AM機のスプリアス測定        ホームに戻る

AM機の波形を見てみる(2025/10/3)
AMのリグというのは作りやすさからも人気があり、A3ロールコールに自作機で出ている局もおられます。自作リグの測定をする前に、メーカー機を使って教科書に図解されていたAMの波形を見てみましょう。なお、以下の測定に関しては現時点で私が理解している範囲で進めており、理解不足の点があれば今後修正していきます。

 JARDの資料より

無線設備規則 第一章 第二節 第七条 別表第三号(令和5年12月22日施行) から抜粋

今回の測定は下表の赤字部が該当

基本周波数帯、モード

空中線電力

帯域外領域

スプリアス領域

BN(必要周波数帯)

±2.5BN

30MHz以下
(41項にアマチュア用の例外規定あり)

1W〜5W

50mW以下かつ40dB

50μW以下

4kHz未満

±10kHz

1W以下

100μW以下

50〜54MHz、AM(A3E)

1W50W

1mW以下かつ60dB

60dB

25kHz未満

±62.5kHz

1W以下

100μW以下

50μW以下

144〜146MHz

1W〜50W

1mW以下かつ60dB

60dB

1W以下

100μW以下

50μW以下

430440MHz
(10
項にアマチュア用の例外規定あり)

1W50W

1mW以下かつ60dB

60dB

1W以下

100μW以下

50μW以下

不要発射測定周波数範囲

送信周波数の範囲

測定周波数範囲

9kHz〜100MHz

9kHz〜1GHz

100MHz300MHz

9kHz〜第10高調波

300MHz600MHz

30MHz3GHz

600MHz5.2GHz

30MHz〜第5高調波


測定系統図(2025/10/3)

  1. AMトランシーバとして八重洲のFT817を使い、周波数は50MHz、モードはAM、出力はL2=0.5W に設定します。
  2. 音源として1000Hzの正弦波と疑似音声が必要ですが、これはITU-T G.277準拠疑似音声発生サイト、またはCQ出版社のダウンロードサイト疑似音声発生器の製作を利用します。
  3. 正弦波と疑似音声の電圧(数mV)を測定できる低周波電圧計が必要です。

◆搬送波電力(2025/10/3)

  1. FT817を50MHz AM L2(0.5W)に設定し、アンテナ端子にパワー計を接続すると0.5Wを示しました。
  2. FT817の周波数を50.500MHzに設定し、30dBのアッテネータを使い、スペアナの周波数を50.400〜50.600MHzとすると、1T=-2.9dBm(0.513W)となり、パワー計と同等の値を示しました。

 50.400〜50.600MHzで測定


帯域外領域

無変調で測定(2025/10/3)

  1. JARDの資料では帯域外領域でのスプリアス測定は「搬送波を無変調で送信、占有周波数帯域幅の外側のスプリアスを測定」となっています。
  2. 測定系統図においてVRを左に回し切った状態を「無変調」とします。

◆帯域外領域(2025/10/3)

  1. FT817→BNC/SMA変換コネクタ→30dBアッテネータ→SMAケーブル→スペアナ の順に接続する。
  2. スペアナは50.500MHzを中心に±65kHz(50.435MHz〜50.565MHz)を表示するよう設定する。
  3. 必要周波数帯BNは25kHz未満、帯域外領域は±62.5kHz、RBWは200Hz。
  4. 帯域外領域では2T=50.45828MHzの-55.4dBm(2.9μW)が最大であり、規格の100μW以下に入りました。

測定環境

スプリアス

周波数

電波形式

搬送波電力

必要周波数帯幅

帯域外領域

RBW

アッテネータ

周波数

強度

規格限度値

判定

50.500MHz

A3E

0.5W (27dBm)

25kHz

±62.5kHz

200Hz

30dB

50.45828MHz

2.9μW

100μW以下

適合

 帯域外領域の測定(50.435MHz〜50.565MHz)


スプリアス領域

スプリアス領域(2025/10/3)
スプリアス領域における測定方法は、「正弦波1kHzで変調度60%(変調時のスペアナで見られる搬送波から-10.5dBc)に設定後、同じレベルの疑似音声に切り替える」とのことです。

◆変調度とは(2025/10/3)

  1. 変調度=信号波の振幅 ÷ 搬送波の振幅 で示されます。
  2. 計算式は省略しますが、変調度が60%であれば搬送波より信号波は10.5dB低い値になります。

スプリアス領域の測定(2025/10/3)

  1. FT817を50MHzAM(出力はL2=0.5W)、周波数は50.500MHzに設定する。
  2. パソコン(1000Hz)→FT817→BNC/SMA変換コネクタ→30dBアッテネータ→スペアナ の順に接続する。
  3. スペアナの周波数範囲を50.500MHzを中心に±10kHz(50.490MHz〜50.510MHz)に設定する。
  4. 1000Hzの信号波が搬送波から10.5dB(変調度60%)低い値になるようVRを調整し、その時の電圧を低周波電圧計で読む。(1.2mVでした)
  5. 音源を疑似音声に切り替え、1000Hzの時と同じ電圧(1.2mV)になるよう音量を調整する。
  6. スペアナの周波数を9kHz〜1GHzに設定する。
  7. スプリアスとしては2Tの100.1MHzが-52.0dBm(6.3μW)で観測できました。

測定環境

スプリアス

周波数帯

電波形式

搬送波電力

測定周波数範囲

アッテネータ

周波数

強度

規格限度値

判定

50.500MHz

A3E

0.5W (27dBm)

9kHz1GHz

30dB

100.1MHz

6.3μW

50μW以下

適合

 
(左)1000Hzの正弦波で変調度を60%(-10.5dBc)に設定 (右)正弦波と同電圧の疑似音声に切り替えた時の波形

 スプリアス領域の測定(9kHz〜1GHz)

◆測定を終えて(2025/10/3)
搬送波が中心にあり、その上下に側波帯があるというAMの波形を観測できました。tinySA Ultraの最小RBW(分解能帯域幅)が200Hzなので、逆V字型の搬送波になっていますが、もっと分解能が高ければ搬送波は1本の線になり、側波帯は左右に分離した波形になるのでしょう。

 AMの波形(*5)

<完了>


参考資料

  1. 総務省無線設備規則
  2. JARDのスプリアスに関する資料
  3. CQ出版社 ダウンロードサイト 疑似音声発生器の製作
  4. ITU-T G.277準拠疑似音声発生サイト
  5. 上級ハムになる本 大塚政量著 CQ出版社