144MHzSSBハンディトランシーバー(144H4) ホームへ戻る
◆はじめに(2017/5/26)
144MHzの電池内蔵SSBトランシーバーを作ってみようと思ったのは、1997年に秋葉原で550mAの単4ニッケル水素を見つけたのがきっかけでした(当時単4は220mAのニッカドが一般的でした)。1997年に1号機を作り、その後数年おきに2号機(144H2)、3号機(144H3)と作ってきました。見た目は同じようなものでもその時点での自分なりの考え方や入手部品の関係で回路を変更してきています。今年は144S5機の改造でトロイダルコアを採用したり、バラモジにNE612を使ったりと144MHz機の性能改善を進めており、これを7.2V仕様のハンディ機にも反映して2017年バージョンを作ろうと思います。
(左)1号機、2号機 (右)ラグ板による144H4試作機
◆特徴(2017/6/2)
◆仕様(2017/6/2)
製作上配慮した点
◆共通部(2017/6/23)
◆送信部(2017/6/23)
◆受信部(2017/6/23)
基板裏に追加した2個のシリコンダイオード
使用する部品
◆VR/可変抵抗器(2017/6/23)
バリキャップに電圧を供給するVRは安定した周波数を発振するためのリグの心臓部とも言える部品であり、主同調は通信機用(共立で@388)副同調部は角型のモールドタイプ(@100ほど)を使うことにしました。φ16の一般用でも当初は問題無いと思いますが、摺動面はカバーされているものの外気に接触しているため、いずれはガリオームになると周波数飛びの原因になります。その点密封型は長期的な安定性が期待できるため採用することにしました。
(左)主同調/φ24通信機用 (中)副同調/角型 (右)φ16一般用
◆トロイダルコア(2017/6/23)
サトー電気で販売している7Kコイルについて性能評価のため国産と中国製を空芯コイルと比較してみたことがあります。その結果50MHzまでは遜色無く使えますが、144MHzになると伝達効率が70%ほどに低下することが判りました。しかしFCZコイルの144MHz用は空芯コイルと同等の性能であり、おそらくコアがフェライトではなくカーボニル鉄を使っているからではないかと推察しました。私が作る144MHzのトランシーバーはサトー電気の7Kボビンを多用しており、損失分は増幅度でカバーするしかないかと割り切っていたものの、頭の隅には引っかかっている問題でした。アミドンやマイクロメタルのトロイダルコアはカーボニル鉄を使い損失が少ないとPRしており、ここで採用してみます。
◆トリマコンデンサ(2017/6/30)
φ5の小型トリマコンデンサは日本橋の共立で購入できましたが昨今は入手困難になったので、サトー電気の通販にて@50ほどで購入しました。周囲を樹脂でカバーしたものの方が入手はしやすいのですが、画像のタイプはローターの位置がわかりやすい(容量が推測できる)ため採用しています。
◆NE612(2017/6/23)
500MHzまで使えるNE612(SA612等)は値段も様々で20年ほど前は共立電子で500円しており、気楽に使えるものではありませんでした。現在でも1Kほどの値段をつけている店もありますが、私はイーエレにて320円で購入しました。外付け部品が少ないのでバラモジ部は簡素化でき、また使わない2,7ピンはパスコンでグランドに落としてバランスが崩れないようにします。
NE612AN
◆水晶(2017/5/26)
サトー電気でフィルタに使う12.288MHzのHHC49US水晶(@40)を30個購入し、発振周波数の分布を調べました。フィルタに使う水晶のバラツキは帯域の10%といわれており、2.4kHzの場合は24OHzになります。そのため6個を高い周波数順に選び、また局発の水晶は一番低い周波数のものとします。
