430MHz 1/2λ電圧給電アンテナ ホームに戻る
◆はじめに(2023/6/2)
移動運用シーズンになり、バンドをワッチすると430MHzFMは比較的にぎやかでマナーも良い感じがし、入門バンドとして定着しているようです。「定年退職後に再開局し、趣味の山歩きの時にはハンディー機を持って出かけますよ」 という声も聞かれます。最近のハンディー機は機能満載で、すべての機能はとても使いこなせませんが、小型軽量化している点は大変ありがたいです。144MHzで電圧給電アンテナ製作のコツをつかむと他の周波数にも応用してみたくなり、430MHz版を作ろうと思います。アンテナ長が1/3になって机上での製作は楽になりますが、短い導線でもコイルになったりグランドとの間でコンデンサを形成したりと、思わぬトラブルに見舞われることもあり、高周波の気持ちになって作ってみましょう。
試作編
◆整合回路はHPF型(2023/6/2)
144MHz電圧給電アンテナ(144zep4)では同軸の芯線とアルミパイプをコンデンサとして使いました。1PF/10mmというデータ実績もあり、144MHzでは45mmほど必要としましたが、430MHzでは10mmほどで済むでしょう。無駄な配線部分が無く、コンパクトに収まり、今回もこの方式を取ろうと思います。
同軸芯線とアルミパイプを使って1PF/10mmのコンデンサを作る
(*2)
◆SWRの測定方法(2023/6/2)
- 430MHz用のSWR計があれば良いのですが、持っていない場合FT817には「SWRメータ」機能があります。(*1)
- ただSWR1.0とか1.5とかいう数値表示ではなく、反射波の強さをディスプレイのバーの数で表示する機能なので、出力が大きい状態でSWRを最低にすることが好ましいです。
- パネル正面のBNCジャックにアンテナを直接つければ、途中に同軸ケーブルが入らないため測定誤差は少ないでしょう。
◆まずは実験から(2023/6/2)
- BNCジャックにスタンドオフ端子とタマゴラグをビスで固定し、そこにコイルとコンデンサ(2PFセラコンと6PFトリマを直列接続したもの)で整合回路を構成します。
- エレメントは450mm長のロッドアンテナを330mmに縮めました。
- FT817正面パネルのBNCジャックに、BNC-A-PP中継コネクタを介してアンテナを取り付けます。
- FT817の表示部を「送信メータ」に切り替え「SWR」を選択し、送信出力を5W(電源電圧14.6V時は6W)に設定します。
- トリマを回し、エレメントの長さを調整するとSWRメータのバー表示は上図の「表示なし 0」になり、その時のエレメント長は320mm、コイルは2.5回巻き、Cの値は実測で0.9PFでした。
- 50Ωのダミーロードをつないでも表示値は「0」であったため、試作アンテナのSWRは1.0に近いのではないかと思います。
- ちなみにFT817に付属のYHA-63をつなぐと表示値は「3」でした。
- 前述の計算値通りにはなりませんでしたが、近いところには収まったと思います。
(左)試作アンテナの整合部 (右)Cの実測値は0.9PF
使用したロッドアンテナ(伸長時450mm)
製作編
◆使用部品と構造(2023/6/9)
試作編で @エレメント長320mm ACは0.9PF BLは0.8スズメッキ線、内径φ10、2.5回巻、長さ10mm というデータが得られました。ここで整合部の構造を考えます。
- エレメントはFMラジオ用450mm長のロッドアンテナを用い、SWR値を見ながら必要な長さを割り出し、先端部を切断して使います。
- ボビンはホームセンターで売っている外径10×内径6×1000mm長のABS樹脂パイプで、白色と黒色がありますが黒色はひょっとしてカーボンが入っていると高周波特性が良くないため白色を使います。
- コンデンサについては同軸5D2Vの芯線とφ6アルミパイプを使った144ZEP4と同じ方式と、芯線を9mm程アルミパイプに挿入すれば必要な容量値が得られるはずです。
- ロッドアンテナと同軸芯線の間に、絶縁物として同軸の銅線を抜いたポリエチレンだけの物をスペーサとして使い、先端ピンの抜け止め防止のためでもあります。
- ABSパイプ、φ6アルミパイプ、ロッドアンテナ(固定部にM2ネジが切ってある)はM2ビスで貫通固定し、アルミパイプはM2のタップでネジを切り、ロッドアンテナやコイルと電気的に接続します。
整合部内部構造
分解した状態
部品を組み立てる
◆SWRの調整(2023/6/9)
- アンテナの部品を組み立てる
- FT817の出力を5Wに設定する。
- FMにて送信しSWRメータのバー表示が「表示なし」になるよう、コイルのピッチとアンテナの長さを調整し記録する
- アンテナの先端部を記録した長さに切り、先端にM2用スペーサ(外径φ4×長さ5mm)を半田付けする。
- コイル部分に熱収縮チューブを被せて加熱し、コイルを固定・保護する。
- 今回の製作ではコイルの巻き数を1/4減らして2.25回巻きとし、アンテナ長は整合部のビス位置から332mmになった。
コイルのピッチとアンテナ長を調整
5W出力にてSWRメータは表示無し(反射波最小=SWR1.0?)になった
ロッドアンテナの先端を切り、スペーサを半田付け
熱収縮チューブを被せて完成
◆電波の輻射(2023/6/9)
図のような高周波電圧計を作り、アンテナに沿って上下に移動しながらメータの振れを図に点線で書いてみました。エレメントの上端部と下端部に山があり、中央部に谷がある電圧給電アンテナ独特のパターンです。
電波の輻射状況
<完了>
参考文献(*印)
- FT-817取り扱い説明書 八重洲無線
- ダイナミック・ハムシリーズ ワイヤーアンテナ CQ出版社
- アンテナ・ハンドブック CQ出版社