モノバンドSSBトランシーバの製作 ホームに戻る
はじめに(2007/02/18)
トランシーバを自作するには部品が手に入らないとどうにもなりませんが、時代と共に製造中止になったり流通在庫がなくなったりと、入手できなくなった部品(バラモジICやトランジスタ、FETなど)が、ここ数年で特に多くなったような気がします。。。 と嘆いていても仕方が無いので、現在手に入る部品てトランシーバを作ってやろうと、過去にこのHPで発表した回路の更新を進めてきました。しかし、どうせやるなら、どの周波数でも同じ回路でトランシーバが出来ないかとの思いが頭をもたげました。ピコシリーズとか熊本方式など、過去には立派な回路が紹介され、それを手本に自作された方も多いと思います。ここで作るのは、シンプルで実用性のあるモノバンドSSBトランシーバとして自分なりに消化したものを紹介して行こうと思います。
基本的な考え(2007/02/18)
プリント基板の考え
回路の構成
トランシーバの構成は実績のある標準的なものを採用しており、全体は送信部、受信部、共通部に分かれています。回路図 系統図
周波数構成は(2007/02/24)
トランシーバの周波数構成は市販されている水晶の利用を考え、以下のようにしました。水晶は池田電子にて@100で、サトー電気は少し高いですが、特注するよりはずいぶん安く買うことが出来ます。7,21,50については下の表のようになりますが、それ以外はVXO部については特注することが必要に思います。
項目 | 7MHz | 21MHz | 50MHz |
モード | LSB | USB | USB |
中間周波数(MHz) | 11 | 12 | 14.318 |
VXO(MHz) | 18.1 | 16.63×2逓倍 | 18×2逓倍 |
送信部(2007/12/2)
受信部(2007/12/2)
共通部(2007/12/2)
部品の選択
部品が手に入らなくては自作ができません。まずはサトー電気や池田電子の通販を基本にして、半導体や水晶で手に入るものは何かから決めます。
終段の石(2007/11/17)
終段は三洋の2SC2078(@168)を採用しましたが、50MHzでは能率が悪くなるため三菱の2SC1970を使いました。以前は@170で買えましたが最近は@525になっており、価格の上昇が気になります。2SC2078の特性は下のようになっており、電源電圧12Vでは出力2Wあたりまでは直線的ですが、それ以降はカーブしており歪(高調波)が発生しやすくなります。
2SC2078の出力/入力特性
放熱器(2007/11/18)
LSIクーラー社の17P23−L25という幅23.5×奥行17×高25mmの物(@52)を使いました。特性図はX軸に加熱電力(W)、Y軸に温度上昇値(℃)で示されています。2SC2078はシリコンの絶縁シートを挟んで、ポリカーボネートのビスで放熱器に取り付けます。
放熱器の様子。最終的にはダイオードも含めシリコングリスを塗ることにします。
周波数変換(2007/11/17)
バラモジや周波数変換に使うICは東芝のTA7358P(@80)です。ポピュラーだったバラモジICのSN16913が市場から姿を消し、どうしようかと思っていたとき、JF1RNR今井さんがCQ誌でこのICを使った製作記事を紹介され、サトーから取り寄せて使うようになりました。FMフロントエンド用の石なので50MHzでは問題なく使えます。価格が手ごろなのがありがたいですね。
その他半導体(2007/11/17)
その他の半導体は、2SC1815(@32)、2SC2053(@147)、2SC2120(@32)、2SA950(@21)、2SK241(@32)、1N60(@42)、1S1588(@42)、LM386(@84)がサトーで購入できます。バリキャップは1S2683(@20)を秋月で購入しましたが、サトーの1SV101(@63)が使えます。
コイル類(2007/11/17)
コイルはFCZ研究所の10Sタイプを使います。7mm角ではピンの間隔が狭くなるため、ここでは大きくはなりますが、あえて10mm角としました。終段のタンクコイルとLPFに使うトロイダルコイルはアミドンのT37型、RFCはFB225のフェライトビーズを使います。
バリコン(2007/11/17)
VXOに使うバリコンが難点で、サトーでもFM用20Pのもの(@504)と延長シャフト(@126)を買うことは出来ますが、高いものについてしまいます。私は通販ではなく、日本橋のデジットでFM+AM用のものを@350ほどで買い、シャフトが短いものは外径6mm長さ12mmのスペーサとM2.6×15mmの皿ビスを使い、ポリバリにねじ込んで使っています。
メータ(2007/11/17)
RF出力計兼Sメータは無くてもかまわないとも言えますが、私はトランシーバの顔になるものと思っており、必ずつけるようにしています。Sメータが手に入らない場合は、VUメータやバッテリチェッカ用のメータの文字盤に、S目盛りを書いた紙を貼り付けて作ってしまうことも出来ます。
クリスタルフィルタ(2007/03/03)
