オートスキャン機能付き144MHzSSBトランシーバの製作(144S4)

 

ハムフェア2010自作品コンテスト 自由部門優秀賞第二席受賞作品

◆はじめに(11/05/27)
バリコンの代わりにバリキャップが主同調に使えないかと実験をはじめ、さらに自動ワッチできれば面白いだろうと三角波発振回路を内蔵させ、オートスキャン機能つきトランシーバとしてまとめました。2010年は還暦を迎えた年でもあり、記念にとハムフェア自作品コンテストに応募し、(4月)応募→(5月)1次審査合格→(6月)実機をJARLへ送る→2次審査→(7月)JARLから優秀賞第二席に選ばれたと連絡がありました。8/21,22と東京ビッグサイトで開催されたハムフェア2010自作品コンテストの表彰式ではJA1AN原会長より表彰状をいただき、審査結果の講評では「加工技術がセミプロ級で素晴らしい。メータでの周波数表示は面白い。」と評価をいただきました。そろそろ半世紀に近づくハムライフの中で1つの節目にあたるトランシーバーでしたが、このページではリグ作りの考え方と、製作過程などについて紹介いたします。

おことわり(11/05/27) 当初は中間周波数14.318MHz、VXOに43.333MHzの水晶を使っていましたが、その基本波は43.333÷3=14.444MHzであり、10倍すると144.44MHzになります。アンテナ端子に微弱ですがその成分が出ていたため、周波数構成を VXO=44MHz、中間周波数12.288MHz に変更し対策としました。


◆本機の特徴(09/11/22)

  1. 144MHzのコンパクトなSSBトランシーバで、送信出力は小型ながらも2W。
  2. プリント基板は@SSBジェネレータ部 Aトランスバータ部(0.3W) Bリニヤアンプ部(2W) の3枚に分け、コンパクト化と確実な動作を実現。
  3. 同調はバリキャップと10回転ヘリポットを採用し、平均1回転で19kHzとチューニングが容易。
  4. VXO発振部はカバーで被い、温度変化を緩やかに受け、QRHの少ない構造とした。
  5. 三角波発生回路により5秒でバンドをスキャンし、誰か出てないかを探すことができる。 
  6. 周波数は電圧計(ラジケータ)に目盛りを打って表示。
  7. VXOやフィルタに使う水晶は市販の安いものを使用。
  8. ケースはアルミ板で自作。

◆本機の仕様(11/05/27)

  1. 周波数:144.120〜144.270MHz
  2. 送信出力 : 2W
  3. 終段 : 2SC1971
  4. 受信部 : 高1中2シングルスーパ
  5. 中間周波数 : 12.288MHz
  6. サイズ : 幅11×高42×奥行136mm (突起部を含まず)
  7. 電源電圧 : 12V(11〜13V)
  8. 消費電流 : 最大550mA(送信最大入力時)、最小45mA(受信無信号時)
  9. 質量 : 460g
  10. 部品代 : 約11000円

各部の説明

周波数構成(11/05/27)

  1. 市販の安い水晶を使って144MHzのSSBトランシーバを作ろうと、秋月電子、サトー電気、池田電子で扱っている水晶の周波数を頭の中で組み合わせながら構成を考えました。
  2. VXOに44MHz3倍オーバートーン用の水晶を基本周波数で発振させ、その後9逓倍して132MHzを作ります。
  3. 中間周波数は12.288MHzとすることで、144.120〜144.270MHzをカバーします。
  4. 局部発振用の水晶は中間周波数より1.5kHz低いものを使いますが、ここでは水晶フィルタと同じ周波数のものを使い、水晶と直列に8.2μHのマイクロインダクタと30Pのトリマを接続することでVXOを構成し、周波数を若干下げるようにしています。
  5. この組み合わせにより、特注すれば1万円以上かかる水晶を数百円で購入することが出来ます。

