50A1機のスプリアス測定           ホームに戻る

新スプリアス規格(2025/10/10)
50A1機は6mAMのロールコール用として2000年に作ったリグでありTSSの認定も受けていますが、当時スペアナは持っておらず遅れ馳せながら @帯域外領域 Aスプリアス領域 について測定してみます。なお、以下の測定に関しては現時点で私が理解している範囲で進めており、理解不足の点があれば今後修正していきます。

 JARDの資料より

無線設備規則 第一章 第二節 第七条 別表第三号(令和5年12月22日施行) から抜粋

今回の測定は下表の赤字部が該当

基本周波数帯、モード

空中線電力

帯域外領域

スプリアス領域

BN(必要周波数帯)

±2.5BN

30MHz以下
(41項にアマチュア用の例外規定あり)

1W〜5W

50mW以下かつ40dB

50μW以下

4kHz未満

±10kHz

1W以下

100μW以下

50〜54MHz、AM(A3E)

1W50W

1mW以下かつ60dB

60dB

25kHz未満

±62.5kHz

1W以下

100μW以下

50μW以下

144〜146MHz

1W〜50W

1mW以下かつ60dB

60dB

1W以下

100μW以下

50μW以下

430440MHz
(10
項にアマチュア用の例外規定あり)

1W50W

1mW以下かつ60dB

60dB

1W以下

100μW以下

50μW以下

不要発射測定周波数範囲

送信周波数の範囲

測定周波数範囲

9kHz〜100MHz

9kHz〜1GHz

100MHz300MHz

9kHz〜第10高調波

300MHz600MHz

30MHz3GHz

600MHz5.2GHz

30MHz〜第5高調波


トラップの追加(2025/10/10)
50A1機のスプリアスを測定すると、3倍波の150MHzが67μWで上表の規格内に入らなかったため、アンテナ端子部分にトラップを追加することにします。

   追加トラップ

  

測定系統図(2025/10/10)

  1. 音源として1000Hzの正弦波と疑似音声が必要ですが、これはITU-T G.277準拠疑似音声発生サイトを利用します。
  2. 正弦波と疑似音声の電圧(数mV)を測定できる低周波電圧計が必要です。

◆搬送波電力の測定(2025/10/10)

  1. 50A1機(50.550MHzを発振、無変調)→BNC/SMA変換コネクタ→30dBアッテネータ→SMAケーブル→スペアナ の順に接続します。
  2. 周波数を50.550MHzに設定し、スペアナの周波数は50.540〜50.560MHzとすると、1T=-3dBm(0.5W)となりました。

 50.540〜50.560MHzで測定


帯域外領域

無変調で測定(2025/10/10)

  1. JARDの資料では帯域外領域でのスプリアス測定は「搬送波を無変調で送信、占有周波数帯域幅の外側のスプリアスを測定」となっています。
  2. 測定系統図においてVRを左に回し切った状態を「無変調」とします。

帯域外領域の測定(2025/10/10)

  1. 50A1機(50.550MHzを発振、無変調)→BNC/SMA変換コネクタ→30dBアッテネータ→SMAケーブル→スペアナ の順に接続する。
  2. スペアナは50.550MHzを中心に±65kHzを表示する。
  3. 必要周波数帯BNは25kHz未満、帯域外領域は±62.5kHz、RBWは200Hz。
  4. 帯域外領域では 6T=50.56065MHz の -62.7dBm(0.5μW) が最大であり、規格の100μW以下である。

測定環境

スプリアス

周波数

電波形式

飽和電力

必要周波数帯幅

帯域外領域

RBW

アッテネータ

周波数

強度

規格限度値

判定

50.550MHz

A3E 無変調

0.5W (27dBm)

25kHz

±62.5kHz

200Hz

30dB

(7T) 50.53451MHz

0.5μW

100μW以下

適合

 帯域外領域の測定


スプリアス領域

スプリアス領域(2025/10/10)
スプリアス領域における測定方法は、「正弦波1kHzで変調度60%(変調時のスペアナで見られる搬送波から-10,5dBc)に設定後、同じレベルの疑似音声に切り替える」とのことです。

スプリアス領域の測定(2025/10/10)

  1. パソコン(1000Hz)→50A1機→BNC/SMA変換コネクタ→30dBアッテネータ→スペアナ の順に接続する。
  2. スペアナの周波数範囲を50.550MHzを中心に±10kHz(50.540MHz〜50.560MHz)に設定する。
  3. 1000Hzの変調波が搬送波から10.5dB(変調度60%)低い値になるようVRを調整し、その時の電圧を低周波電圧計で読む。
  4. 音源を疑似音声に切り替え、1000Hzの時と同じ電圧になるよう音量を調整する。
  5. スペアナの周波数を9kHz〜1GHzに設定する。
  6. スプリアスとしては2Tの20.1MHzが-52.3dBm(5.9μW)で観測できました。3倍波が抑えられておりトラップを入れた効果がありました。

測定環境

スプリアス

周波数帯

電波形式

飽和電力

測定周波数範囲

アッテネータ

周波数

強度

規格限度値

判定

50.550MHz

A3E

0.5W (27dBm)

9kHz1GHz

30dB

(2T) 20.1MHz

5.9μW

50μW以下

適合

 
(左)1000Hzの正弦波で変調度を60%(-10.5dBc)に設定 (右)スプリアス領域の測定(9kHz〜1GHz)

◆測定を終えて(2025/10/10)
50A1機は2000年に南大阪A3ロールコール用に作ったリグでTSSの認定を受けており、申請書には遵守事項として「私は、無線設備が電波法第3章の技術基準に適合するよう、維持します」とあり、その後は5年毎に再免許を受けています。20年以上経ってからスペアナで調べてみると3倍波が少しオーバーしていたので、トラップを入れて対策しました。「VXOの出力のみ複同調で他は単同調、終段の後にT型フィルタ」というのが当時の一般的な考え方でしたが、スプリアス的にはちょっと不足していたなと思います。しかし古いリグでも少しの改造で新スプリアス規格に適合させることはできるので、見直してみるのも良いかと思います。

 50A1機外観

<完了>


参考資料

  1. 総務省無線設備規則
  2. JARDのスプリアスに関する資料
  3. CQ出版社 ダウンロードサイト 疑似音声発生器の製作
  4. ITU-T G.277準拠疑似音声発生サイト