水晶の端子間容量を3個測定すると、その平均は2.5PFFでした。そのためラダー型の2.4kHzフィルタを作ろうとすると両端は41PF、中央は82PFになり、インピーダンスは316Ωと計算できました。
◆S/RFメータ(2017/7/7)
S目盛りのあるラジケータは以前はデジットにて見かけたのですが、ここ何年も見かけることはなくなりました。小型のラジケータを見つけた場合はぜひ買い込んでおいてください。正面パネルへの固定は0.6mm厚のアルミ板で画像のようなものを作り、2mmのビスで固定しています。
◆放熱器(2017/6/30)
0.2mmの銅板を幅10mmに切り出し、終段の2SC2055に巻きつけ、合わせ面を半田付けし、隙間には放熱用のシリコングリスを充填しておきます。終段電流は最大80mAなので放熱器なしでも大丈夫とは思いますが、安全のためつけておきました。放熱器には「2055」と書いて終段の石に何を使っているか判るようにしておきます。
◆スピーカー(2017/6/23)
(左)ピンコネクタ (中)ピンコネクタを2個ずつ使ってオス/メスの端子を作る (右)端子を接続したところ
◆充電池(2017/6/30)
パナソニックのエネループというニッケル水素充電池の単4型6本を使いました。元はSANYOの商品で下のような特徴があります。
単4エネループ スタンダードモデル
◆電池ケース(2017/6/23)
電源として単4サイズの充電池を6本使いますが、6本用の電池ホルダが入手できないため3本用のホルダを2個つなぐことにします。全長52mmのホルダを4mmカットし裏側にある黒色の線をつなぎ、絶縁のため1mm厚のゴムシートを挟んで後部パネルに2.6mmの皿ビスで固定しました。後部パネルの厚みが1mmでは電池ホルダのバネの力で反り電池が外れやすくなるため1.5mm厚にしました。また電池を後部パネルに取り付けることで重心が下るため、リグを置いたときの安定感が増します。
(左)単4×3電池ケース (右)端を4mm切って裏側の線をつなぐ
間に絶縁用の1mm厚ゴムシートを挟んで後部パネルに固定
ケースの製作
◆パネルデザインと操作性(2017/6/2)
このトランシーバーは正面パネルを上にし、左手でマイクを持ち、右手でチューニングをするという運用スタイルになるため下のようなデザインを考え、Sメータや表示LEDは手前に、ツマミ類は奥側に置き、また操作し易いかどうかを確認するため正面パネルを先に作って検証を行いました。
◆カレイナット(2017/7/7)
カバーをケースに固定するため側板にM3のカレイナットを圧入しました。以前はM3のナットを2液性接着剤で固定していましたが、カレイナットの場合はφ4.5の穴をあけ裏側から引っ張り締めすれば固定されます。作業は楽になりましたが単価の高いのが難点です。(秋葉原・ネジの西川にて30個600円)
(左)カレイナット (中)側板に圧入 (右)反対側
基板の製作
◆プリント基板の設計と作成(2017/6/9)
(左)トランスバータ部 (右)ジェネレータ部
(左)トランスバータ部 (右)ジェネレータ部
◆部品の取り付け(2017/6/16)
部品の取り付け(半田付け)は回路図と表裏のパターン図を見ながら粛々と進めます。もし回路図どおりでないパターンミスがあればカッターでパターンを切って修正しますが、穴の空いていない箇所があったりと手作りの場合は1つや2つのトラブルは日常茶飯事です。hi なおトランスバータ部は扱う周波数が高いためガラエポ基板を使用し、ジェネレータ部は安いベークを使いました。
(左)トランスバータ部 (右)ジェネレータ部
◆試験台での動作確認と調整(2017/6/16)
試験台での試運転
◆ケースに入れて動作を確認(2017/6/30)
シンナーをしみ込ませた綿棒で銅箔面を掃除する
(左)トランスバータ部 (右)ジェネレータ部
◆正面パネルのレタリング(2017/7/7)
正式には塗装後にレタリングをしますが、とりあえずはインクジェット用の粘着シートに正面パネルのデザインをプリントして貼り付けました。
