QRPパワー計                ホームに戻る

はじめに(2024/9/6)
430MHzまでの出力を計る測定器としてFCZ研のQRPパワー計(No.206 1〜440MHz 100mWと2Wのレンジ切替)を2002年に購入し20年以上使ってきましたが、メータの針がゼロの位置にピタリと戻らなくなったため(たたくと戻る hi)、これを機に自作してみようと思います。


メータの直線性(2024/9/6)
手持部品の中に大阪日本橋のデジットにて400〜500円で買ったSWRメータがありました。窓のサイズは横42mm×縦24mmと比較的大きく、フルスケールは210μAです。これに10等分の目盛りを貼って直線性を調べたところ、基準線に対し少し離れていることが分かりました。

  
(左)デジットで買ったSWRメータ (右)10等分目盛りを貼る

100mWと2Wの目盛りを作る(2024/9/6)
測定器の校正については60Hzの交流や低周波発振器を利用するとい方法(*1)があります。50Ω負荷で2Wの目盛りを打つには10Vの信号が必要なため、ここでは60Hzの交流を使うことにします。

  1. 12V0.5Aのトランスを使い、500Ω50Wの巻線型可変抵抗器(VR1)を通し、50Ω(200Ω3W×4)のダミーロードに交流電圧を加えます。
  2. ダミーロードの端子電圧は交流電圧計(デジタルテスタの交流レンジ)で測定します。
  3. ダミーロードの端子電圧を1SS108で整流し、VR2を通してDCA1電流計(210μA)に加えます。
  4. フルスケール100mWの場合は、ACV1の交流電圧が2.24Vの時にDCA1の電流計がフルスケールになるようVR2を調整します。
  5. フルスケール2Wの場合は、ACV1の交流電圧が10Vの時にDCA1の電流計がフルスケールになるようVR2を調整します。
  6. 交流電圧(ACV1)を下の表のように可変し、そのときの電流計の目盛りを記録します。
  7. 表の数値を基に目盛りを作成し、メータに貼り付けます。

mW

ACV1

DCA1

W

ACV1

DCA1

0 0.00 0 0.1 2.24 26
1 0.22 10 0.2 3.16 40
2 0.32 14 0.3 3.87 51
3 0.39 18 0.4 4.47 59
4 0.45 20 0.5 5.00 66
5 0.50 24 0.6 5.48 70
6 0.55 28 0.7 5.92 75
7 0.59 30 0.8 6.32 78
8 0.63 32 0.9 6.71 80
9 0.67 34 1 7.07 83
10 0.71 36 1.5 8.66 93
20 1.00 57 2 10.00 100
30 1.22 68      
40 1.41 78      
50 1.58 82      
60 1.73 87      
70 1.87 90      
80 2.00 94      
90 2.12 96      
100 2.24 100      

 作成した目盛り

◆回路について(2024/9/13)

  1. 測定出力は100mWと2Wを切り替えて使います。これはFCZ研#206と同じですが、QRP機の自作を進めるにはちょうど良い測定範囲です。
  2. ダミーロードは100Ω2Wのチップ抵抗(秋月で10個140円)を2個並列に接続し50Ωとします。炭素被膜抵抗はラセン状に溝を切っており、高い周波数になるとコイルとして動作する要素があるため、ここでは使わないことにします。
  3. 低い周波数から高い周波数まで、できるだけ均一に信号を検出できるようイコライザ回路を入れており、FCZ#206は5Pのセラコンですが微調整できるよう6Pのトリマにしました。
  4. メータと並列に接続した電解コンデンサの220μは、針の揺れを押さえるためのダンパー(衝撃吸収体)としていれました。

ケースの設計と製作(2024/9/13)
サイズは幅75×高さ54mm×奥行30mmとしFCZ#206とほぼ同じ大きさで、1mm厚のアルミ板とアングルで作ります。

 ケースの部材

◆基板の設計と製作(2024/9/13)
FCZ#206は両面基板を使い、裏面はグランドになっています。ここでは1mm厚片面ガラエポ基板の銅箔部を彫刻刀で削って作りました。

 

◆部品取り付け(2024/9/13)

  (左)検出部 (右)内部配線

◆調整(2024/9/20)
今回製作したQRPパワー計の表示が、FCZ#206と同じになるようVR1,VR2,TC1で調整します。手順は以下の通りですが100%一致はせず誤差が生じるため、ご自分が良く使う周波数で誤差が少なくなるようにしてください。

1.フルスケール2Wでの調整

  1. トランシーバに低周波発振器とFCZ#206を接続し、7MHzにおいて出力を2Wに設定します。
  2. FCZ#206を外してQRPパワー計を接続し、6Pトリマは最小容量にしておき、7MHzにおいて2Wを示すようVR1を調整します。
  3. FCZ#206を接続し、430MHzにおいて出力が2Wになるよう設定します。
  4. FCZ#206を外してQRPパワー計を接続し、430MHzにおいて2Wを示すよう6Pトリマを回し容量を増やします。

1.フルスケール100mWでの調整

  1. FCZ#206を接続し、7MHzにおいて出力が100mWになるよう設定します。
  2. FCZ#206を外してQRPパワー計を接続し、7MHzにおいて100mWを示すようVR2を調整します。

2つのパワー計を比較する(2024/9/20)

  1. FT817をFMモードにして7,21,50,144,430MHzで周波数変えながら、2つのパワー計の表示値を比較しました。
  2. FT817の窓に表示されるL1(LOW1),L2(LOW2),L3(LOW3)は送信出力を示します。(L表示無しで5W出ますが、針が振り切れるため測定対象外です)
  3. パワー計の2Wレンジにて7〜430MHzで針の表示値を記録したのが下の表です。ほぼ一致していますが、144MHzではQRPパワー計の方が少な目に表示されています。

周波数
MHz

表示出力(W)
上段はFCZ#205、下段はQRPパワー計

L1

L2

L3

7

0.6

1.2

>2

0.6

1.2

>2

21

0.5

1

>2

0.5

1.1

>2

50

0.5

0.9

>2

0.5

0.9

>2

144

0.5

0.9

2

0.4

0.75

1.9

430

0.35

0.8

2

0.35

0.8

2

◆製作を終えて(2024/9/20)
測定器を作るときに校正をどうするかというのが1つの課題です。今回はFCZ研の#206を基準器として、できるだけ表示が一致するように調整しましたが、基板とかダイオードの違いか現れたのか、144MHzにおいて誤差が出ました。

 外観

<完了>


参考文献(*印)

  1. 高周波回路の設計・製作 鈴木憲次箸 CQ出版社
  2. 寺子屋シリーズ206 QRPパワーメータ取説 FCZ研究所