電源電圧(10/02/06)
電源は単3のニッケル水素10本を使うため12Vが基準ですが、充電後の電圧上昇や使用中の電圧降下分をみて範囲を11〜13Vとしました。また3端子レギュレータは電圧降下分を3Vと見て、8Vの78L08を使いVXO部へ供給します。

 使用するバッテリーボックス

◆基板の構成(09/12/31)
トランシーバは3枚のプリント基板で構成し @SSBジェネレータ部、Aトランスバータ部 Bリニヤアンプ部 に分けました。@とAは100×80mmの基板を使い、固定用のシャーシをはさんで、両面から取り付けます。Bはケースの背面パネルを「コ」の字型に凹まして取り付けます。

@SSBジェネレータ部(11/05/27)

  1. 送信部では、マイクからの音声信号と局発からの12.28MHz台の信号を合成してDSB波を作り、6素子のクリスタルフィルタにより上側(USB)のみ通過させてSSB波を作ります。
  2. 受信部では12.288MHzの中間周波信号を2段増幅し、検波部で局発信号と合成して音声信号を取り出し、LM386により低周波増幅してスピーカを鳴らします。またAGC電圧を作って高周波増幅部や中間周波増幅部に戻し、ゲインをコントロールするとともにSメータを振らせます。
  3. 製作当初は2段の中間周波増幅に2SK241を使っていましたが、強力な局を受信した際の歪み音が気になるため、デュアルゲートの3SK51に変更しAGC特性を改善し歪みを軽減しました。(10/02/20)
  4. 三角波発振部では、1サイクル約10秒の三角波を作り、VXOのバリキャップに電圧を掛けることで、オートスキャン機能として使います。
  5. 送受の電圧切り替えは、コンプリメンタリトランジスタの2SC2120と2SA950による無接点スイッチとし、スタンバイONの時は送信部電圧、OFFのときは受信部電圧を供給します。

 SSBジェネレータ部

Aトランスバータ部(11/05/27)

  1. VXO部では14MHz台で発振させた信号を3逓倍を2回して132MHzの信号を作ります。発振段の2SC1906やバリキャップ、VXOコイル周辺の部品を0.6mmのアルミ板で作った25×28×14mmのアルミケースで覆い、周囲温度の影響を緩やかに受けるようにしました。
  2. 送信部ではジェネレータ部で作ったSSB信号と、VXOからの132MHzの信号をTA7358PGのバラモジで合成して144MHzの信号を作り、その後2SK439、2SC1906,2SC2053で3段のストレート増幅を行い、300mWの信号を作ってリニヤアンプ部へ送ります。なお送信信号の144MHzに対しVXO信号の132MHzは近くにあるため、バラモジ後3段のフィルタと、2SK439で増幅後に2段のフィルタを通して144MHz以外をカットするようにしています。
  3. 144MHzという周波数を4段増幅すると回り込みなどで動作が不安定になります。1号機での失敗を活かし @ベースには10Ωを直列に入れる Aコレクタ側のコイルはセンタタップから給電する B基板のグランド部分を増やす等の安定化手法を採用しています。
  4. 2SC2053は連続でフルパワーを出すと少し熱くなるので、アルミ板を鉢巻状に巻いて放熱器としました。
  5. 受信部では2SK439で高周波増幅した後にVXO信号と混合(周波数変換)を行い、14MHz台の信号を作りジェネレータ部へ送ります。なお小信号部分の送受切り替えは、1S1588によるダイオードスイッチで行っています

 
           トランスバータ部                2SC2053の放熱

Bリニヤアンプ部(09/12/31)

