tinySA Ultra          ホームに戻る

はじめに(2025/1/31)
数十年前は1台100万円と言われていたスペアナ(スペクトラムアナライザ)ですが、技術の革新で10数万円まで下がってきたものの、まだ手が出ませんでしたhi。しかし数年前から話題になっているtinySAは1万円前後で評判も高いようです。普段スプリアスを調べる時はデジタルオシロのFFT機能を使い144MHzまでは観測してきましたが、430MHzになるとどうにもならず、スペアナが必要になりました。まずは「tinySA活用ガイド」を購入し、概要を把握してみることにします。

 tinySA活用ガイド

正規品とコピー品(2025/1/31)
tinySAには正規品とコピー品があり、コピー品をつかまされると初期段階のセルフテストで止まってしまうこともあるようです。tinySAのホームページには正規品とコピー品の通販サイトが紹介されており(画面のWhere to buyをクリックする)、そこで確認してください。なお、日本の正規品サイトとしてはスイッチサイエンスがあります。

tinySAとtinySA Ultra(2025/1/31)
tinySAの機能をアップしたのがtinySA Ultraで、スイッチサイエンスにおける価格は2025/1/27時点でtinySAが10,800円(売り切れ)、tinySA Ultraが29,800円(税込、送料無料、在庫あり)となっています。アマゾン等を使えばもう少し安く購入できますが、コピー品で不快な思いはしたくないためスイッチサイエンスでUltraを注文し、指定口座に振り込むと2日後に届きました。

仕様の比較(公式サイト) 下表は抜粋

項目

tinySA

tinySA Ultra

外形

58.7×91.3×17.1mm

74 x 123 x 23 mm

画面サイズ

2.8インチ

4インチ

測定周波数

LOW:100kHz〜350MHz

通常:100kHz〜800MHz

HIGH:240MHz〜960MHz

Ultra:100kHz〜6GHz

信号発生器

正弦波:100kHz〜350MHz

正弦波:100kHz〜800MHz

矩形波:240MHz〜960MHz

矩形波:240MHz〜4.4GHz

最大入力

+10dBm(10mW)

+6dBm(4mW)

推奨入力

-25dBm(3μW)以下

-25dBm(3μW)以下

精度

±2dB

±2dB

分解能

0.5dB

0.5dB

最小RBW

3kHz

200Hz

測定ポイント

290

450

バッテリ
動作時間

2時間以上

2時間以上

RBW (Resolution Band Width) : 分解能帯域幅

 
(左)化粧箱 (右)tinySA Ultra


初期設定

開梱後に行うこと(2025/2/7)
公式サイトのFirst useに下記のように書いてあります。(画面は英語なので、ブラウザの翻訳機能を使って日本語にしました) 動画での説明

  1. tinySAを配送ボックスから開梱します
  2. tinySAの充電
  3. 偽造モデル/クローンモデルのチェック
  4. ユニットのファームウェアの更新(オプション)
  5. 内部セルフテストの実行
  6. tinySAのキャリブレーション
  7. 警告に注意する
  8. (ウルトラモデルのみ):時刻/日付の設定、ウルトラモードの設定

◆タッチペン(2025/2/7)

  1. tinySAの画面は感圧式(抵抗膜式)であり、先の尖ったものでタッチすることにより検知されます。
  2. このセットには付属のストラップにギターのピックのような形のタッチペンが付いており、ストラップを本体に取り付けておけば無くすことはありませんが、ちょっと使いにくい感じがします。
  3. タッチペンは100均でも売っていますが、使用済みのボールペンとか、竹箸とか、画面を汚したり傷つけなければ何でも良いので、身の回りの物を探してみましょう。

 付属のストラップとタッチペン

◆初期設定(2025/2/7)

  1. 付属のケーブル(USB-Cタイプ)で充電してください。充電中は赤いLEDが点灯し、充電完了で消灯します。
  2. 次に電源を入れ、本体の左側にあるCAL端子とRF端子を付属のSMAケーブルで接続します。

 CAL端子とRF端子を付属のSMAケーブルで接続する

1.キャリブレーション
  
パネルをタッチするとメニューが現れる CONFIG→LEVEL CAL→CALIBRATE 100kHz to 5.340GHz→CALIBRATE でキャリブレーションが始まり、
  終わると 
Calibration comprete Touch screen to continue と表示される。

2.セルフテスト
  パネルをタッチするとメニューが現れる 
SELF TEST Test1からTest14までが緑色の表示になったら正常に終了。Touch screen to continue
  
と青色で表示される。

最大入力と推奨入力(2025/2/7)

