50MHzSSBトランシーバの製作(50S3)
はじめに(2009/04/19)
3エリヤの50MHzは、休日以外はガランとしており、時々ダイヤルを回しても中々QSOは聞こえません。それならば、誰か出てないかを自動ワッチできる機能のトランシーバがあればCQを聞き漏らすことも無く、QSOの可能性が高まります。ここではバリキャップ同調と三角波発振回路を組み合わせ、自動ワッチできるトランシーバを紹介します。
◆本機の特徴(2011/07/01)
◆本機の仕様(2009/04/19)
回路の説明
元になる回路は50S2機なので、それをお読みください。ここでは本機の特徴的な部分を解説します。
◆同調部分(2009/04/19)
同調にはバリコンは使わず、富士通のFC54Mというバリキャップを使いました。また10回転のヘリポットを使うことで1回転の最大が40kHz、最小が13kHzとなり、チューニングが容易です。バリコンに比べバリキャップはQRHが多そうな感じを長いこと持っていましたが、使ってみると遜色なく使える事が判りました。ポイントは、@3端子レギュレータを使って安定化した電圧を加えること。 A可変抵抗器は安いボリュームではなく、10回転のヘリポット(@1300円程度)を使うことです。ボリュームでは抵抗面のざらつきのためか、細かい周波数変動が現れます。なお、VXOの発振部(バリキャップ+コイル+水晶+2SC1906他)には0.6mmのアルミ板で作った簡単なケースを被せ、リグ内の温度変化を緩やかに受ける構造にしています。
10KΩヘリポット バリキャップ VXO用ケース
◆オートスキャン(11/07/01)
タイマー用ICのNE555を使って三角波を発生させ、その電圧をバリキャップに加えることで、バンド内を約5秒でスキャンすることが出来ます。NE555だけの出力では変化範囲が少ないため、出力を2SA1015で受け、電圧変化幅を0〜5Vとしました。これによって周波数は上から下、下から上へとゆっくり変化します。なお三角波は図のようなきれいな形ではなく、上側で少し間延びした感じになります。
◆周波数表示(2009/05/04)
本機のユニークな点の1つですが、周波数はメータによるアナログ表示です。バリキャップにかかる電圧を10kΩの抵抗で受け、250μAのメータで表示します。
上側が周波数表示、下側がS/RF表示
製作
◆ケースの製作(2009/04/19)
ケースはアルミ板で自作しました。正面パネルは1.5mm厚、それ以外は1mmと一部に0.6mmを使いました。ネジ類はほとんど2mmを使いますが、上下のフタは3mmの化粧ネジ、ゴム足の固定は3mmのネジを使いました。
ケースの部材 組み立てたケース
◆周波数表示用目盛りの作成(2009/05/04)
トランシーバが完成してから実際に電波を発信し、その周波数をカウンタで読み、メータの針の位置を記録し、周波数目盛りを作ります。CADで目盛りを描き、インクジェットプリンタで写真用紙にプリントしたもの(16×8mm 一部切り欠きあり)を両面テープで貼り付けました。このメータは印加電圧に対し上側が詰まった特性であり、バリキャップの非直線性と合わせ、画像のような周波数表示になりました。ただし大雑把です。hi
ラジケータ 目盛りを両面テープで貼り付け
◆ヘリポット回転数と周波数の関係(2009/04/26)
ダイヤルと周波数の関係は直線が理想ですが、そうはいかず下側での変化幅が多くなりました。1回転の最大は40kHz、最小で13kHzです。バリキャップへの印加電圧は当初8Vにしていましたが、上側での変化幅が少なくなったため5Vに変更しました。下のグラフは紺色の線が実測値で、ピンク色の線は比較のために引いた直線(基準線)です。
◆終段の放熱板と温度上昇(2009/05/07)
幅30×長さ33×厚さ1mmのアルミ板(一部切り欠きあり)をL型に曲げ、画像のような放熱板を作りました。2SC1970のフィンは絶縁シートを挟み、ポリカーボの3mmビスで固定しています。また放熱板はケースの背面パネルに取り付け、ケースからも放熱しています。温度上昇については、送信出力1Wで10分間通電したとき、2SC1970の表面温度は8℃上昇しました(室温22℃)。なお、絶縁シートの説明書を読むと、シートには弾力性があるため、シリコングリスの塗布は不要とのことでした。