  1. トランスバータ部からの300mWの信号を2Wまで増幅します。基板のサイズは62×38mmです。
  2. 独立した基板にしたのは回り込み等の不安定動作を避けるためです。入出力インピーダンスは50Ωとし基板単位での動作確認を容易にしました。
  3. 基板は設計図にあるように背面パネルを凹ました部分にビスで取り付けます。普段は蓋をしますが、外せば容易に調整が出来ます。
  4. 終段の電源入力が約3Wに対し高周波出力が2Wなので、1Wほどが熱として消費されます。スペースの関係上大きな放熱器は置けないので、コの字形の曲げたアルミ板を使いケースへ放熱するようにしました。2W出力で10分間連続送信し、終段2SC1971の表面温度を赤外線温度計で測定した結果20℃→32℃となり、効率よくケースへ放熱されています。また終段の効率が60%以上と良いせいか、発熱自体が少ないように思えます。

 
           背面パネルを凹ましてリニヤアンプを収納         終段はコの字型金具を経由してケースへ放熱

リニヤアンプ部を別基板にしたいきさつ(10/02/27)
平ラグ板を使った試作で、トランスバータ部は TA7358P−2SK439−2SC1906−2SC1970 のラインナップで1W出すことが出来たため、それを1枚の基板にまとめました。ところが異常動作に悩まされ、コレクタ負荷コイルのタップダウンや、ドライブ段と終段TRベースへの安定化抵抗追加で何とか対策したものの、出力はダウンしてしまいました。終段を2SC2053にして出力200〜300mW程度にすれば1枚の基板に収めることはできるものの、それでは今まで製作してきたレベルに留まり面白味が無いのでと、リニヤアンプ部を別基板とし更にシールドケースの中に入れる方法をとりました。この方法がうまく行けば、今後のリグ製作へ発展性があるように思えたからです。

同調はバリキャップとヘリポットを使用(09/12/31)

  1. 発振は44MHzの水晶をVXOとして使います。
  2. バリコンではなくバリキャップ(富士通FC54M)を使い、電圧は10回転ヘリポット(B型10kΩ)で変化させ、その電圧をメータで周波数表示させます。
  3. ヘリポットの回転数と送信周波数の関係を図1に示します。ピンク色の線は参考のために引いた基準線(直線)で、紺色の線が発振周波数をあらわします。1回転の最大が30kHz、最小が8kHzとなり、周波数直線とはいえませんが、直径20mmのツマミを使い、チューニングは容易です。
  4. VXOの発振部にアルミ板で作った小さなカバーを被せ、リグ内の温度変化を緩やかに受ける構造としています。
  5. VXO部はトランシーバ本体下側基板の左側に収納し、同調用のヘリポットは本体右側に取り付けています。相互を結ぶのはリード線のみなので、バリコンのように配置に拘束されないのはありがたいものです。

   
   バリキャップ          10回転ヘリポット            VXO発振部ケース

図1

オートスキャン機能(09/11/23)

  1. バリキャップに加える電圧を自動的に変化させることで、バンド内を自動ワッチすることが出来るため、NE555というタイマー用のICを使って三角波を作り、その電圧をバリキャップに加えました。
  2. 1サイクル10秒でバンド内を上下にスキャンし、誰かが出ていればビート音のような「ビッ」という音として聞こえます。
  3. その時の周波数表示用メータの針の位置を覚えておき、スキャン用スイッチをOFFにして、ヘリポットを回して覚えておいた位置に針を合わせば、相手局に同調することが出来ます。アナログ的な方法ですが本機の大きな特徴です。
  4. 製作当初はノコギリ波を発振させていましたが、波の立ち上がり時にメータの針が勢いで右端のストッパに毎回当たるため、三角波に回路を変更し、ゆっくり針が上下するようにしました。(10/02/27)

 
       NE555

◆バリキャップ採用の不安と対策、オートスキャンへ(10/02/27)

1.エアバリとポリバリ
 「トランシーバの心臓部であるVFOには、がっちりしたエアーバリコンを使うべし」というのは真空管時代からの伝統的な考えですが、鉄枠のがっちりしたFM用バリコンはとうの昔にパーツ屋から姿を消しており、ジャンクを探すしか手が無いでしょう。容量直線型のタイトバリコンは入手可能ですが、減速機構を含めるとコンパクトなトランシーバーには不向きです。ポリバリコンは、長く使うとゴミが噛むのかバリバリという雑音が出てくるし、また減速機構を使うときは芯合わせをしないと強度的に負けてしまいます。。。等々

