デュープレクサの製作       ホームに戻る

はじめに(2026/6/26)
144/430MHz共用アンテナを使うとき、リグ側は144SSB機430FM機への同軸をつなぎ直して使っています。アンテナを切り替える装置としては同軸スイッチデュープレクサがあり、市販のものは値段が高い分 数百Wでも使えますが、QRPerはそこまで必要ないため数W程度で使える物を作ってみようと思います。

 
(左)デュープレクサの概要 (右)実際に使用している144/430MHz共用アンテナ

◆ダイプレクサとデュープレクサ(2026/6/26)
信号を2つに分ける装置の呼び名としてダイプレクサとデュープレクサがあります。村田製作所のHPには下記の説明があり、これを基にすれば本ページのタイトルは「ダイプレクサの製作」になりますが、ここではアマチュア的に馴染みのあるデュープレクサという表現を使いました。

  1. ダイプレクサ(diplexer):ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、またはバンドパスフィルタを用いて信号を混合したり分離するため、周波数が離れている2つの比較的広い周波数バンドの分離・混合に使用されます。
  2. デュープレクサ(duplexer):FDD用途の送信と受信を分ける場合に使用されます。つまりQ値の高いキャビティ共振器を用いて、送信と受信が非常に近い周波数を分波・混合するデバイスを指します。
  3. FDD(Frequency Division Duplex):送信と受信にそれぞれ別の周波数を割り当てる通信方式

実験編

λ/4型フィルターによるデュープレクサ(2026/6/26)
トロイダルコア活用百科より計算式を引用し、Z=50Ω、f1=146MHz、f2=430MHz で2段にして値を求めました。

まずは実験(2026/6/26)

  1. NanoVNAのPORT2からの信号をデュープレクサに加え、その信号をPORT1で受けます。測定周波数は10MHz〜500MHzとし、事前にキャリブレーションをとっておきます。
  2. 144MHz側はトロイダルコアを使っているためコイル同士の結合は殆どありませんが、430MHz側は空芯コイルを直角に配置し結合を避けました。
  3. 144MHzに関してはほぼ計算通りのカットオフ周波数になりましたが、430MHzについては大きくずれて150MHz程であったため、空芯コイルの巻き数を減らし、固定コンデンサをトリマに代えて調整できるようにし、またセラミックドライバの先でコイルに割りを入れてインダクタンス調整した結果、カットオフ周波数は300MHz程に上がりました。
  4. 144MHz及び430MHz近辺で挿入損失が少なくなるよう画面を見ながら調整しましたが、144MHzで0.34dB、430MHzで0.53dBとなりました。

  試作版デュープレクサ

 NanoVNAでフィルタの特性を測定

 
(左)144MHzLPF特性 (右)430MHzHPF特性


製作編

◆正式に作る(2026/7/3)

  1. 1mm厚のアルミ板で幅55×長さ40×高さ30mmのケースを作り、基板を収納しました。
  2. 144MHz側のコンデンサ22Pは電流容量を増やすため10Pと12Pに分けました。
  3. 通過電力を増やすため430MHz側のトリマ3個に1Pをパラにつなぎ調整したものの、リード線の影響なのかSWRが下がらなかったため元に戻しました。
  4. アイソレーション向上のため中央に0.3mm真鍮板で作ったシールド板を入れました。
  5. 挿入損失は144MHzで0.29dB、430MHzで0.45dBとなり、メーカー製の144MHz(0.15dB以下)、430MHz(0.25dB以下)には届きませんでした。部品単体の損失とか、回路のインピーダンスの乱れとかがあるのでしょう。

 

 コイルに割りを入れてインダクタンスを調整

 
(左)144MHzLPF特性 (右)430MHzHPF特性

◆SWR測定(2026/7/3)

  1. 屋外に出しているアンテナのSWRを室内にて測定しました。
  2. 3D2V端のコネクタをNanoVNAのPORT1に取り付けて測定したSWRを以下に示します。
  3. デュープレクサから144と430のリグへ行く3D2Vは、15cm〜70cmまで10本ほどの中から一番SWRが低くなる長さのものを選んでいます。
  4. 144MHzは1.2以下、430MHzは1.5以下となり、実用上問題ないレベルです。

 
リグに取り付ける同軸端BNCプラグの位置で測ったSWR値 (左)144〜146MHz (右)430〜440MHz

◆アイソレーション(2026/7/3)

  1. 下図のように接続をしてアイソレーションを調べてみると、145MHzで-56dB、435MHzで-43dBとなりました。
  2. アイソレーションの評価として、@ダイヤモンドのMX72Hを100Wで使用、A本デュープレクサを2Wで使う時で比較すると、@100Wの-60dBは0.1mW 、A2Wの-43dBは0.1mW であり、2W以下で使う場合の漏れは、手前みそではありますが同レベルと考えます。

 

◆セラミックトリマの発熱(2026/7/3)

  1. このデュープレクサがどの程度の通過電力に耐えるかですが、下図のように接続しセラミックトリマの発熱を赤外線温度計で測定しました。
  2. 433MHz FM 出力3Wにて連続送信3分間でTC1が最も発熱して4℃上昇し、TC2とTC3はそれ以下でした。
  3. セラミックトリマスワロー誘電のφ5、2本足、耐圧DC200V、最高使用温度85℃というものを使っています。(鈴商のHPから引用)
  4. 3分も連続で送信することはありませんが、5W以内で使っていれば問題は無いでしょう。

 
(左)測定回路図 (右)赤外線温度計で測定

◆使用感と今後の課題(2026/7/3)

  1. 144⇔430でQSYする際に同軸をつなぎ直す必要が無くなり楽になった。
  2. 144と430が同時受信でき、交信のチャンスが増えた。
  3. デュープレクサ有りと無しで同一局を受信したが、ほとんどSに差は無かった。
  4. 144SSB機(2W)と430FM機(1W)両方の電源を入れて受信状態にし、その後片側を送信状態にしても特に信号が回り込むことはなかった。
  5. 144LPFについてはもう1段増やすか、減衰極付きにすればアイソレーションは20dBほど向上するでしょうが、今のところその必要性は感じていません。

 実際の接続図

 シャックの様子

◆製作を終えて(2026/7/3)
今年の4月中旬にNanoVNA-H4を購入してから俄然アンテナ作りが面白くなりました。SWR計の場合は送信周波数を変えながらSWRを測定してメモに記録し、その数値をエクセルに入力してグラフ化すると言うステップを踏みますが、NanoVNAは瞬時にSWRがグラフ化され、アンテナの位置を変えると周囲の影響を受けてグラフが動画のように変化します。今回のデュープレクサでは、HPFのトリマを回すとカットオフ周波数が動的に変化し、また挿入損失がグラフと数値で示されるため、すぐに判断できるようになりました。新しい道具を手にすると使ってみたくてたまらなくなるという、まだ子供みたいな気持ちが残っていますね。hi

<完了>


参考文献

  1. トロイダルコア活用百科 山村英穂著 CQ出版社
  2. 第一電波工業(ダイヤモンドアンテナ)のホームページ
  3. 潟_イワインダストリのホームページ
  4. 村田製作所のホームページ
  5. コメットのホームページ
  6. 鈴商のホームページ
  7. スワロー誘電株式会社