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完成した 50/144MHz 2バンドSSBトランシーバ
こんなリグを作ってみたい(2010/06/15)
◆具体的にどうするか(2010/06/15)
◆トランシーバの仕様(2010/06/15)
◆周波数構成(2010/06/15)
サトー電気や池田電子の水晶一覧を見ながら、こんな周波数構成を考えてみました。
当初、第1中間周波数は30MHzとしていましたが、144.250付近で8chテレビの音声が入るため、周波数関係を調べると114MHz(局発周波数)×2-30.25MHz(第1中間周波数)=197.75MHz(8ch音声信号)であることが判りました。局発の出力段は複同調にしているものの、テレビの信号が強いせいか取りきることが出来ないため、中間周波数を28MHzに変更しました。
◆リグのデザイン(2010/06/15)
1970年頃にトリオでTR5200という50MHzのリグがあり、当時はシルバー系のリグが多かった中で、ブラックフェイスの精悍な感じで記憶に残るリグでした。そのデザインを参考にしますが、実際に作るには機構面やダイヤル照明など課題は多いです。サイズとしては幅200×高さ100×奥行200mmを考えています。
(左)デザインを参考にしたトリオTR5200 (右)本機のデザイン
◆ユニットに分ける(2010/06/26)
回路全体を @VXO部 ARIT&VXO逓倍部 Bスタンバイ部 CSSBジェネレータ部 D28MHzトランスバータ部 E50MHzトランスバータ部 F144MHzトランスバータ部 G144MHzリニヤアンプ部 の8つのユニットに分けました。
ダイヤル部の周辺
ダイヤル部はリグのデザインをする上で一番重要な箇所でしょう。このリグではダイヤル板をケースの中に入れるため、その部分の構造と内部照明、また外部に出るダイヤルエスカッションはリグのデザインを引き締める大事な部品であり、頭を悩ます反面、楽しみともいえるでしょう。
2mmのアルミ板で作った正面パネルと、3mmのベーク板で作ったダイヤルエスカッション
◆減速機構(2010/06/26)
6:1のボールドライブ減速機は国内では入手困難になりましたが、ジャンク屋で新古品を見つけたとか、海外(イギリス?)から入手している人もいると聞きます。あるいは市販のバーニヤダイヤルを加工するという手もあるでしょう。バリコンとの接続はタイトカップリングを使い、芯ずれを吸収することがスムースな同調のポイントです。またダイヤルのツマミは握り部の直径が40mmの型番LEXCM-5Sを使いました。
(左)40mmのツマミ (中)ボール減速機の取付板 (右)6:1ボール減速機
ツマミ、目盛り板、減速機、タイトカップリング、バリコンは一直線に連結する。
◆周波数目盛りと指針(2010/09/11)
1mmの白色塩ビ板を直径65mmに切り、2mmのビスで減速機に取り付けます。また位置を示す指針は、12×6mmの銅版(0.8mm厚)の中央に1mmの錫メッキ線を半田付けし赤色に着色します。
周波数目盛りの作成方法
(左)目盛り板 (中)目盛り板を取付 (右)赤く塗った指針
◆白色LEDチップによる照明(2010/07/03)
白色LEDチップ(3.5×2.7mm)4個を100×8mmの基板上に並列につなぎ、ダイヤル部とSメータ部に各2個使って照明としました。消費電流は合計で10mAです。LEDチップは砲弾型のLEDに比べ指向性が少ないため、広範囲を照らすには向いていると思います。
(左)LEDチップ (中)LED照明 (右)点灯したところ
(左)反射板(赤枠内) (右)LED照明を暗い部屋で見てみる
◆Sメータ(2010/07/04)
デジットで買ったVUメータ(450円)にCADで目盛りを作り、両面テープで貼り付けました。用紙はフォトペーパーを使うときれいにプリントできます。メータの透明ケースには内部にギザギザがついているため、上部からの照明に対し光が拡散し、メータ面を照らしてくれます。