2.バリキャップ採用の不安
 可変容量素子としてはバリキャップがありますが、トランシーバの心臓部にこんなチャチなものを使っても良いのかと長く思っていました。バリキャップとB型のボリュームを組み合わせ、VXOを組んで周波数を測定してみると、ボリューム摺動部分のざらつきのためか、細かい上下の揺れがあり、また温度変化に対するQRHも大きく、使い物にならないと思っていました。しかし将来バリコンが入手出来なくなるかも知れないとの不安もあり、バリキャップを採用するには何に気をつけたら良いのかを試行することにしました。

3.ヘリポット
 測定器用として使われる10回転のヘリポットは構造的にしっかりしており、ボリュームの代わりに使ってみたところ、周波数が細かく上下に揺れる現象はなくなり、同時に減速機構も不要になりました。50MHzのSSBトランシーバのバリコンを外して、バリキャップとヘリポットで運用してみたところ、使用感は悪くなく、相手局からもQRHは感じられないとのレポートをいただき、光明がさしてきました。しかし目盛りがないため、自分がバンド内のどの辺にいるのか分からないという問題があったものの、電圧メータに周波数目盛りをつけることで、おおよその周波数を表示出来るようにしました。

4.温度変化対策
 バリキャップは温度変化に影響されやすい面もあるため、簡易的な温度補償と発振部をケースで覆い、リグ内の温度変化を緩やかに受ける構造としました。実運用の経験から10分間で100Hz以内のQRHであれば問題ないと判断しています。

5.バリキャップの選定
 VXOに使うバリコンは20PF程度の容量変化と、それが周波数直線になれば理想的です。ところがバリキャップは電圧と周波数の関係が直線にはほど遠いものや、数Vの電圧変化では大きな容量変化を得られないものなど様々ですが、幾種類か実験したところ富士通のFC54Mは前述の問題が少なくて、比較的使いやすいと思います。

6.オートスキャン
 同調にバリキャップを使うのなら、自動的に電圧を変化させてオートスキャンさせてやろうとの発想は、1975年にトリオ(現:ケンウッド)から販売されたTR1300というリグからヒントを得ました。このリグはノコギリ波発生にUJT(ユニジャンクショントランジスタ)を使っていますが、現在は入手不能のためタイマー用ICのNE555に置き換え、約5秒で150kHzほどをスキャンして自動ワッチ出来るようにしました。誰かが出ていればビート音のような「ビッ」という音が聞こえるため、交信相手を容易に見つけることが出来ます。

ケースは自作で(10/01/16)

  1. ケースはアルミ板で自作します。正面パネルは1.5mm厚、それ以外は1mmと一部に0.6mmを使います。
  2. 各部を固定するネジ類はほとんど2mmですが、上下のフタは3mmの化粧ネジ、ゴム足の固定は3mmのネジとします。
  3. ケースを自作する場合、いくつかの部分に分けておくと加工を失敗した場合でも作り直すことができ、なにかと便利です。

 
            ケースの各部材                             組み立てたケース


製作のポイント

7Kコイルの巻き方(10/02/26)

  1. 【4t/1t、6t/2t】 0.1mmのウレタン線を使い、ボビンの一番下の溝(ピンに近い部分)に、2次コイルを巻き、その上に1次コイルを巻き重ねます。
  2. 【12t/4t】 0.1mmのウレタン線でも1つの溝では巻ききれないので、一番下と隣溝に分割して、1次・2次とも半分ずつ巻きます。
  3. 【VXO】 0.05mmのウレタン線を、2つの溝に20tずつ分割して巻きます。
  4. 2次側の負荷が重いドライブ段は、2次コイルを巻いた隣溝に1次コイルを巻き、負荷の影響を少なくします。
  5. 4tのタップコイルは、一番下の溝に2回巻いてから、真中のピンにタップを巻きつけ、その後2回重ね巻きしています。(FCZコイルのように2本の線を同時には巻いていません)

