50MHzAMトランシーバー                  ホームに戻る

これまでの50MHzAM自作品

◆真空管式送受信機(2000/12/28)、(2022/10/11追記)
50MHzのAMは1964年の開局周波数・モードということもあり特別の思い入れがあります。下の画像は開局当時に使っていた送信機と受信機です。送信部はFT243 8.35MHz水晶-12AT7-6AR5の送信機で寄生発振に悩みながら対策し、その後水晶-12AT7-6RP10に変更して安定した動作になりました。変調部は12AU7-6AR5では変調が浅いと交信中に指摘され、6U8-6AQ5に変更して深い変調がかかるようになりました。真空管の差替えやソケット周りの回路変更をしながら性能を改善できるのは、真空管の有り難いところでした。水晶を1個しか持っていなかったため、CQを出してからおもむろにバンド内をワッチし、数百kHz離れたところでコールする局を見つけて交信するという、のんびりとした時代でした。

 
 (左)50MHzAM送信機 (右)短波受信機(これに6RR8-6J6のクリコンを付けて50MHzを受信)

◆球から石へ(2022/10/11追記)
1970年代に入り高性能のシリコントランジスタが安く手に入るようになり、時代は球から石へと変わりつつありました。また集積回路が幅を利かせ始めた時でもあったのです。そんな時にトリオのTR5200をイメージしてトランジスタ式の1号機を作りました。終段2SC799で出力は0.5Wですが、3Wの変調トランスを使っていたせいか「いい音してるね」と言われた事がありました。受信周波数にキャリブレーションして送信周波数を決める旧来の方式で、外観は凝りましたが内部を見るとトランジスタのリード線は短く切らずに長いまま使っているし、ラグ板の配置や配線経路は行き当たりばったりで決めているなど、恥ずかしいほどの仕上がりです。

  
1974.4.11完成の1号機 (左)前面 (中)上面 (右)下面


計画編

トランシーブタイプのトランシーバを計画(2000/12/28)、(2022/10/11追記)
50MHzAMのトランシーブトランシーバーとして世に出たのはトリオのTR1200が最初で、その後ナショナルのRJX-601に続いたと記憶します。受信時に同調した周波数がそのまま送信周波数になるという、SSBでは当たり前ですがAM機にはなかった機能で憧れました。回路図探しをすると50AM機のオーソリティJR8DAG菅野さんのHPにあり、構成は殆どコピーですが、それだけでは面白くないと自分なりのスパイスを効かす事にします。

 
(左)トリオ TR1200
 (右)ナショナル RJX-601

◆スパイス その1:スケルチをつける(2000/12/28)
製作の目的は毎週金曜日21時からの南大阪A3ロールコールに出ることキー局のJA3XQO竹中さんは結構遅刻する50.55MHzで長いことノイズを聞くのはいやだスケルチをつけよう→これなら待ち受けするにも都合が良いとなりました。

◆スパイス その2:モニタを付ける(2000/12/28)
SSBの場合は出力メータが振れていれば変調がちゃんとかかっているかが分かります。しかしAMでは若干マイナス変調はあるものの出力メータは振れっぱなしです。出力メータを振らすならその一部をもらってモニタし、自分の変調音を聞けるようにしてみようと思います。これは真空管時代に50MHzのゲルマラジオを作って、常に自分の変調音を確認していたという習慣によります。

◆仕様(2000/12/28)

  1. 周波数 : 50.500〜50.650MHz
  2. 送信出力 : 0.5W
  3. 終段 : 2SC1971
  4. 電源電圧 : 12V
  5. 変調方式 : コレクタ変調
  6. 中間周波数 : 10.24MHz
  7. 寸 法 : 幅160×高60×奥行180mm


共通部

◆VXO(2000/12/28)
VXOの発振に使う水晶は1個150円程度で手に入る13.518MHzを使いました。2SC1906で発振させたあと、2SK241で3逓倍します。電圧は三端子レギュレータを使い安定化した5Vを供給します。

 VXO部

◆減速機構(2022/10/15追記)
6:1のボールドライブ減速機を使います。ポリバリはカップリングを使わず減速機直結で、芯ずれによる過負荷を防ぐため、3mmのゴム板に取り付けています。

 減速機に直結したポリバリ


受信部

◆高周波増幅、混合回路(2000/12/28)
2SK439による高周波増幅後、混合回路にてVXOからの出力と合成し10.240MHzの中間周波数を作ります。

◆水晶フィルタ(2000/12/28)
10.24MHz,HC49Uの水晶4個によるラダー型フィルタを構成し、帯域は6kHzです。

◆中間周波増幅部(2000/12/28)
2SK241による2段の増幅です。IFTの2次側コイルは使わず、ハイインピーダンスで次段に渡しています。

◆検波・AF増幅(2000/12/28)
中間周波増幅コレクタ出力をハイインピーダンスで受け検波するとともにAGC電圧を作り、高周波と中間周波増幅に戻しています。また検波出力をAF1段増幅しています。

◆スケルチ(2000/12/28)
AGC制御された中間周波2段目のソース電圧は無信号の場合高くなるため、その電圧を利用し、AF増幅のベースをスイッチングしてスケルチにしています。この回路は1970年代でしたかCQ誌の「私の工夫」で発表され、その後同じ考え方の回路が井上のIC71に採用された。と私の独断的記憶にあります。

◆Sメータ用検出回路(2000/12/28)
2段目の中間周波増幅2SK241のコレクタから倍電圧検波してSメータ用の電圧を作っています。

◆パワーアンプ(2000/12/28)
お決まりのLM386によりスピーカを鳴らしています。


送信部

◆局発、周波数変換(2000/12/28)
10..24MHzの周波数を発振し、VXOからの40MHz台の周波数をSN16013Pにて混合し50MHz台の周波数を作ります。AMの場合受信周波数にゼロインするのは難しいため、ゼロビートをとる意味でキャリブレートのスイッチをつけています。

◆増幅・終段(2000/12/28)
2SK439と2SC1906により信号を増幅し終段の2SC1971にドライブをかけます。0.5W機で2SC1971は少し大きい気もしますが、エミッタにつながったフィンを直接アースできる魅力は隠せません。

◆変調回路(2000/12/28)

  1. 送信出力を決めるのは、どれだけの容量の変調トランスを使うかで決まると思います。
  2. このトランシーバを設計する時、最初に決めたのは送信出力をどうするかで、私の頭では送信出力=変調トランス容量となっています。
  3. 市販のトランスと言えば山水で、その中から適当な容量のものを探すと0.2W、0.7W、3Wとありますが、程々の出力ということで手持ちのST-84という0.7Wのものを使うことします。
  4. これの仕様は1次のインピーダンスが150Ω、2次は4と8Ωで質量は60gです。また出力は少し余裕を持たせて0.5Wに決めました。これであればAF増幅素子としてお馴染みのLM386が使えます。なお電源は常時加えているため受信時には3ピンに電圧をかけて動作を殺しています。
  5. またマイクはコンデンサマイクを使用しました。
  6. 変調方式は終段コレクタ変調ですが、ドライバの2SC1906に対しても変調トランスのセンタタップ部分から軽く変調をかけています。

◆モニタ回路(2000/12/28)
このトランシーバの1つの特徴はモニタ回路です。送信出力メータを振らせる回路から一部を拝借して受信部のAF増幅につなぎ、モニタ回路としました。時々は自分の電波を監視したいものです。モニタを使うときはスピーカではなく必ずイヤホンを使ってください。


<完了>