トランシーバの中で一番高価な部品はクリスタルフィルタで、現在手に入る9MHzのものはサトーで@4620します。またこれに合わせるVXO用の水晶は特注せねばならず、@1700ほどかかりますが、これを自作すれば数百円ですむのは魅力ですね。特性を図るには測定装置や周波数カウンタが必要で、それなりに手間もかかるため、はじめて自作される方は、まずはメーカー製のフィルタを使ったほうが良いと思います。今回50MHzで使う10個400円で買った14.318MHzの水晶を6個組み合わせて作りました。キャリヤポイントは14.311MHz、帯域は2.8kHzほどになるでしょう。また使用するコンデンサの値は両端で68P、中央の5個は150Pを使いましたが、水晶により調整が必要です。ミズホ通信の11.2735MHz(@4000)と比較すると、自作の5素子のほうが特性は甘いですが、混まないバンドで使うには支障はないと思います。なお、使用する水晶は特性の揃ったものがよく、簡単な発振器を作って発振周波数を測定し、SSBであればフィルタ帯域の1/10を目指し、300Hz以内に収まるものを選択して使います。
高調波阻止フィルタ(2007/03/10)
終段増幅の後、高調波を低減させる回路としてはBPF(バンドパスフィルタ)かLPF(ローパスフィルタ)があり、トロイダルコアを使うと不要な結合が少ないので便利です。モノバンドの場合は単一周波数に同調するBPFで良いのですが、巻き数が多いと細い線を使うことになります。7MHzの場合37回巻くことが必要で、0.3〜0.4の線で自立させるには強度不足と思えます。LPFの17回巻きならば0.6の線が使え自立が可能なので、ここではLPFを使うことにしました。
50MHzにおけるLPF
T37トロイダルコアの巻き数
周波数 | コア | BPF | LPF |
7MHz | T37-2 | 37 | 17 |
14MHz | T37-6 | 31 | 14 |
21MHz | T37-6 | 25 | 11 |
28MHz | T37-6 | 22 | 10 |
50MHz | T37-10 | 18 | 8 |
励振増幅の石(2007/03/25)
終段をドライブする励振増幅の石を何にするかですが、2SC2078の規格で27MHzで入力/出力=0.2W/4Wという値があり、単純計算で、入力/出力=50mW/1W、100mW/2W、励振増幅として50〜100mW程出る石を選ぶことになり、ここではft1000MHzの2SC1906を採用します。またコレクタ負荷のコイルはセンタータップにして動作の安定化を狙いました。
アンテナ切り替え(2007/04/01)
代表的な手法としては @スイッチを使った直接切り替え Aリレーによる方法 BMI301を使ったダイオードスイッチ の3種類があります。ここではオムロンの「GV−1 12VDC」という1回路2接点のリレーを使いました。価格は@230、消費電流は12Vで13mAです。理由は@に比べ遠隔操作が出来ることと、Bに比べ回路が簡単なこと、また受信時には電流を消費しないことがメリットです。
製作編
試作、そしてプリント基板化(2007/12/2)
7,21,50MHzの各周波数ごとにラグ板で試作機を作り、動作確認してからプリント基板化を進めました。
信号の流れを考える(2007/12/2)
1枚のボードにトランシーバの全回路を収納することにしました。下の写真は信号の流れを、送信部が黄緑色、受信部がピンク色、共通部は黄色で示しています。同じ周波数の信号は、増幅の安定化を図るため入力と出力を近づけないことがパターン設計のポイントです。
基板設計(2007/12/2)
基板設計は機械系のCADを使い、各部品の配置と結線を考えました。プリント基板の作成方法については別のページをご覧ください。要所要所にTP(テストポイント)のピンを付け、回路のブロックごとに動作を確認できるようにしておくと便利です。基板部品面図 基板銅箔面図
部品取り付けと各部の動作確認(2007/12/2)
送信部は前段から、受信部は後段から部品を取り付け、ブロック単位で動作を確認しながら進めます。例えば送信部ならばマイクアンプから始め、マイクと電源をつないでちゃんと増幅しているかどうかを確認します。もし動作がおかしければ、パターンミスか部品の取り付けミスか、部品の動作不良かを疑ってください。
ケース作り(2007/12/2)
ケースはアルミ板で自作し、サイズは幅187×高52×奥行150mmにしましたが、基板はタカチのYM200(200×40×150mm)に収まるサイズにしていますので、それを利用しても良いでしょう。
調整(2008/1/2)
トランシーバを生かすも殺すも調整次第、魂を入れるための調整について説明します。調整には以下の測定器が必要です。
VXO部(2008/1/2)
局部発振器(2008/1/2)
受信部(2008/1/2)
受信部は後ろ側から調整を始めます。
送信部(2008/1/3)
終段TRのコレクタに接続する電源用の線は外しておいてください。
運用実績
アンテナをつないで運用します。さて、どこまで届くでしょうか。
21MHz(2W)
日付 |
時間 |
コール |
RS(His) |
RS(My) |
使用アンテナ |
相手局QTH |
距離(km) |
備考 |
2008/1/2 | 09:31 | JR6IGU | 59 | 59 | 5mH,1/4λGP | 長崎県南島原市 | 530 | |
<完了>