4t/1t ・・・ 1次4回(センタタップつき)/2次1回巻き

  
 (2次コイル)ピンにウレタン線を巻く           半田付けする          1番下の溝に1回巻き、もう一方のピンに半田付けし、2次コイル完成

 
(1次コイル)2次コイルの上に2回まいた後、センタのピンに巻きつけ、さらにボビンに2回巻いて半田付けします。

基板の安定化(10/01/31)
プリント基板へ部品を取り付け半田付けをするとき、あらかじめ四隅にビスを立てておくことで、部品に凸凹があってもプリント基板がガタつかず、取り付けや半田付けが容易になります。下の画像はM2×20mmのビスを長さ3mmのスペーサをはさんでプリント基板の四隅にナットで固定したもので、表面・裏面のどちらに向けても基板が安定し作業がしやすくなります。

 

◆接続ピンは基板外周に配置する(10/02/06)
各基板の入出力として接続用のピンを立てます。基板には1mmの穴を開け、長さ10mm、直径0.8mmの錫メッキ線の先端を2mmほど曲げ、その穴に通して半田付けしました。接続ピンは基板の外周に配置することで、配線が基板内部を横切らず、見た目をスッキリさせることが出来ます。

◆VXO発振部はカバーする(10/02/06)
VXOの発振段に使う部品はリグ内の温度変化に影響されQRHの原因になります。温度補償コンデンサを使っても十分ではないため、発振段をカバーで覆い温度変化を緩やかに受ける構造としました。カバーは加工が容易な0.6mm厚のアルミ板で28×25×14mmの箱を作り、対角線上に立てたスタンドオフボルトに2mmの皿ビスで固定しました。バリキャップの使用で発振段を1箇所にまとめることが出来るため、このような所作も可能になりました。

 
       
 VXO内部                   カバーで覆う

スピーカーの固定(10/06/12)
スピーカは薄型(5mm厚)で口径40mmのものを使用しています。1mmのアルミ板でL型の押さえ金具を4個作り、2mmのビスで上面のフタに固定しました。

 

メータの目盛りを作る(11/05/27)

@周波数
周波数をメータで表示するのはこのリグの特徴ですが、144.120〜144.270MHzを10mmほどの幅で表示するため、バンド内のどの辺にいるかをつかむ程度と思ってください。デジタル表示になれた方には違和感があるかもしれません。周波数の目盛りは実際に送信しながらカウンタで周波数を測定し、メータの針の位置を記録します。その後CADを使って目盛りを書き、インクジェットプリンタでフォトペーパーにプリントし、ハサミで切ってメータに両面テープで貼り付けます。B型のヘリポットは回転と抵抗値は直線の関係ですが、バリキャップもメータも直線ではないため、それぞれの特性を組み合わせた結果、画像のような周波数関係になりました。目盛りは幅16×高さ8mm、文字の大きさは1.2mmと、かなり小さく、パソコンの力を借りないと描けないでしょう。

ASIGNAL/POWER
SIGNALの表示値は元の目盛りと同じ寸法です。POWERは送信出力を徐々に変化させながらQRPパワー計で読み、その時の針の位置を記録し、目盛りを作りました。

   
               作成した目盛り               メータに貼り付ける            元の目盛り

塗装とレタリング(10/06/12)
リグ製作の最終段階として塗装とレタリングがあり、アルミ板の地肌に塗装し文字を入れることで急に通信機らしくなるものです。ただ市販のラッカースプレーはアルミ板との密着力が弱く、ケースの角の部分など物に当たりやすい箇所は塗膜がはがれやすいものです。そこで今回は「メタルプライマー」という非鉄金属用の下塗りスプレーを先に塗り、その上にラッカーをスプレーすることにしました。色は「シルバーグレー」という白っぽいグレーで、野外で使うとき少しでも直射日光の影響による温度上昇を抑えたいとの思いからです。