(左)VUメータ (右)目盛りを作って貼り付け
基板の配置(2010/09/11)
◆回路全体を8枚の基板に分け、シャーシの上下(表裏)に取り付けます。基板はM3ナット2個でシャーシから4.8mm浮かして取り付けます。
@VXO部基板
基板サイズ:60×40mm (紙フェノール基板)
◆基板の構成(2010/2008/28)
トランシーバの心臓部とも言える部分で、いかにQRHを少なくするかがポイントになります。
VXO部
◆バリコン、コイル、水晶、トランジスタ(2010/06/26)
(左)エアーバリコン (中)10Kコイル (右)水晶
◆温度補償コンデンサ(2010/06/26)
コイルやコンデンサには温度係数があり、発振回路に使うコイルとエアーバリコンは”正の温度係数”、すなわち温度が上がればインダクタンス、あるいはキャパシタンスが増える。ということは周波数は下がることになります。それを打ち消すためには”負の温度係数”のコンデンサと組み合わせ、理想としては”ゼロ”にしたいのです。ところがバリコンを回すことで最大容量もあれば最小容量もあり、すべての角度において発振回路の温度特性をゼロにすることは出来ないため、便宜的にはバリコンの中央位置あたりでゼロに近くなればよいでしょう。
◆ユニットとしてまとめる(2010/07/10)
VXO回路の発振部とバッファ部のみ基板に組み、ケースに入れました。増幅部、RIT部、AVR(電圧安定化)部など発熱するものは別基板にします。基板を0.8mmのアルミ板で作ったケースにいれ、ボール減速機にタイトカップリングで締結し、大型ツマミでチューニングする構造とします。発振段の2SC1906は発熱を少なくするためコレクタ電流は0.45mAとしています。ダイヤルの下端に近い周波数でQRHを測定すると、電源投入後1〜2分は急激に上昇しますがその後は安定してきます。
QRH特性
◆基板単独での動作確認(2010/09/25)
ARIT制御部&VXO逓倍部
基板サイズ:60×40mm (紙フェノール基板)
◆RIT(2010/10/02)
基板サイズはVXO部と同じで、シャーシの上下に取り付けます。
◆半固定抵抗の調整方法(2010/10/02)
Bスタンバイ部基板(2011/02/11)
基板サイズ:65×45mm (紙フェノール基板)
2SA1358(120V/1A)を2個使った無接点スイッチ回路で、スタンバイスイッチによりON/OFFし送受電圧を切り替えます。この回路は無負荷時における消費電流が、送信時5mA/受信時2mAと少ないのが特徴です。基板サイズにゆとりがあるので放熱器として25×36×1mmのアルミ板をコの字型に曲げて使っていますが、300mAを連続で通電してもトランジスタの表面温度の上昇は5℃程度、200mAでは2℃程度です。
◆基板単独での動作確認(2010/09/25)
CSSBジェネレータ部基板(2010/08/28)
基板サイズ:100×65mm 共通部(黄色)、送信部(青)、受信部(ピンク)、AGC(緑)、アース(灰色)、TP(オレンジ)
◆クリスタルフィルタ(2010/8/27)
サトー電気の通販で購入した12.96MHzHC49USS型水晶(6個)によるラダー型クリスタルフィルタです。送受共用としているため、ダイオードスイッチにより送信回路からの信号と、受信回路へ行く信号を切り替えます。
◆受信部(2010/06/26)
デュアルゲートFETの3SK51を2個使った中間周波増幅部、検波部はショットキーバリヤダイオード1SS108を4本使ったプロダクト検波で、その後2SC1815による低周波増幅部と、AGC増幅部を置いています。
◆AF増幅の結合コンデンサの値について(2011/02/05)
