電圧給電アンテナの整合方法                  戻る

はじめに(2021/5/14)
1/2λ電圧給電アンテナは飛行船ツエッペリン号に使われたアンテナとして有名ですが、末端給電のためインピーダンスが高くなるのでハシゴフィーダで給電します。
英語では「end fed half wave antenna」とのことで「半波長端給電アンテナ」と訳すのでしょうか。またメーカー品では「NR=ノンラジアル」と称するものもあります。50Ωの同軸を使ってアンテナの端から電圧給電するためにはインピーダンス変換する必要があり、整合回路が必要になります。

 図1

インピーダンスの大小と整合回路(2022/6/29)
アンテナチューナーは様々なインピーダンスのアンテナと整合を取るためバリコンの位置が2か所になっています。電圧給電の場合は同軸の50Ωよりインピーダンスが高いため、図2の回路3を使います。(*3 P53)

 図2

HPF型LPF型2種類の整合回路(2022/7/25)
コイルとコンデンサの位置で整合回路は2種類考えられます。この整合回路の名称についてはトロイダルコア活用百科P100-101にハイパス型、ローパス型と言う表記があったのでそこから引用しました。

◆インピーダンスの計算(2022/7/25)

  1. 任意長アンテナの端部から給電する時のインピーダンスは下記の式(*5 P25)で計算しましたが、実験してみるともうちょっとインピーダンスは高いように思います。
  2. 計算例はエレメントに芯線径1.2mmのビニール線を使った場合ですが、アルミパイプなどを使って径を太くすればインピーダンスは低くなります。
  3. またHFではエレメント径に対し、エレメント長が長くなるため、インピーダンスは高くなります。

 Z=60*loge(2h/d)    Z=特性インピーダンス、h=エレメント長、d=エレメントの直径、loge=自然対数

  h=990mm、d=1.2mm の場合

 Z=60*loge(2*990/1.2)=445Ω

HPF型及びLPF型整合回路の計算(2022/7/25) (*2 P55)
CQ出版 ダイナミックハムシリーズの「ワイヤーアンテナ」という本に「逆L型整合回路」の計算式が載っていたので、それを使ってコイルとコンデンサの値を求めてみました。

実験してみると(2022/7/25)
空芯コイルの計算式から、φ0.8のスズメッキ線を、内径9mmで7回巻き、長さを23〜25mmにすると、インダクタンスは0.16〜0.17μHになるため、実際にコイルを巻いてSWRがどうなるかを確かめてみます。またコンデンサは6PFのトリマを使いました。その結果

  1. HPF型  7回巻きではSWRが十分に落ちなかったため、8回巻きに変更しコイルピッチを調整しながらトリマを回すことでSWRは1.0になりました。
  2. LPF型  7回巻きでコイルピッチを調整し、トリマを回すことでSWRは1.0になりました。

計算値どおりのコイルとコンデンサの値ではSWRが1.0までは下がらなかったため、HPF型ではコイルの巻き数を増やし、またLPF型ではピッチを狭くしてインダクタンスを増やしてみました。それによってコンデンサの値は小さくなります。このことから給電点インピーダンスは計算値よりも実際はもっと高いのではないかと思えます。そのため、今後も整合回路を作るときは、コイルは少し多めに巻いてから、カット&トライで減らしていく方が現実的な感じがします。

 

<完了>


参考資料

  1. アンテナハンドブック CQ出版社
  2. ダイナミックハムシリーズ ワイヤーアンテナ CQ出版社
  3. 解説・無線工学 野口幸雄著 CQ出版社
  4. トロイダルコア活用百科 山村英穂著 CQ出版社
  5. アマチュアのアンテナ設計 岡本次雄著 CQ出版社