塗装の注意点としては

  1. 基板が完成し、内部配線を行い、動作確認を終えるまではリグを何度もひっくり返すので、それまで塗装はしないほうが良いです。
  2. 動作確認がOKとなったら、正面パネル、背面パネルを外し、上下のフタと共に塗装を行います。スプレー塗装レタリングの方法については別のページをごらんください。
  3. 即乾性の塗料であっても、塗装後は1日くらいかけて十分に乾かすようにします。手で触って大丈夫と思っても、パネルにナット類を締めこむと塗膜がナットからはみ出ることがあります。

 
               塗装&レタリング                                 全体を組み上げて完成


調整のポイントと性能の引き出し

◆試作台による調整と性能の引き出し(10/02/13)
バラック実験で一定の性能が出たからといって、基板化しても同じ性能が出るとは限りません。いきなりケースに収納してしまうと銅箔面が隠れてしまい、部品交換が難しくなります。ここではアングルを使った試験台によって、全体をオープンな形で取り付け、調整や部品交換が容易にして、調整と性能の引き出しに注力します。

間違った周波数に同調させない(10/02/13)
7kコイルは144MHzにもなると、コアの出し入れで幅広い周波数に同調させることが出来るため、目的周波数ではなく違う周波数に同調させてしまい、出力が弱いとか受信感度が妙に悪いとか言ったトラブルに会うことがあります。このリグでは局発の12.285MHzとVXOからの132MHzをバラモジで合成し、その後の同調回路を通して144MHzを作りますが、コアの位置によって132−12.28=119.72MHzに同調してしまい、出力が出ないと嘆くことがあります。7kコイルはシールドケースに入っているため、ディップメータで外部から同調周波数を計測することは出来ません。こういった場合は各TP(テストポイント)のピンに周波数カウンタをつなぎ、正しい周波数に同調しているかを確認してください。またリグが完成してから、よく調整されたSWRの低いアンテナにつないでも、妙にSWRが悪い場合は、間違った周波数に同調している場合があるため、同調周波数をチェックしてみてください。

ドライブ段と終段のバイアス電流調整(10/02/13)
回路図どおりのバイアス抵抗を使っても、シリコンダイオード(1S1588同等品)の差によって、所定の電流が流れないあるいは流れすぎる場合があります。そんなときはバイアス抵抗の値を増減してください。

キャリヤポイントの調整(10/02/20)
局発のキャリヤポイント周波数は12.2845MHzになりました。手順としてはアンテナ端子にQRPパワー計をつなぎ、送信状態にして局発のトリマを回しながら、パワー計の針を見てキャリヤが漏れはじめる直前の位置にセットします。その後、他の受信機(トランシーバ等)でモニタし、音声がきれいに聞こえるかを確認します。

スプリアスの評価について(10/04/03)
自作したトランシーバから発射されるスプリアス(高調波、低調波、寄生発振等の目的外電波)が、電波法規で定める値に入っているのか外れているのか、測定器を持たない者にとっては評価のしようがありません。絶対値で測定できないのなら相対評価してみようと、送信電波にスプリアスが含まれるとアンテナのSWRが悪化する現象を利用し、ダミーアンテナを作りSWR計を使ってFT817と144S4機のSWR値を比較してみました。

  1. AF発振器→FT817(144MHz USB 出力2W)→SWR計→ダミーアンテナ の順に接続したときのSWRは1.0でした。
  2. FT817の替わりに144S4機を接続し、出力2Wにて測定したSWRは1.0になりました。
  3. 試しに144S4機とSWR計の間にBPF(フジデン FD-144BL)を挿入したときのSWRも1.0であり、スプリアスは少ないのであろうと想像できます。