検波後のAF増幅において、結合コンデンサ1μを3個経由してAGC平滑用の220μを充電しSメータを振らせます。手持ちが切れたため1μを10μにしたところ、送信→受信切替時Sメータが振れ始めるのに5秒かかってしまいました。これでは遅すぎると1μを購入して交換すると、立ち上がり時間は0.5秒に短縮されました。トランシーバーは送/受を頻繁に繰り返すため、結合コンデンサは音質を維持できる範囲で出来るだけ小さい値のものを使うことが良いと思います。また1μFの価格はケミコンで20円、積層セラでは60円ほどしますが、テクノパーツ宝塚店の店頭では積層セラを5円で売っており、これは安いと思わずまとめ買いしてしまいました。hi
1μF積層セラミックコンデンサ
◆送信部(2010/06/26)
マイクアンプ後、TA7358Pによる平衡変調によってDSB波を作り、クリスタルフィルタを通してSSB波にします。
◆基板単独での動作確認(2010/09/25)
D28MHzトランスバータ部基板(2010/8/28)
基板サイズ:100×65mm(紙フェノール基板)
◆部品
@コア部分を赤く塗った7K型のコイルは、KANHAMでジャンク購入したものを巻き直したものです。
Aコア部分を青く塗ったものも、誰かから譲り受け巻き直しました。
◆28MHz混合部(受信部)
28MHzの受信信号とVXOからの41MHzを2SK241に加え、12.96MHzの信号を作ります。
◆28MHz混合部(送信部)
12.96MHzのSSB信号とVXOからのキャリヤをTA7358Pで混合して28MHzの信号を作り、2SK241で軽く増幅します。出力の1dBアッテネータは動作を安定させるために入れました。
◆ノイズブランカ部(2011/01/29)
ミズホ通信のピコに使われている回路で、混合部のドレイン出力を小容量コンデンサで結合し、3SK51で増幅後、倍電圧検波した電圧を2SC1815で増幅し、パルスノイズが入った時だけスイッチングダイオードに逆電圧がかかるため、その瞬間だけ受信信号を後段に伝えないようにします。ノイズブランカの動作テストは、アンテナ端子に模型用モータを接続してノイズを加え、ノイズブランカのスイッチをONにしてノイズが低減できるかを確認します。
アンテナ端子に模型用モーターの端子を接続しノイズを加える
◆低周波増幅部
おなじみのLM386によりスピーカを鳴らす回路です。
◆基板単独での動作確認(2010/09/25)
LM386の出力端子に8Ωのスピーカを接続する。12Vの電源を供給し、入力端子に低周波発振器の信号(サイン波)を加えたとき、きれいな音が聞こえれば動作はOKです。この基板単独で動作確認できるのは前述の範囲であり、あとはSSBジェネレータ基板およびVXO基板と結線し、28MHzのトランシーバとして動作確認します。
E50MHzトランスバータ部基板(2010/9/11)
基板サイズ:100×80mm(紙フェノール基板)
◆局発部
22MHzを発振させ、送信部と受信部に加えます。周波数の微調整は水晶と直列接続した50Pのトリマで行います。
◆送信部
29MHzの入力信号と22MHzの局発信号をTA7358Pで混合し50MHzを作ります。その後2段のBPFを通し、2SK241-2SC2053-2SC1951と増幅し、ツインTフィルタを通してアンテナに送ります。終段の石は基板上に立てて取り付け、アルミ板を経由してシャーシに放熱します。
◆受信部
3SK51で高周波増幅し、2SK241で22MHzの局発と混合した28MHzの信号をトランスバータ部へ送ります。
◆終段の放熱(2010/09/23)
終段の2SC1971はエミッタがフィンに接続しているため、絶縁シートを使わずフィンを直接放熱器に取り付けることができます。L型に曲げたアルミ板をシャシ−に取り付け、2SC1971との間に2mm厚のアルミ板2枚をはさんで、全体を通しのネジで固定し、TRの熱をシャーシへも放熱できるようにしました。
終段の放熱器
◆出力が少ない → ダミーアンテナで調べる → 56MHzに同調していた (2010/09/11)
基板に部品を取り付け通電して調整を進めましたが、送信出力は2Wを予定しているのに0.1Wしか出ません。部品の取り付けミスは無いので、以前作った50MHz用ダミーアンテナでSWRを測定すると2ほどになりました。これは同調回路が正規の周波数に同調していないなと当たりをつけ、2SC2053のベース部分の周波数をカウンタで調べてみると、入力信号28MHz×2の56MHzに同調していることがわかりました。7Kボビンンのコアを少し入れ、50MHzにあわせることで出力は一気に上がり2Wになりました。
