 

 ダイヤル部の構造(前側から)

◆針の移動距離について(2014/8/23)
ダイヤルの回転軸はφ3の真鍮棒を使っているため針の移動距離は 3×3.14×10=94mm と思っていましたが、実際に作ってみると110mmほどになりました。これは糸の太さを考慮していなかったわけで、φ0.5の糸を使う場合は (3+0.5×3.14×10=110mm と考えることが必要です。

◆糸のスリップを松脂で改善(2014/8/30)
糸の張力を少し強めにするとプーリーがうまく回らず糸がスリップし、ダイヤルを回す時にガリガリといった感触が加わるという問題が出てきました。滑り止め対策としては糸に松脂を塗るという方法があり、ネットで検索したところバイオリンやチェロの弓弦に塗るものがあると知り注文しました。画像のものは松脂部分が20×46×9mmというサイズで594円でしたが、これを糸に塗ったところ見事にスリップがなくなり、プーリーの回転はスムーズになりました。

 

◆外部ダイヤルとして実際に使ってみる(2014/9/6)
横行ダイヤルの構造が落ち着いたので目盛りを貼り、実際に使ってみることにしました。144S5機のバリコンをバリキャップに変更し、外部に線を引き出してヘリポットに接続しました。ツマミを回すとヘリポット独特の抵抗体の上をローラーがなぞる感触に多少の負荷がかかったもので、ボールベアリング+フライホイールの滑らかさとは違う世界です。144.130〜144.260MHzの可変幅となりましたが、針の位置で周波数が直感的に判るのは横行ダイヤルの優れた点と思います。

 

正面カバーをつける(2014/9/6)
横行ダイヤルのパネルの四隅に高ナットをつけ5mm浮かして正面パネルを追加してみると、無線機というよりはFMチューナーのような感じになってきました。

 

<完了>