ラジコン探検車                           戻る

◆はじめに(2020/10/2)
コロナ禍の自粛生活で、部品箱の中で陽の目を見なかったものを活かしてやろうとの製作が始まり、第1弾は周波数カウンタでした。続いて見つけたのがラジコン用のICです。2ndが小さかった頃に、ラジコンのおもちゃを作ろうと買い集めながらも作れなかったものですが、今や孫がその歳になってしまいました。今時なら2.4GHzあたりを使うのでしょうが、27MHzの送信機に超再生受信機という昭和の時代そのものです。

 製作したラジコン探検車と送信機

ラジコンへの思い(2020/10/2)
もう60年ほども前になるでしょうか、当時読んでいた「子供の科学」や「模型とラジオ」にラジコンを使った車などの記事がありました。作ってみたいと思ったものの、送受信機(真空管式)にサーボのセットが1万円ほどしており、小学生にはとても買えるものではありませんでした。その後はラジオや無線の方に向かったため、ラジコンへのあこがれを残しながら現在に至っています。今ではラジコンカーやドローンなどが安く手に入りますが、完成品を求めても「買っだ、遊んだ、飽きた」という構図は目に見えています。失敗を繰り返しながらも工夫して作る中に楽しみを見つけるのが自作派の真髄であり、試行錯誤の過程をしばらくは楽しんでやろうと思います。

東芝のIC(2020/10/2)
送信機はTA7333P、受信部はTA76547Pという型番のもので、今でも共立電子で購入ができます。(TA7333Pは@104、TA7657Pは@265)

 ラジコン用のIC (上)受信用 (下)送信用


試作編

◆送信機回路図のダウンロード(2020/10/2)
手持ちで27MHz帯の水晶があるためそれを使うことにします。データシート(*1)をダウンロードすると、送信部は4アクションと7アクションの2種類の回路がありました。違いは7アクションの方が@SWB と AR2の11KΩが追加されただけで、おそらく「後進」機能でしょうが、7歳と3歳の孫に遊ばせるのなら、操作の簡単な4アクション(前進、右折、左折、停止)でも良いのかなと思います。

◆送信機の実験(2020/10/9)

  1. 応用回路1のL2は延長コイルと思われます。試しにマイクロインダクタの5.6μHを入れてみましたが、アンテナ端子での出力がほとんどなくなったため取り外しました。大きなコイルでも巻けばそれなりに出力は出るのでしょうが、ここでは省略します。
  2. C1とR1で矩形波の周波数が決まるようで、下の回路の変調周波数はSWLまたはSWRいずれかONで2200Hz、SWLとSWRの両方ONで4200Hzです。

 応用回路1を書き換える

 ブレッドボードに送信機を組む

◆27MHzの出力波形を観測(2020/10/9)
TA7333Pの27MHz出力波形を観測してみました。SWLとSWRのスイッチをON/OFFし @3ピンON(左) A4ピンON(右) B3,4ピンON(前進)の出力と波形を下に示します。

SWL 3ピン(左)

OFF

ON

OFF

ON

SWR 4ピン(右)

OFF

OFF

ON

ON

出力(mW)

10

7

3

4

変調周波数

O

2kHz

2kHz

4kHz

 
(左)3,4ピンOFFで停止 (右)3ピンONで右モータ回転

 
(左)4ピンONで左モータ回転 (右)3,4ピンONで左右モータ回転

◆受信機回路図のダウンロード(2020/10/16)
東芝のデータシートをダウンロードしました。27MHzの超再生受信部とTA7657Pによる制御部の構成となっています。(*1)

◆受信部の実験(2020/10/16)

