144MHz 電圧給電アンテナ(HPF型)                      戻る

はじめに(2021/5/21)
電圧給電アンテナの整合方法のページでは同調コンデンサをどのような構造にして、どうアンテナ内に収納するかが課題として残りましたが、同軸の芯線をアルミパイプ内に挿入すればコンデンサとして機能することを製作記事(*8)で見つけ、こんな方法もあるのかと知りました。ロッドアンテナを使った電圧給電では同調コンデンサに小型セラミックトリマを使いましたが、耐圧が50Vなので許容電力は2Wと言う制限がありました。しかし同軸を使うと5D2Vの耐圧は1000V以上なので、ことコンデンサの耐圧だけを考えるのであれば100W以上でも使用可能となり、がぜん製作意欲が湧いてきました。

 同軸芯線をアルミパイプに挿入してコンデンサを形成

◆HPF型電圧給電アンテナ(2021/5/21)
給電部はインピーダンス変換回路(整合回路)であり、ネットの製作記事に(*7)にHPF型、LPF型と言う表記があったのでそれを引用し、1のタップ型は私が便宜上つけました。構造的にコンデンサをボビンの中に収納することが出来そうなので、見た目スッキリのHPF型について実験と製作を進めようと思います。

 3種類の整合回路

◆給電点インピーダンスとコイルの巻数(2021/5/21)

  1. 下の画像のような整合回路を組み、コイルを何種類か交換し、C1のトリマを回してSWRを下げます。
  2. L1の巻き数について @0.3SQのビニール線では6回巻 Aφ7のアルミパイプでは4回巻 が最もSWRが下がりました。給電点インピーダンスの高低によって、それに整合するコイルとして最適な巻き数があるようです。
  3. 6PFセラミックトリマの容量値はローターの回転角度からの推定値です。
  4. 下の写真のようなL型ラグ板を使っているため、巻き数を変更してもコイル長は15mmの一定です。

 

◆実験1,2におけるコイルの巻き数とSWRの関係

実験1 ビニール線(0.3SQ)

実験2 φ7アルミパイプ

巻数

C1(PF)

SWR

巻数

C1(PF)

SWR

8 0 3      
7 2 2      
6 2.5 1.05 6 2 3
5 3 1.3 5 3 1.3
      4 4 1.05
      3 9 3

◆アンテナのインピーダンス計算(2021/5/21)
電圧給電アンテナの実験をしていて気づいたことは、アンテナのエレメントとして試作時は0.3SQのビニール線を使っていますが、それを実機としてアルミパイプに変更すると同じコイルでもSWRが落ちない事に気付き、その点について調べてみました。(*3 P25から計算式を引用)

アンテナを分布定数回路とみれば特性インピーダンス Z(※)は   【 ※ 入力インピーダンス あるいは 給電点インピーダンス ともいう 】

        Z=60loge(2h/d)                    【 h=アンテナ長さ、d=エレメントの直径、loge=自然対数(ln) 】

エレメント長990mmの場合

実験1 :  Z=60loge(2×990/0.6)=445Ω         【 0.3SQ=0.3mmビニール線の芯線直径は0.6mm 】

実験2 :  Z=60loge(2×990/7)=297Ω

参考にした文献には 「上記の式は放射抵抗などの要素を除外しており、条件として十分ではない」 との記述がありました。しかしエレメント径によって給電点インピーダンスに違いのあることは判っていただけると思います。

◆製作を進める(2021/5/28)
上の実験でφ7のアルミパイプを使う場合、φ12.5のボビンを使うとコイルの最適巻数は4回と言うことが分かったため、製作に取り掛かることにします。

  1. コネクタはMP8(8D2V用M型プラグ)を使用。
  2. コンデンサとして使う同軸は5D2Vの芯線(ポリエチレン部を含む)を使い、長さはポリエチレンを含む部分が48mm、その先の銅線部が20mmほどです。
  3. 同軸芯線がコンデンサとして働く長さは45mmなので、静電容量としては4.5PFになります。
  4. ボビンとして使うグラスファイバーのパイプは外径12.5mm×内径8mm×長さ55mmで、MP8に差し込む先端の15mm部分がφ11になるまでヤスリで削りました。
  5. ラジエータとして使うアルミパイプはφ7×1000mm長を使い、給電点は端から10mmのところなので実質のエレメント長は990mmとなり、順序が逆ですが短縮率は95%です。
  6. 端部にはボビンの内径に合わせるためのφ8×40mmパイプ(補強を兼ねる)、内径にはφ6×60mm長のアルミパイプ(コンデンサ形成用)を挿入します。
  7. コイルはφ12の丸棒に巻くと0.5mmほどの戻り(スプリングバック)があるため、φ12.5のボビンに丁度良い締まり具合で収まります。

 部品を並べる

 各部品を組み立てたところ

◆SWRはコイルのピッチ調整で(2021/5/28)
初めて作る場合はコイルの巻き数が判らないためアンテナインピーダンスメータを使って、インピーダンスが高ければ(誘導性)コイルの巻き数を減らし、インピーダンスが低ければ(容量性)コイルの巻き数を増やすという方法を取ります。

  1. 5D2V芯線長はポリエチレンの部分が48mmで、アルミパイプに入っている部分は45mmなので4.5PFになります。
  2. 今回の構造では同軸を切り詰めてSWRを徐々に下げるという方法は現実的でないため、コイルのピッチ調整で行うことにします。
  3. インピーダンスメータで表示値が50Ωに近くなればSWR計に交換します。
  4. SWR計を見ながらコイルのピッチ(間隔)を伸ばしたり縮めたりすると、SWRは1.1まで落ちました。
  5. ピッチ調整終了後は、コイル部分を熱収縮チューブで固定します。

 インピーダンス測定時のコネクタ接続

 ピッチ調整を終えたコイルを熱収縮チューブで固定する

◆アンテナとして仕上げる(2021/6/4)

  1. 給電線の先端にMPコネクタが付いており、それに合わせるため、中継コネクタとしてMAJJを使います。
  2. 自己融着テープでコネクタからコイル部分までを巻いて保護します。
  3. 自己融着なので巻いた部分は一体化しているため隙間が無くなるとは思いますが、下側のMA−JJ側から巻いてアルミパイプ側で終わるようにし、テープの合わせた部分から水が入りにくいようにします。
  4. アンテナの先端部の防水対策はパイプの中にバスボンドを数mm注入してから、7mm用端末保護キャップ(ホームセンターのネジ売場にあります)を被せました。

 自己融着テープで全体を保護する(MP−5にMA−JJを接続)

 アンテナ先端部にバスボンドを詰め、その上から端末保護キャップを被せる

◆内部構造(2021/6/4)

<完了>


参考文献(*印)

  1. アンテナ製作マニュアル 電波新聞社
  2. アンテナ・ハンドブック CQ出版社
  3. アマチュアのアンテナ設計 岡本次雄著 CQ出版社
  4. 平河ヒューテック株式会社資料
  5. 電圧給電アンテナ
  6. アンテナ工学ハンドブック 電子通信学会編 オーム社
  7. 月刊FBニュース 楽しいエレクトロニクス工作 38
  8. 新・手作りアンテナ入門 田中宏著 CQ出版社