50MHzベースローディング短縮ホイップの製作
◆はじめに(2018/11/9)
50MHzの1/4λホイップアンテナは長さが1.5mになり、ピコなどの小型リグに取り付けるには長くて重過ぎるように思います。144H4機(幅111×高100×奥行42mm 質量430g)に取り付けた電圧給電1/2λロッドアンテナは全長105cmであり、この程度の長さであれば使用に耐えたので、多少のゲイン低下は承知の上で50MHzの短縮アンテナを作ろうと思います。
ローディングコイルの実験
◆ローディングコイルの種類(2018/11/16)
アンテナの長さが波長に対して短い場合はローディングコイルを入れて電気的に長くしますが、コイルを入れる場所によって次の3種類があります。
- トップローディング : アンテナの先端に入れるため先端部が重くなり構造的にしっかり作ることが必要ですが、電波の飛びは3種類のうちで一番良いです。
- センターローディング : アンテナの中央部に入れるもので、コイル位置がベースローディングよりは高くなっており電波の飛びはよくなります。
- ベースローディング : アンテナの基部に入れるため構造的には強くできますが、電波の放射が低い位置に偏るため飛びはよくありません
それぞれ長短はありますが、今回はロッドアンテナを使うため、構造面からBのベースローディングとします。
3種のローディングコイル挿入位置
◆ベースローディングコイルの計算(2018/11/9)
ベースローディングに使うコイルのインダクタンスを求めるには「アマチュアのアンテナ設計 P25、P82」によると
- 導体(ロッドアンテナ)の長さと直径からインピーダンスZを求める。 Z=60loge(2h/d) (単位:Ω) 【
h=導体の長さ、d=導体の直径 loge=自然対数】
- 電気角で現した導体の長さGを求める。 G=360×l/λ (単位:度) 【
l=導体の長さ、λ=1波長の長さ 】
- 電気角とインピーダンスからリアクタンスXを求める。 X=−j
Z/tanG (単位:Ω) 【j=虚数単位】
- 短縮アンテナの場合はリアクタンスが容量性になるため、それを打ち消すコイルのインダクタンスLを求める。 L=X/(2πf) (単位:H) 【
f=周波数 】
ロッドアンテナはFMラジオ用の長さ840mm 平均直径φ4.5(最大直径φ7、最小直径φ2)
のものを使います。周波数を50MHzとすると
- Z=60×loge(2×840/4.5)=355Ω
- G=360×840/6000=50.4°
- X=−j 355/tan50.4°=−j
294Ω
- L=294/(2×3.14×50)=0.9μH
ローディングコイルのインダクタンスとしては 0.9μH との計算結果になりました。
◆コイルを巻いて測定(2018/11/9)
- 空芯コイルで0.9μHのインダクタンスを得るには単層コイルの計算式から φ1のスズメッキ線、直径φ11で、巻き数17回、長さ33mm となります。
- 巻いたコイルを秋月のLCFメータで測定すると0.9μHでした。
- コイルを巻いて840mmのロッドアンテナにつなぎ、FCZ研のアンテナインピーダンスメータを接続し、FT817を送信機にして測定してみると、木造家屋室内での測定環境ですがインピーダンスで150Ω、SWRは3でした。
- ロッドアンテナを少しずつ短くするとSWRが1に近づく傾向にあるため、アンテナ全体が誘導性になっていることが分かります。
- ロッドアンテナをいっぱいに伸ばし、コイルの巻き数を1回づつ減らしながら14回巻きにするとSWRは1、インピーダンスは50Ωになりました。その時のコイルのインダクタンスは実測で0.8μHです。
- アンテナは周囲の影響を受けやすく、体を近づけたり遠ざけたりするとSWRは変動します。実際に運用するときもその点は意識しておいた方が良いでしょう。
います。
(左)インダクタンス測定 (右)ベースローディングコイルの実験
アンテナの製作
◆ボビンの材料(2018/11/16)
ホームセンター(コーナン)で売っている丸パイプ(外径φ10 内径φ6 長さ1000mm ABS樹脂? 188円税抜)を使うことにします。色は白と黒の2種類があり、黒はひょっとするとカーボンが入っているかも知れず、損失があるといやなので白を選びました。
φ10の丸パイプ
◆ボビンの加工(2018/11/16)
全長33mmに切り出し、BNCコネクタ(メス)に入るよう端部より8mmの長さをφ8.5ほどにヤスリで仕上げ、線材を通すφ1.5の穴をあけておきます。
丸パイプを加工する
◆ボビンにコイルを巻く(2018/11/16)
- 実験中はφ1のスズメッキ線を使っていましたが、製作時はコンパクトにするためウレタン線(UEW)の密巻とします。
- 実際に巻いてみるとφ1では硬くて巻きにくかったためφ0.8に変更しました。
- インダクタンスが0.8μHになるように計算すると10回巻きになりました。
密巻きコイル
◆接着と仕上げ(2018/11/16)
- ロッドアンテナの基部はM4のネジであったため、φ6のスペーサーの内径にM4のタップでネジを切り固定しましたが、購入したアンテナの構造に準じて対応してください。
- BNCコネクタ(秋月にて@120)とボビンは2液性エポキシ接着剤で固定し、ロッドアンテナの基部に固定したφ6スペーサーとボビンも接着します。
- BNCコネクタからロッドアンテナにかけて熱収縮チューブを被せ、ライターで加熱して固定しコイルがずれないようにします。
熱収縮チューブでコイルを固定・保護
全長は200mm弱
◆全体の構造(2018/11/23)
◆電波の輻射(2018/11/23)
ロッドアンテナ垂直に立て、その横を上下に高周波電圧計をスライドさせた時のメータの読みを点線で示しました。
(左)電波の輻射 (右)使用した高周波電圧計
◆製作費用は500円程度(2018/11/23)
- ロッドアンテナ 300円程
- BNCコネクタ 120円
- ボビン、ウレタン線、スペーサー、接着剤、熱収縮チューブ、卵ラグは手持ちのものを使用 合計で100円程度
◆製作を終えて(2018/11/23)
アンテナが短かければ(容量性)、インダクタンスを追加して電気的に長くし、長ければ(誘導性)、キャパシタンスを追加して電気的に短くする。参考文献に書いてあった 「アンテナの設計・調整というものは、とどのつまり、リアクタンスを打ち消すことにある」 という言葉が印象的でした。
◆実運用(2018/11/23)
まだ実際に使ってはいませんが、今後50MHzのハンディ機を作る予定であり、来年の春頃には評価できると思います。
<完了>
参考文献
- アマチュアのアンテナ設計 岡本次雄著 CQ出版社
- アンテナハンドブック CQ出版社