F144MHzトランスバータ部基板(2010/09/11)
基板サイズ:100×80mm (ガラスエポキシ基板)
紙フェノール(ベーク)基板は100MHzまでというデータがあり(高周波回路設計ノウハウ P98
CQ出版)、144MHzは高周波特性を考慮してガラスエポキシ基板を使い、銅箔面にもフラックスを塗らないようにします。
◆局発部
38.666MHzを3倍オーバートーン発振し、次段で3逓倍して116MHzを作ります。
◆送信部
28MHzの入力信号と116MHzの局発信号をTA7358Pで混合し144MHzを作ります。その後3段および2段のBPFを通し、2SK439-2SC1906-2SC2053と増幅して300mWの出力を作り、リニヤアンプ部へ送ります。BPFの段数が50MHzに比べて多いのは、144の方が近接スプリアス発生の可能性が高いため、より選択度を高めるためです。
◆受信部
3SK51で高周波増幅し、2SK439で116MHzの局発と混合した28MHzの信号を28Mトランスバータ部へ送ります。
◆調整のポイント
G144MHzリニヤアンプ部基板(2011/02/11)
基板サイズ:65×45mm(ガラスエポキシ基板)
144MHzは様々な結合があり動作が不安定になりやすいので、リニヤアンプ部は別基板とし、トランスバータ部はシャーシの下(裏)、リニヤアンプ部はシャーシの上(表)に取り付けるようにしました。放熱は50M部と同じ方式で行います。
全体をまとめる(2010/09/23)
基板製作を進めながらシャーシに取り付けて配線し動作確認を進めます。ある程度動作確認ができたら、次の基板、次の基板と組み付けを進めます。複数の基板をつなぐと全体でゲインがありすぎたり、なさ過ぎたりする場合もあり、そこで全体のバランスをとることが必要になります。
◆基板のシャーシへの取り付け(2010/09/23)
M3×30mmのビスの頭の部分を切り取って切り口をヤスリでならして寸切りネジを作り、基板はナット2個分(4.8mm)浮かしてシャーシの表裏に取り付けます。表裏に取り付ける基板は同じサイズにしています。
M3ナット2個で基板を浮かす
◆配線材料(2010/09/23)
配線に使った線は0.08SQの単線で、送信部(青)、受信部(赤)、共通部(黄色)、AGC(緑)、アース(黒)のように色分けしました。なお電流が多く流れる部分は0.3SQの寄り線、高周波の流れる部分は0.8QEV同軸、低周波部は外径1.5mmのシールド線です。リグ全体の消費電流は最大時で0.6Aほどであり、0.3SQ電線の許容電流は4.6A、0.08SQは1.2Aですから数値的に問題はないと思います。
◆スピーカー(2010/09/25)
直径75mmのスピーカーをケースの上蓋に1mmのアルミ板で作った金具で固定しました。また蓋には2mmのキリ穴を100個程あけて音の通り穴としています。
◆ハンドマイク(2011/02/11)
テイシンのTW-51というケースにコンデンサマイクとシーソースイッチを取り付け、4Pのマイク用メタルコネクタとをカールコードでつなげています。ケースの中央に3mmの穴を開けて音を通す穴とし、コンデンサマイクはボンドでケースに貼り付けました。スタンバイスイッチはミヤマのMS-284A-Dというシーソースイッチを使い、軽やかに送受の切り替えをしています。
運用実績
使用アンテナ
周波数(MHz) |
日付 |
相手局 |
MY |
HIS |
当局運用地(自宅) |
相手局運用地 |
距離(km) |
144 |
2010/9/25 |
JF5KJJ/5 |
59 |
59 |
兵庫県伊丹市 |
香川県小豆郡 |
107 |
144 |
2012/6/3 |
JI2CLN/2 |
59 |
59 |
兵庫県伊丹市 |
三重県菰野町 |
97 |
<完了>