微弱な高調波まで検出できているのかどうかは分かりませんが、スプリアスについてはさほど悪くは無いだろうと思います。スペアナがあれば一目瞭然なのでしょうが、手持ちの道具で苦し紛れにやってみた評価方法です。(hi)

 
       左から FT817、144S4機、BPF、SWR計                   144MHz用ダミーアンテナ


トラブル対策

電源回路のインピーダンスを下げる(10/03/06)
単3エネループ10本つないだものを電源にすると、送信音がヒリヒリとした音に聞こえました。12V8Aの鉛バッテリーや、12V3.8Aのスイッチング電源ではそのような音にはなりません。リグ回路のインピーダンスが高いのかと思い、470μの電解コンデンサをリグ電源部に追加したところ正常な音になりました。これで良しとするか、回路や配線の引き回し方法を見直すか、まだまだ検討課題は残ります。50MHz1Wの50S3機ではこのような現象は無く、周波数3倍、出力2倍になると様々な症状が出てくるようです。

参考までに、負荷(550mA)と降下電圧から割り出した各種電源の内部抵抗を示します。

項目

容量

無負荷時電圧(V)

最大負荷時電圧(V)

内部抵抗(Ω)

単3エネループ10本

2A

13.04

12.56

0.87

鉛バッテリー

8A

12.15

11.96

0.35

スイッチング電源

3.8A

12.37

12.25

0.22

144MHzコイルの巻き数について(10/05/09)
144MHzに使うコイルの巻き数は 1次/2次=4回/1回 としていますが、送信部に使っている計6個のコイル(T4〜T9)を3回/1回にしてみたところ、送信出力が半分の1Wになりました。これではいけないと周波数変換TA7358Pの負荷コイルを 4回/1回のものに替えてみると出力は1.7Wになり、TA7358Pの出力インピーダンスに対しては4回巻きの方が合っているように思います。結局すべて4回/1回まきに戻しました。回路全体の増幅度にゆとりがある場合は少々のミスマッチは無視できますが、144になると素子の能力を発揮させるには、インピーダンスマッチングが大事なのだと改めて思いました。

シャーシに取り付けると同調点がずれる(10/05/22)
これはトラブルではありませんが、やり直しがあったため記録しておきます。試験台では銅箔面側は部品交換しやすいよう開放としていますが、ケースに入れる場合、基板をシャーシからM2ナット2個分の3mm浮かして取り付けています。また半田の盛りが1mmほどあり、ストレー容量の影響で144MHz部分では同調のずれがありました。コアを抜く方向で同調を取り直しましたが、調整しきれない箇所は同調コンデンサを少ない容量のものと交換しました。

 シャーシからM2ナット2個(3mm)浮かして基板を取り付け


運用実績

アンテナは1/4λのグランドプレーンを使用し,、地上高はホームで8mH,、移動は釣竿を使っており3mHです。

 

日付

相手局

MY

HIS

当局運用地

相手局運用地

距離(km)

2010/4/4

JJ3HYN/3

59

59

兵庫県宝塚市(移動) 

奈良県吉野郡

85

2010/4/4

JM3ROY/3

59

59

兵庫県宝塚市(移動) 

和歌山県海草郡

74

2010/4/4

JF3NIM/3

59

59

兵庫県宝塚市(移動) 

和歌山県海南市

76

2010/4/4

JS3VRU/3

59

59

兵庫県宝塚市(移動) 

奈良県宇陀郡

82

2010/4/4

JO3UBN/3

59

59

兵庫県宝塚市(移動) 

京都市左京区

50

2010/8/14

JA5OGX/5

59

59

兵庫県伊丹市(自宅)

香川県仲多度郡

154

2015/10/25

7M4BLB/1

59

59

静岡県熱海市(移動)

横浜市泉区

56

             
             
             

<完了>