調整手順(2017/7/14)
◆準備する測定器
◆共通部
電圧降下検出部
スタンバイ部
局発部
VXO部
◆受信部
◆送信部
各部の測定
◆FFTでの観測(2017/6/23)
試験台に乗せて各部の高周波電圧チェックや波形の観測を行いました。
(左)VXOの出力132MHz (右)アンテナ端子144MHz
◆VXOの周波数変動(2017/7/7)
VXOの132MHzにおける周波数変動を調べてみました。電源投入後の1分は大きく変動しますが、その後は10Hz/分以下であり、私が基準とする100Hz/10分以内に入っており電源ONしてから1,2分たてばオンエアできるレベルです。ただし運用中はリグに直射日光を当てないと言った急激な温度上昇への配慮は必要です。
◆入力周波数対送信出力(2017/7/7)
マイク端子にオーディオジェネレータをつなぎ、入力周波数を変化させたときの送信出力を測定しました。男性の声は500Hz前後なのでこの程度の帯域であればOKと思います。
使用感と改善点
◆Sメータの振れが悪い(2017/8/11)
(左)Sメータ (右)AGC2段増幅の実験
◆ロッドアンテナにすると受信時に発振気味になる(2017/8/11)
「製作上配慮した点」でも書きましたが、ダミーロードやグランドプレーンをつないだときは安定動作するものの、50cmのロッドアンテナをつなぐと動作が不安定になることがありました。そのため高周波増幅の入力部に極性を逆に接続したシリコンダイオード2個を基板の裏に追加して対策としました。
◆リグの整備(2022/10/28)
基板を外さないと改造できないことからしばらく手掛けてなかったのですが、以下の点を整備し回路図を更新しました。
(左)改造前:銅板で作った放熱器を2SC2055に取り付け空中放熱
(右)改造後:放熱器を新たに作ってケースにネジ止め
シールを新しく作って貼りなおす
外観
◆整備を終えて(2022/10/28)
144MHzSSBで交信していると「再開局しました」と挨拶される局がたまにあり、コロナの巣ごもりで趣味を再開したり、定年退職して時間のできた方が多いようです。10代で開局した人も半世紀たてば60代。これまで平日は閑古鳥でしたが、ワッチしてみるとQSOの声が聞こえる日もあります。0.3Wの144H4機を作ったのち、0.8〜2Wの144H5,144H6,144H7機を作ってからは144H4機の存在感が薄くなりましたが、今回整備したことでちょっと出かける時のお供にすると、愛着心が沸いてくるものです。気まぐれと言えばその通りですが、古いリグを整備して再登場させてはいかがでしょうか。
◆革ケース作り(2023/7/22)
移動運用時におけるアルミケースの傷つきや擦れ・凹み防止対策として革のケースを作りました。
運用実績
日付 |
相手局 |
HIS |
MY |
当局アンテナ |
当局運用地 |
相手局運用地 |
距離(km) |
2017/7/1 |
JH3BTW/3 |
59 |
59 |
8mH 1/4λGP |
伊丹市(自宅) |
兵庫県西宮市 |
9 |
2017/7/8 |
JO3ALU/3 |
59 |
59 |
スリーブアンテナ |
宝塚市(移動) |
京都府宇治田原町 |
50 |
2017/7/23 |
JH2FTE/3 |
59 |
59 |
8mH 1/4λGP |
伊丹市(自宅) |
奈良県吉野郡天川村 |
80 |
2017/7/23 |
JA3WCZ |
57 |
53 |
スリーブアンテナ |
宝塚市(移動) |
大阪府泉佐野市 |
47 |
2017/8/26 |
JM3ROY/3 |
59 |
59 |
スリーブアンテナ |
宝塚市(移動) |
和歌山県海草郡紀美野町 |
80 |
2022/10/16 |
JO3QZA/3 |
57 |
57 |
1/2λ電圧給電アンテナ |
宝塚市(移動) |
大阪府岸和田市(海岸) |
57 |
<完了>