430MHz超再生受信機             ホームに戻る

はじめに(2024/11/1)
1960年代後半から1970年代にかけて時代はゲルマニウムからシリコンへと移り変わり、2SAは高周波用、2SBは低周波用という使い分けをしなくても、高から低まで幅広く使える2SC371シリーズが市販され始めました。その頃に購入した「シリコントランジスタ活用事典」(昭和44年発行 時田元昭著 CQ出版社)の中に「435MHz超再生受信機」の回路図が載っており、430MHzに初挑戦してみようと取り組んでみたものの、クエンチングノイズは発生せず、信号は聞こえず。当時は430MHzのトランシーバーやUHFを測定できる機器を持っておらず、それ以上前へは進めませんでした。しかし今なら測定環境も整ってきており、50数年ぶりに取り組んでみましょう。

 
(左)シリコントランジスタ活用事典 (右)シリコントランジスタが市販され始めた頃の2SC371シリーズ

435MHz超再生受信機(2024/11/1)
シリコントランジスタ活用事典(*1)のP277に下の回路と解説が載っています。

  1. 2SC288(fT=1100MHz)と2SC183というマイクロディスクトランジスタで回路は構成され、同調回路は20×5×1mm厚の銅板と3PFのシリンダトリマが使われています。
  2. 回路図は2SC288のベースへの1点アースで書かれていますが、ベースを銅板に半田付けし、その銅板にパスコン等を最短距離でアースすると、セットの安定度が良くなるとのことです。
  3. 10kΩVRとエミッタコレクタ間のトリマでクエンチングノイズが発生するよう調整します。
  4. CHとそれに接続するコンデンサの値は記入されてなく、「クエンチングノイズがうまく発生するようカット&トライしなさい」というところでしょうか。

 シリコントランジスタ活用事典の回路(*1)

◆回路を書き直す(2024/11/1)

  1. 超再生検波の石は430MHzトランシーバの高周波増幅で使ったNECの2SC3355(fT=6500MHz)とします。サトー電気では@105、秋月ではセカンドソース品(ユニソニック)ですが@20となっており、お好きな方を選んでください。
  2. 同調コイルはφ0.9の銅線(ダイソーで購入)を40mmに切ったものを1回巻きして使います。
  3. TC1,TC2はφ5の2本足6PFセラミックトリマです。
  4. ST-11とST-30は山水のトランスですが、ジャンク箱に残っていたものを久しぶりに使います。トランスやオーディオのメーカーとして有名だった山水はすでに廃業して橋本電気に技術移管しており、同じ型番のものは秋月やサトー電気で購入できますが、@1000弱しており気楽に買える値段ではありませんね。以前は@200程度で買えたはずが、昭和は遠くなりにけりですか。。。

◆生基板に回路を組む(2024/11/8)

  1. 100×30mmのガラエポ生基板の上に回路を組みます。
  2. 高周波部分のアースは最短距離で銅箔面に落とします。
  3. 空中配線では不安定になる箇所は、ベーク基板を幅5mm程度に切ってランド(中継端子)を作り、両面テープで基板の銅箔面に貼りつけます。

 
(左)空中配線と生基板ベタアースで回路を組む (右)2SC3355周辺

 ベーク基板を幅5mmに切って作ったランドに半田付け

◆試運転(2024/11/8)

  1. 電源を接続し、TC1とVR1を回して「ザ〜」というクエンチングノイズが聞こえるようにします。
  2. 430MHzトランシーバをAMかSSBモードにして受信し、TC2を回して超再生からの「ザ〜」というノイズが入れば同調回路は430MHz帯に入っています。これは超再生ノイズの逆利用です。
  3. トランシーバーをAMモードにして送信し、信号が最大になるようTC2を回し、更に音声が明瞭になるようTC1とVR1を回します。

◆受信結果(2024/11/8)

  1. 八重洲FT817のモードを切り替えながら送信すると @AMはきれいに AFMは音が小さく BSSBは歪を含んでモガモガと 聞こえました。
  2. 超再生でFM波が受信できるのは、Qが高くなった同調回路のスロープによってFMがAMに変換される(周波数の変化が電圧の変化に変換される)、いわゆるスロープ検波です。しかし、アマチュア無線のFMは帯域が狭くてデビエーション(音声を入力したときの周波数の変動範囲)が少ないため、スロープ検波しても音は小さいように思われます。またSSBはモガモガと聞き取りにくく、AMなら使えそうに思えました。
  3. FT817をAMの出力0.3Wに設定し付属アンテナを接続して送信機とし、本機に170mmほどのアンテナを付けてワッチしたところ30m程は届きました。
  4. 受信感度は不足していますが、小さな基板に乗ったわずかな部品を見ていると「たった2石だけど430MHzを受信しようと頑張っているな」と感動的です。

<完了>


参考文献(*印)

  1. シリコントランジスタ活用事典 時田元昭著 CQ出版社
  2. 実用電子回路ハンドブック CQ出版社
  3. 月間FBニュース 不思議な回路】超再生検波方式FMラジオの製作