  1. 送受信機共にアンテナの長さが30cmほどなので飛びと受けが悪く、感度向上のために高周波増幅を追加しました。
  2. 9ピンONで右モータ、10ピンONで左モータ。11ピンがONになるとダイオードを通し左右のモーターが作動して前進します。
  3. 左右モータに接続している104(0.1μF)はモータから発生するパルス性のノイズを吸収し受信部の誤動作を防ぐためのもので、+−端子とケースの間にも半田付けすると効果的です。
  4. リレーのコイルに入れた100μはチャタリング防止用です。
  5. モニター端子にクリスタルイヤホンを接続し、T1、T2、VR1を調整して最大感度になるようにします。

 板の上に受信部を乗せ、部屋を移動しながら受信状態を確認

◆受信波形(2020/10/16)
モニタ端子にオシロをつないで波形を観測しました。矩形波だった送信波形は鈍ってきていますが、矩形波の幅や周波数によって動作が切り替わる仕組みです。

 
(左)右モータON (右)左モータON

 
(左)左右モータON (右)左右モータOFF

クローラ車を使う(2020/10/23)

  1. 4アクションでモーター2個という事からクローラを使った車にしようと思います。
  2. タミヤの @ダブルギヤボックス Aクローラ スプロケットセット Bユニバーサルプレート が必要になり、近所の家電量販店(ジョーシン)の模型売場へ行きました。プラモデルや鉄道模型は広く場所を取っていますが、2年前にはあった「工作コーナー」が縮小され必要な部品を揃えることが出来ません。結局ネットにて注文しましたが、工作の世界でも自作派が減っている印象がありました。
  3. 以前は金属製だったギヤとギヤボックスは樹脂に代わり、ユニバーサルプレートという5mm間隔にφ3の穴が開いたABS製の板に部品を取り付けました。

 クローラ車はタミヤのセットを利用

◆受信機をクローラ車に取り付ける(2020/10/23)

  1. ユニバーサル基板に長ビス4本を立ててアルミ板(100×160mm)を支え、受信部は10Pの平ラグ板、制御部はFCZ基板に組みました。
  2. 自ら発生するモーターのノイズで誤動作をするため、下の画像のようにノイズキャンセル用のコンデンサを付けることで、誤動作をしなくなりました。

 

 モータにノイズキャンセル用のコンデンサ(青色の積層セラミックコンデンサ0.1μF)を半田付け

◆アンテナ(2020/10/23)
φ0.8のピアノ線を500mmに切り、RCAプラグに半田付けしました。27MHzの1/4波長は2.7mですが、その1/5.4なので効率は悪いです。


製作編

◆送信部(2020/10/30)
40×30mmのベーク基板を使い、穴明け後にマジックインキでパターンを書き、エッチングしました。外付け部品の少ない送信機の完成です。

 

◆ケースに収納(2020/10/30)
タカチのSW−125(12×70×40mm)のケースに送信部を収納します。シールドも考慮しておらず内部はガラガラですが、操作性を考えるとこの程度の大きさは必要に思います。

 

◆受信部(2020/11/6)
60×60mmのベーク基板を使い受信機を作りました。基板図のピンク色の線はジャンパ線を示します。

 

◆アンテナ(2020/11/6)

  1. 27MHzの波長は11mで1/4λは2.7mになりますが、これだけの長さのホイップアンテナを使うわけにはいきません。
  2. 仮にφ0.×500mmのピアノ線をアンテナにすると、ボトムローディング延長コイルのインダクタンスは下記計算により8.7μHになりました。(*2)
  3. 空芯コイルの計算からφ1のウレタン線を内径22mmで24回密巻にすると8.7μH程になるため、水道管VP16を軸にしてコイルを巻きます。
  4. 巻初めと巻き終わりをセロテープで止め、コイルに熱収縮チューブを被せ、ライターで温めて収縮させたのち、水道管から抜きます。
  5. 1.6mm厚のプリント基板を5mm×60mmに切り出し、中央部の銅箔は3〜5mm幅で剥がしてコイルの軸にします。
  6. コイル軸の片端をRCAプラグの中央端子に半田付けし、コイルの片側を半田付けします。
  7. コイルの巻きはじめと巻き終わりの部分はグルーガンで固定し、コイルが崩れないようにしました。
  8. 500mmのアンテナより受信感度は向上しましたが、波長を合わせたというよりはコイルがアンテナになったという感じがします。
  9. 試しに500mmのピアノ線の端に10μHのマイクロインダクタを付けたものは、付けなかったものより受信感度が悪く、単に延長コイルとしてインダクタンスを合わせればよいというものでは無いことが分かります。

