144MHzSSBハンディトランシーバー(144H5)
◆はじめに(2019/9/6)
144MHzSSB0.3Wハンディトランシーバ144H4機を作り移動運用を楽しんできました。小型軽量(430g)なことは移動運用にとってありがたい要素ですが非力さを感じることもあり、もう少しパワーのあるものが欲しいと思っていました。数十年前にトリオのTR1000や井上のFDAM2を見てきた世代としては「ハンディトランシーバーの出力は1W」という刷り込みが残っています。これまでの経験では周波数変換後の3段増幅で50MHzまでは出力1Wが可能なものの、144MHzではUHFの石でも使わない限り1Wは難しいため、もう1段追加することにしています。ところが先日50MHzのリニアアンプ実験をしていたとき、部品変更したところ50%ほど出力が増えた事があり、144ではどうなるだろうと試行することにしました。
◆バイアス回路の部品変更(2019/9/6)
回路1はこれまで7〜144MHzで継続的に使って来た一般的なバイアス方式で、どちらかというとQRPな回路に見かけます。回路2は抵抗(47Ω)をRFC(1.2μH)に変更したもので、ハイパワーな回路で見かけます。大した差は無いだろうと思っていたのですが、144MHzで確認してみると電源電圧9.6Vにおいて、出力は回路1で0.6W、回路2で0.9Wという結果が出ました。1.2μHの144MHzにおけるリアクタンスは ωL=2πfL=2×3.14×144×1.2=1085Ωであり、回路1の47Ωが減衰器になっているのかと思えてしまいます。ちなみに1S2076Aの順方向電流における抵抗値は50Ωほどです。
◆試作機の製作(2019/9/13)
144のSSBトランシーバーは数多く作ってきており、もう作ることは無いだろうと思っていたものの、ひょんなことがきっかけで製作意欲が湧くものです。
◆基板の設計(2019/9/20)
基板設計を何度かやり直しているため、ここでの画像表示は省略します。
◆基板製作(2019/9/27)
この基板は作り直しているため参考にはしないでください。
◆試験台での調整(2019/9/27)
試験台に乗せて調整中
◆アンテナ切り替え回路の変更(2019/10/11)
受動素子の部品を1つ通せば信号が減衰するため、送信出力のロスを減らすべくアンテナ切り替え回路の変更をしてみました。送信部のMI301をやめてBPFに直接つなぎ、送信時は受信用のMI301には逆バイアスをかけておきます。TX+側についている1S2076Aは受信時の電圧が送信側へ流れないようにするためのもので、受信時にスピーカーから音が出ないため調べてみると、LM386の2ピンに電圧がかかって動作が止まっていました。
◆ケース作り(2019/10/18)
穴加工を終えたケース部材
◆基板の再製作(2019/10/25)
試験台に載せて調整していますが、時々原因不明で周波数が不安定になる現象が発生しており、部品の問題かチップ部品等の半田付け不良なのか良く分かりません。部品交換したり基板をカットしてつなぎ直してみたりと試行錯誤を重ねているうちに基板が汚くなりました。いっそ1から作りなおす方が手っ取り早いので、グランド面を広くとるようにパターン書きをして再製作しました。
上側の送信部基板(幅の狭い方)は再度作り直しており、最終形ではありません。(上のCAD図が最終形です)
◆基板への部品取り付けとケースへの収納(2019/11/1)
再製作した基板に部品を取り付け、ケースへ収納しました。今度は不安定動作も無く順調に動いていますが、パワーが最大で0.9Wと目標の1Wにはわずかに達成しませんでした。
サイズ:幅132×高さ130×奥行42mm(突起部を含まず)、質量:673g(電池を含む)
◆ノコギリ波発生回路(2021/6/28)
NE555によるノコギリ波発生回路を内蔵し、その電圧をバリキャップに印加して、バンド内を自動ワッチ出来るようにしています。ノコギリ波の波形は下の画像の通りで、きれいな直角三角形ではありません。
ノコギリ波の波形
◆特性測定(2019/11/8)
FFTを使ってスプリアスを調べてみました。下の画像のように144MHzの信号が観測できますが、過剰入力になると周りに他の成分が現れ始めるため、実運用の時はマイクにかじりつかないよう注意することが必要です。hi
FFTの画像(X軸は1目盛り50MHz)
◆さて運用を(2019/11/15)
秋の晴れた日に144H5機と1/2λ電圧給電ホイップで移動運用してみました。宝塚市には安産祈願で有名な中山寺があり、その上にある広場は海抜100mほどで、ときどき移動運用に利用しています。ロケーションは東から南にかけては開けていますが、北は中山(450m)、西は六甲山(932m)があり電波は減衰してしまいます。京都コンテストが始まっており順調にQSOできましたが、木陰のベンチに座って運用していると少し風があり1時間ほどで体が冷えてきたため6局で終了しました。
宝塚市の高台(海抜100m)で運用
日付 |
相手局 |
HIS |
MY |
当局運用地 |
相手局運用地 |
距離(km) |
2019/11/2 |
JH3PPY |
59 |
59 |
宝塚市(移動) |
堺市南区 |
42 |
2019/11/2 |
JG3VHY |
59 |
55 |
宝塚市(移動) |
京都市山科区 |
45 |
2019/11/2 |
8J3AC |
58 |
51 |
宝塚市(移動) |
明石市 |
39 |
2019/11/2 |
JO4FWF/3 |
59 |
59 |
宝塚市(移動) |
京都府綴喜郡宇治田原町 |
48 |
2019/11/2 |
JA3MVP |
59 |
55 |
宝塚市(移動) |
奈良県橿原市 |
54 |
2019/11/2 |
JP3SIB/3 |
59 |
59 |
宝塚市(移動) |
京都府相楽郡笠置町 |
54 |
2021/6/20 |
JF5KJJ/5 |
59 |
59 |
宝塚市(移動) |
香川県仲多度郡満濃町 |
155 |
<完了>