7MHz短縮ホイップ もどる
◆はじめに(2022/7/8)
7MHzで移動運用するときはVCHアンテナを使っており、比較的短時間で設営できますが、ちょっとワッチしてみたい時に使えるホイップアンテナが欲しくなりました。「7MHz 短縮アンテナ」でネット検索すると、週刊BEACON(2022/3/31より休刊)にJE1UCI冨川さんの「7MHzミニホイップ」の記事がありました。ロッドアンテナや真鍮パイプを利用したもので、まずはこの記事を参考に実験をはじめようと思います。
試行編
図1 週刊BEACON No.38 7MHzミニホイップ のデータ
◆まずは作ってみる(2022/7/8)
(左)実験で使用した7H3機 (右)適当に巻いたコイルとリード線で作った短縮ホイップ
製作編
◆全体的な構成(2022/7/8)
◆センターローディングコイルの設計(2022/7/15)
計算式については「アンテナハンドブック」 P390-391からの引用です。 またセンターローディングコイルの計算サイトもあります。
図2 アンテナハンドブック P390
上部エレメント長h2=870mm、下部エレメント長h1=500mm、エレメント全長h=h1+h2、エレメント平均直径d=6mm、7.1MHzの波長λ=300/7.1*1000=42254mm とすると
Ka=エレメントの平均特性インピーダンス 、 XL=ローディングコイルのリアクタンス
Ka≒60(loge(2h/d)-1) = 60(loge(2*(870+500)/6)-1) = 307Ω
XL/Ka = cot(2πh2/λ) - tan(2πh1/λ) ※ 右辺の( )内の角度はラジアン 、 180°=πrad 、 cotθ=1/tanθ
= cot(2*3.14*870/42254*180/3.14) - tan(2*3.14*500/42254*180/3.14)
= cot7.41-tan4.26 = 7.69-0.07 = 7.62
XL = 7.62*Ka = 7.62*307= 2339Ω
ローディングコイルのインダクタンス L = XL/2πf = 2339/(2*3.14*7.1) = 52.5μH
空芯コイルの計算式から φ0.4のウレタン線を外径22mmのボビン(塩ビ水道管のVP16)に60回密巻きすると52.7μHになり、ウレタン線は4.2mほど必要になります。
◆上部エレメント(2022/7/15)
使用するロッドアンテナは全長870o(仕舞寸法155o)で、基部にはM3のメネジが切ってあります。そこにM3のオネジをねじ込んでナットで固定しました。
◆短縮コイル(2022/7/15)
短縮コイルの部品
支柱を半田付け
万力で挟み、ボビンを少しつぶして基板を挿入し、万力を緩めて基板を固定する
(左)φ0.4のウレタン線を巻いて短縮コイルを作る (右)実測値は49.4μHになりました
◆下部エレメント(2022/7/22)
挿入部
短縮コイルを接続するφ7の終端部にはM3×15mmの六角支柱を圧入する
表面をパイプカッターで軽くつぶし、抜け止めとする
◆基部(2022/7/22)
◆マッチング回路の必要性(2022/7/22)
アンテナチューナーは様々なインピーダンスのアンテナと整合を取るためバリコンは2個必要ですが、インピーダンスが50Ωより高いか低いかで数を減らすことが出来ます。マッチング回路が必要かどうかは実験で確かめようと思います。
調整編
◆コイルの巻き数を調整(2022/7/22)
図2
(青色)ロッドアンテナを一杯伸ばして測定、(オレンジ色)10mm縮めて測定、(グレー)20o縮めて測定
3つに分解
7H3機に取り付けた短縮アンテナ(全長1460mm)
◆電波の輻射(2022/7/22)
短縮アンテナを垂直に立て、その横を上下に高周波電圧計をスライドさせた時のメータの読みを赤線で示しました。上部エレメントと短縮コイルからは電波が出ていますが、下部エレメントからはほとんど電波が出ていません。
◆製作を終えて(2022/7/22)
アンテナ関係の製作記事を読んでいると、ローディングコイルについては「何oの線を、何oのパイプに、何回巻き」と書いてあるだけで、ページ数の関係もあるのでしょうが、なぜその数値に至ったのかが判らず、周波数など条件を変えた時に応用が利きませんでした。
しかし今回はアンテナハンドブックの片隅に書いてあった計算式を参考に、センターローディングアンテナというものを始めて作ったところ、SWR最低点におけるコイルの巻き数が計算値に一致、ただし実測値は計算値の94%という結果になりました。木造家屋の室内という測定環境やアース線の影響などもあるでしょうが、計算で近似値が出ることに今後への期待が膨らみました。
それにしても何十年も前に買った本の一部に書いてあった記事を、興味がわかないままに読み飛ばしていましたが、必要性を感じ読み返して短縮コイルの設計方法を知ることが出来ました。色んなアプリがあって、データを入力すれば答えは一瞬で出てくる世の中ですが、なぜそんな数値が出てくるのかの背景を知っておくことは必要なことと思います。
さて、この短縮アンテナの性能は、フルサイズのダイポールには遠く及びませんが、まあまあ受信できるため条件の良い場所で運用してみたくなりました。またコイルを替えれば21MHzなど他の周波数にも応用できるため、それも作ってみたくなりました。
<完了>
参考文献 (*印)