 

ベースローディングコイルのインダクタンスの求め方(*2)

  1. 導体(アンテナ)の長さと直径からインピーダンスZを求める。 Z=60loge(2h/d) (単位:Ω) 【 h=導体の長さ、d=導体の直径 loge=自然対数】
  2. 電気角で現した導体の長さGを求める。 G=360×l/λ (単位:度) 【 l=導体の長さ、λ=1波長の長さ 】
  3. 電気角とインピーダンスからリアクタンスXを求める。 X=−j Z/tanG (単位:Ω) 【j=虚数単位】
  4. 短縮アンテナの場合はリアクタンスが容量性になるため、それを打ち消すコイルのインダクタンスLを求める。 L=X/(2πf) (単位:H) 【 f=周波数】

アンテナはφ0.8×500mmのピアノ線を使います。周波数は27MHz(波長11、111mm)で、長さの単位はmm、周波数はMHzです。

  1. Z=60×loge(2×500/0.8)=428Ω
  2. G=360×500/11111=16.2°
  3. X=−j428/tan16.2°=−j 1473Ω
  4. L=1473/(2×3.14×27)=8.7μH

ローディングコイルのインダクタンスとして 8.7μH が必要との計算結果になりました。

クローラ車への取り付け(2020/11/13)

  1. クローラ車の土台になるユニバーサルプレートは60×160mmのサイズで、そこにダブルギヤボックス、モータ、電池ボックス(単3×3)を取り付けます。
  2. 100×160mmのアルミ板を4本の長ビスを使ってユニバーサルプレート上に固定しました。
  3. アルミ板の上には 受信部基板、電池(006P)、スイッチや各種コネクタを取り付けます。

 

カバーを考える(2020/11/13)
試作機ではクローラ車の上部がむき出しになっており、何かにぶつかれば故障の原因になるためカバーが必要です。数十年前の「子供の科学」に載っていたラジコン車のタイトルが「探検車」であったような記憶があり、ネットを検索すると下の画像が手に入りました。クローラの上に操縦席や座席があるものですが、これをアクリル板などで作るのはかなり難しく、何かないかと100円ショップで探してみると、大根おろし器の受け皿が程よい形とサイズで見つかりました。

 宇宙家族ロビンソンに出てくる 宇宙探検車チャリオット

  大根おろし器の受け皿をカバーにしてみる

◆車体を作り直し、操縦する(2020/11/20)

  1. 大根おろし器の受け皿をカバーに使った探検車を設計し、本体部分を作り直してみました。
  2. ヘッドライトとしてφ5電球色のLEDを2個追加しました。部屋を暗くして操縦すると、なんとなく実感が出てきます。
  3. 電波の到達距離は8mほどで、室内ラジコンとしては楽しめる距離と思います。
  4. 家の中でも正常に動作する場所と、誤動作しやすい場所があり、何らかの電波を拾っているのでしょう。
  5. 至近距離でアンテナを振ると誤動作をします。無変調キャリヤであっても電波の強弱で変調があるものと誤認してしまうのでしょう。1mも離れれば正常に動作しますが。
  6. 「みぎ」ボタンは右のクローラが回るもので「右折」ではありません。「ひだり」も同様です。
  7. 障害物を乗り越えたり、30度ほどの坂であればグイグイと登ります。

 設計図

  (左)探検車側面 (右)背面

コネクタを外し、ネジを緩めて車体を3つに分解

<完了>


参考文献(*印)

  1. 東芝半導体データシート
  2. アマチュアのアンテナ設計 岡本次雄著 CQ出版社