アンテナインピーダンスメータ                           もどる

◆はじめに(2022/6/17)
SWRブリッジを作ったことがきっかけになり、休眠部品の物色を続けています。下の写真は50年ほど前に購入した日置のMK-38型S目盛り付き100μAのメータです。短波帯の受信機に使っていたもので、大卒初任給が40K前後だった頃に1K以上しており、学生の身にとっては高価な部品でしたが、しっかりした作りなので今でも問題なく使えます。こういった部品にも再登場してもらい、最後のご奉公をお願いしようかと製作テーマを探しました。

 50年ほど前に購入した日置のMK-38型100μAのSメータ

アンテナインピーダンスメータ(2022/6/17) (*1)

  1. 給電線とアンテナとのマッチングはSWRメータで測定できますが、SWRが1.0から外れるとアンテナのインピーダンスが高いのか低いのか判らず、調整するときにエレメントを長くすればよいのか短くすればよいのか判別がつきません。
  2. そんな時に活躍するのがアンテナインピーダンスメータで、SWRブリッジを作った時に参考にした大久保OMの「アマチュア無線自作電子回路」の中に製作記事があります。
  3. トロイダルコアを使ったインピーダンストランスでTX側の50Ωを100Ωに上げ、ANT側のインピーダンスが50Ωならばメータの針は中央値になりますが、それから外れれば針は右か左に振れ、アンテナのインピーダンスを示すことになります。
  4. トランスのインピーダンスは巻き数の2乗に比例するため、7t:10t=49Ω:100Ω となります。
  5. 記事にはQRPでも測定できるよう動作範囲が10mW〜1Wとなっており、ダイオードにバイアスがかかっているのは、微少入力時における非直線領域から直線領域にシフトさせるためのものと思われますが、0.5Wとかある程度パワーがあれば、このバイアスは無くても良いとも思えるため、実験で確認してみます。
  6. 安価なラジケータでもインピーダンスやSWRの表示は出来ますが、目盛りが均等にならないため、ここは適材適所として目盛りが均等割りのMK-38に活躍してもらいます。

 アンテナインピーダンスメータ試作回路

◆インピーダンスと電流値(2022/6/24)

  1. 10Ω〜250Ωまで9種のダミーロードを作り、インピーダンスと電流値の関係を調べました。
  2. 送信機は八重洲のFT-817NDで周波数は7MHz、出力は0.5W、モードはFMです。
  3. スイッチをSET側に倒して送信し、ボリュームを回してメータの100μAの位置にセットし、スイッチをMEAS側にしてその時の電流値を記録しました。
  4. ダミーロードを交換して同じ実験を繰り返し、記録します。
  5. なおダイオードに対しバイアス電流を @流す A流さない の2種類を実験しましたが目立った差はありませんでした。送信出力が10mWとかになると差が出るかもしれませんが、ここではバイアスなしで進めます。
  6. インピーダンスが容量性を示す場合はエレメントを長くし、誘導性の場合はエレメントを短くしてSWRを1に近づけます。

特性

SWR

ダミーロード(Ω)

電流値(μA)

容量性

5

10

15

3

16.7

24

2

25

33

1.5

33

40

 

1

50

50

誘導性

1.5

75

60

2

100

67

3

150

75

5

250

82

 上の表から作った目盛り

 インピーダンスメータ試作機

 10Ω〜250Ωまで9種のダミーロード

◆何MHz まで使えるか(2022/6/24)

  1. 9種のダミーロードを交換して測定すると、下の表のように7〜50MHzは正しい値を表示しますが、144MHzでは少な目の値になります。
  2. ただ中央のSWR1(50Ω)は正しく表示するので、それより高いか(誘導性)低いか(容量性)の判断はできるため、このインピーダンスメータで50Ωより高いか、低いかの見当を付けてから、SWRメータで最終的な調整に入るという方法が考えられます。

ダミーロード(Ω)

SWR

7〜50MHz

144MHz

10

5

1.8

16.7

3

1.5

25

2

1.4

33

1.5

1.3

50

1

1

75

1.5

1.3

100

2

1.7

150

3

2.5

250

5

3

◆構造設計(2022/7/1)

  1. インピーダンスメータは測定時のみ使い、測定が終われば外すという使用法になるため、コネクタは背面並列配置ではなく側面直線配置にしました。
  2. 空中配線による最短配線を目指し、検出部のみにすれば更に配線を短くできるでしょうが、使い勝手のこともあるためメータは内蔵とし、以上をまとめると下のイメージ図になりました。

 イメージ図

◆回路図(2022/7/1)
バイアス回路を省略し、最終的に下の回路になりました。

◆ケース作りと内部配線(2022/7/1)

  1. ケースのサイズは幅60×高さ75×奥行30mmで、1mm厚のアルミ板で作りました。
  2. 高周波が流れる部分は空中配線により最短距離で結びます。
  3. ANT側コネクタとTX側コネクタの間に同軸1.5D2Vの網線にてアースラインを作りました。

 内部配線

 外観

使用方法(2022/7/1)

  1. TXコネクタに送信機、ANTコネクタにアンテナをつなぐ。
  2. SET側にスイッチを倒して送信状態にし、LEVELツマミでメーターの針をSET位置に合わせる。
  3. スイッチをMEAS側に倒して針の振れを読む。
  4. 50Ω(SWR=1.0)であれば調整不要。
  5. 中央より右に振れば誘導性なので、エレメントを短くする。
  6. 中央より左に振れば容量性なので、エレメントを長くする。

 100Ωのダミーロードを接続するとSWRは2を示した

<完了>


参考文献 (*印)

  1. アマチュア無線自作電子回路 大久保忠 著 CQ出版社 P130-133
  2. アマチュアのアンテナ設計 岡本次雄 著 CQ出版社
  3. アンテナ調整ハンドブック 角居洋司 著 CQ出版社