◆終段の2SC1970について(2009/05/08)
終段には三菱の2SC1970を使用しています。SSB送信機の終段として使うには、入力信号に対する直線性が大切であり、出力は1W程度に抑えておくことが必要です。なお2SC1970のフィンはコレクタに接続しているため、絶縁シートをはさむことで放熱板(グランド)との間でコンデンサが形成され、終段の最大出力は2割ほど落ちます。フィンを固定しているポリカーボのネジを緩めると出力が増えるのは、痛し痒しの感もありますが、放熱も必要ですしね。
◆コイルの巻き方の不思議@(2009/05/09)
このトランシーバで使っている7K型コイルは、サトー電気の通販で購入した空ボビンにウレタン線を手巻きしたものです。巻き方は、結合度を高め信号を効率よく次段に伝えるため、2次コイルの上に1次コイルを重ね巻きしています。ところが同じ仕様の50S2機に比べ、2SC1970の入力電圧が低く送信出力も少なかったため、両機の差を比較し、試しにドライブ段2SC1906の前後に使っているコイルの、1次と2次を隣の溝に巻いたものに換えたところ、2SC1970の入力電圧が増加し、送信出力は2割ほど増えました。コイルの結合度が浅くなったのに出力が増えたのは、なんとも説明できませんが、インピーダンスマッチングの関係か、2SC1906の効率が上昇したのか、不思議な思いです。
ドライブ段2SC1906と終段の2SC1970
◆コイルの巻き方の不思議A(2009/05/17)
ドライバ段出力コイルの巻き方で送信出力に差が出るため、もう少し詳しく調べることにしました。2SC1906による増幅回路を組み、50MHzの信号を入力します。出力には、4.7、10、18、47Ωの抵抗を交換しながら負荷として加え、またコイルは @1次と2次を隣の溝に巻く A1次と2次コイルを重ねて巻く の2種類を作りました。なお中心コアは押し込んだ位置で同調させます.
実験の結果
1次と2次を隣の溝に巻いたコイルは、負荷を4.7〜47Ωの範囲で変えても、増幅度は15dBと一定である。
重ね巻きしたコイルは、負荷を4.7〜47Ωの範囲で変えると、増幅度は8〜14dBの範囲で変化する。
以上から、負荷が重い場合の出力に使うコイルは、1次と2次を隣の溝に巻いたほうが良いようです。
◆内部の様子(2009/05/04)
トランスバータ部 ジェネレータ部
◆スピーカーについて(2009/05/31)
スペースの関係で口径40mm、厚さ5mmという薄型のスピーカをカバーに取り付けています。口径が小さいため高音が強調された音で長時間使用すると疲れるため、固定で使うときは50mm以上のものをを外部スピーカとして使い、移動ではオーディオ用のイヤホンを使っています。
◆塗装をして完成(2009/06/27)
◆運用した結果は
アンテナは1/2λのダイポールを使用し、地上高はホームで8mH、移動は釣竿を使っており3mHです。
オートスキャン回路をONにすると、バンドを端から端までワッチするため、誰かが出ていればすぐに判ります。ヘリポットで同じことをするには10回転せねばならず、随分楽になったと思いました。
日付 |
相手局 |
MY |
HIS |
当局運用地 |
相手局運用地 |
距離(km) |
2009/5/5 |
JF3UFU/3 |
59 |
59 |
兵庫県宝塚市(移動) |
和歌山県伊都郡高野町(移動) |
74 |
2009/5/6 | JA5BDZ/5 | 55 |
57 |
兵庫県宝塚市(移動) | 香川県木田郡三木町(高仙山600m) | 133 |
2009/5/6 | JM3QIS/3 | 59 |
59 |
兵庫県宝塚市(移動) | 兵庫県洲本市(移動) |
73 |
2009/5/31 | JJ3SOW/3 |
59 |
59 |
兵庫県伊丹市(自宅) | 大阪府箕面市(移動 六個山395m) | 8 |
2009/6/28 | JF5VSW/5 | 52 |
53 |
兵庫県宝塚市(移動) | 香川県東香川市 | 117 |
2009/6/28 | JH6TLC | 59 |
59 |
兵庫県宝塚市(移動) | 長崎県長崎市 | 560 |
<完了>