トランシーバー用革ケース ホームに戻る
◆はじめに(2023/6/16)
キャンプ番組の中で色々なギア(道具)の紹介があり、メーカー品から手作りされたものまで、軽く、丈夫で、コンパクトに収納でき、遊び心もある品々を見ることは楽しいものです。下の画像は番組の出演者が革と木の板で手作りした「スパイスケース」というもので、その中に数々の調味料を入れており、この構造をトランシーバーのケースに応用できないかと思いつきました。なにせ革細工というものは初めてなので、用語も知らなければ、どんな道具があってどう使うのかもよく判っていませんが、計画する→やってみる→ふりかえる→改善する の手順はどの世界でも同じです。まずは取り組んでみて用語を覚えたり、作り方のコツを体感していきましょう。
(左)スパイスケース (右)収納予定の21H2機
◆ケースを作る目的(2023/6/16)
- 移動先で運用すると、ケースをぶつけたり、倒したり、こすったりして柔らかいアルミに傷をつけてしまうのを防止したい。
- 搬送時における @電源スイッチON防止 Aスイッチやツマミ類を保護したい。
□電源(プッシュスイッチ)、〇アンテナ調整用キャリヤ発生(トグルスイッチ)
◆革を購入する(2023/6/16)
- 近所に革細工用品を扱う店があるかどうかも判っていないため、アマゾンで検索し「ヌメ革、ワケあり、茶色、2mm厚、A3サイズ、3枚、4,980円」を注文すると翌日に届きました。
- 多少厚みにムラのある物も入っていましたが、表面はきれいで色合いが揃っており、適度な硬さもあってしっかりしたケースが作れそうです。
A3(297×210)サイズ2mm厚の革3枚
◆ケースの構造(2023/6/16)
- 革細工というと針と糸の手縫いが基本と思いますが、上のスパイスケースなら革を釘で止めれば出来そうで、初心者向きと思いました。
- 側板として12mm厚の板を使い、その周りを革で巻き、釘で止め、蓋部にホックを付けるというものです。
- スピーカーの位置には穴をあけておきます。
水色は21H2トランシーバ、黄緑色ハッチング部は側板
◆部材を作る(2023/6/16)
- ケースに入れる21H2機のサイズは(突起物を含む)幅138×高さ155×奥行42mmで、ケース内側の寸法は幅142×高さ158×奥行45mmとして、3〜4mmの隙間を作りました。
- ケース外側の寸法は幅166×高さ164×奥行52mmです。
- 側板に45mm幅×12mm厚のパイン集成材を長さ158mmに切り、蓋側は半円形に仕上げます。
- 革はA3フルサイズの420mm長を166mm幅にオルファの「POWER
OF X」という分厚いカッターで切り出します。
- 底部の折り曲げる箇所は、彫刻刀(3mm丸刀)で深さ1mm程の溝を彫りました。
- スピーカーが位置する箇所にφ5のポンチで穴を7個開けました。
(左)主な部材 (中)オルファカッター (右)彫刻刀で溝を彫る
◆裏面の毛羽立ちを抑える(2023/6/23)
- 革の裏面(床面)や切り口(コバ)の毛羽立ちを抑えるために「コバ・トコ面磨き剤(トコノール、トコフィニッシュ等)」を塗ります。
- 指か布に少量を付け、毛羽立ちの部分にうすく塗り広げて乾燥させます。
- 塗布面の艶出しのため、丸く面取りされたガラス板で磨くという手法もあるようですが、持ってないので省略しました。
(左)床面磨き剤 (中)塗布前 (右)塗布後
◆ホックを付ける(2023/6/23)
- 側板の周りを革でぐるりと巻き、蓋になる部分にホックを付けて本体側に止めます。
- ホックを付けるには、部品(アタマ、バネ、ダボ、アシ)、ポンチ(ハトメ抜き)、打ち棒、打ち台等が必要ですが、アマゾンにて、ホック径12mm×15セット+工具類で950円でした。
- 3mm厚のゴム板を敷き、上に革を乗せ、ホックを取り付ける位置にポンチ(ハトメ抜き)で2.5oの穴を開けます。
- 下記画像のAとB、CとDをセットにして、打ち棒、打ち台、ハンマーを使ってカシメます。
購入先のサイトから引用
(左)ホックセット (右)ホック取付済み
◆革を貼る(2023/6/23)
- 側板の周囲にボンドを塗り、革を貼り、たるみが出ない様に気を付けながら、真鍮丸頭釘(φ1.2×10mm)を30mmピッチで打ちつける。
- はみ出したボンドは布でふき取る。
- ボンドは浸透性に優れた革専用もあるようですが、今回は木工用(革もOK)を使いました。
(左)側板にボンドを塗る (中)真鍮丸頭釘 (右)釘を打ち付ける
(左)完成したケース (右)21H2機を入れる
◆ニスを塗る(2023/6/23)
側板が白木で革の茶色と色合いが離れてしまったため、ケース完成後ですが着色ニス(けやき色)で塗装しました。本来は組み立てる前に側板単体で塗装すべきですが、試作1号機で様子を見ながら作っているため、順番違いの事後処理は多々あります。hi
(左)着色ニス (中)塗装前 (右)塗装後
◆ふりかえりと今後について(2023/6/23)
- 12mm厚の側板と2mm厚の革を使ったこともあって、しっかりとした「ハードケース」になり、トランシーバー本体の傷つき防止が出来ました。
- 搬送時における @電源スイッチON防止 Aスイッチやツマミ類の保護 についても対処できました。
- 完成までの試行錯誤で底部に足用の穴をあけたり、塞いだりしましたが、見栄えが悪いので目隠しとして30×40mm程の革を2枚貼りつけ足としました。
- ホックを止める側の部品D(アシ)がケースの内側に出ており、この部分を毎回ホックで押すため、トランシーバに傷を付けないよう10mm角程のフェルトのあて布をボンドで貼り付けました。
- 型絞りの技法を使えば文字入れもできるので、コールサインとか機番等も入れてみたい。
□電源(プッシュスイッチ)、〇アンテナ調整用キャリヤ発生(トグルスイッチ)
◆コールサインプレートを追加(2023/6/30)
刻印セットを購入し、革を水で濡らしてから刻印したコールサインプレートを作ってみました。それを側板に貼りつけると、よりオリジナル感が増します。
◆144H7機用の革ケース(2023/7/7)
初心者用の革細工手縫いセットをアマゾンで揃え、144H7機(144MHzSSBトランシーバ)用の革ケースも作りました。新しく取り組んだ点は
- 144H7機は21H2機よりも背が10o高く、手持ちのA3サイズ(420×297mm)の革では長さが不足するため、クロスステッチという方法で革をつなぎました。
- 側板は組立前に単品で塗装しておきました。
- 底部の足は接着ではなく縫い付ける。
(左)144H7機用革ケース (右)背面
(左)革を継ぎ足したクロスステッチ部 (右)底部の縫い付けた脚
144H7機を収納
◆振り返り(2023/7/7)
今回革細工というものを初めて手掛けましたが、身近なバックの構造を観察し、道具や材料を揃え、図面を書き、手順を考え、そして実行し、振り返って反省する。という流れはどの世界も共通していますね。
<完了>
参考資料
- ホックの付け方
- 革の縫い方
- 床面磨き
- 型絞り
- 安井商店 東大阪の革の専門店
- 文字入れ 100均で打っているクッキースタンプを使った文字入れ
- クロスステッチ 革をつなぐ手法