  1. 最大入力は+6dBmで電力に換算すると4mWになります。トランシーバーなど高出力の端子に直接つなぐと損傷してしまう事があるとのことで、アッテネータを入れて減衰させることが必須です。段階的に選択できるステップアッテネータか、10dB,20dB,30dBといった単独のアッテネータを準備しておくのが良いでしょう。
  2. 1W出力のトランシーバーであれば、30dBのアッテネータを入れることで1/1000の1mWに減衰します。
  3. 推奨入力は-25dBm(3μW)以下となっており、最大入力近くで測定するよりも精度が良いとのことです。
  4. 画面左に「Atten:〇dB」との表示があり、入力が大きいと勝手に30dBまでのアッテネータが起動しており、測定に最適な状況を作っているのかも知れません。
  5. 直流の最大入力は5Vです。

 
(左)最大許容入力の注意事項 (右)勝手に18dBのアッテネータが入った例

◆変換コネクタを追加(2025/2/7)
通常SMAコネクタは使わないので、BNC-SMA変換コネクタを外付けしました。

 BNC-SMA変換コネクタ


スペアナとして使う

◆FM放送を受信してみる(2025/2/14)
下記の手順で受信周波数を70〜100MHzに設定します。

  1. RF端子に付属のロッドアンテナを取り付ける。
  2. 画面をタッチ FREQUENCY→START→70M これで下限周波数が70MHzに設定される。
  3. 画面をタッチ STOP→100M これで上限周波数が100MHzに設定される。
  4. 画面をタッチしてメニューを消す。

 70〜100MHzを受信中

◆モニタとして信号の音を聞く(2025/2/14)

  1. RF端子にアンテナをつなぐ。
  2. 本体の下面にあるオーディオ出力の穴にφ3.5のイヤホン(8Ωモノラル)を差し込む。(ステレオイヤホンでは聞こえません)
  3. 上記の手順でモニタしたい周波数範囲を設定する。
  4. 画面をタッチ MARKER→8 MARKER→BACK→LEVEL→LISTEN→聞きたい周波数のマーカー番号をタッチ
  5. AM放送はきれいに受信できますが、FMは割れた音で、SSBはモガモガと聞こえるため、AM検波しているのでしょう。

 
(左)AM放送 600kHz〜1.6MHz (右)FM放送 75MHz〜100MHz

◆スプリアスの周波数とレベルを調べる(2025/2/14)

  1. スペアナには信号の周波数とレベルを示す機能があり、通常は強い信号の上に「1」と表示され、画面上に周波数と信号レベル(dBm)が表示されます。
  2. 信号がスプリアスを含む場合は、その周波数とレベルが分かれば色々な対策を講じることが出来て便利であり、スペアナには「MARKER」という機能があります。
  3. 下の回路に示すトランシーバーの局発(14.318MHz)の出力波形を見てみましょう。無調整回路のため多くのスプリアスを含みます。
  4. 画面をタッチするとメニューが現れる MARKER→4MARKERS 画面をタッチしてメニューを消す。これで4つのマーカーとそれぞれの周波数及び信号レベルが表示されます。
  5. 基本波に対し2次、3次と高調波が現れるので、画面に表示されたdBmを基本波から引き算すれば、高調波のレベルがわかります。
  6. 基本波 14.32MHz -35.1dBm に対し 2次高調波 28.63MHz -47.1dBm。その差(相対値)は -35.1dBm-(-47.1dBm)=12dB となります。

  (左)局発回路 (右)マーカー1、周波数、信号レベルの表示

 
赤丸内に (左)マーカーを1つ表示 (右)マーカーを4つ表示

<続く>


◆RBW(分解能帯域幅)の変更(2025/2/21)

  1. 帯域幅は200Hz〜850kHzまで9種類選ぶことが出来ます。画面左のRBWをタッチするとメニューが現れるので、そこで必要な帯域幅を選んでください。
  2. 帯域を狭くすればより細かく観測できますが、スキャンするスピードは落ちます。
  3. 下の画像は50MHzAMの信号を帯域幅を30kHzと3kHzで変えてみたときの様子です。(下限周波数=49MHz、上限周波数=51MHzに設定)

  
(左)RBW選択画面 (中)RBW=30kHz (右)RBW=3kHz

◆ウオーターフォール(滝)の表示(2025/2/21)

  1. 画面の下1/5程に信号強度が色で、また時間軸による変化が上から下へ滝のように表示されます。
  2. パネルをタッチ DISPLAY→WATER FALL で表示される
  3. 下の画像はRF端子にアンテナをつなぎ430MHz〜440MHzを受信したところで、バンドスコープの様ですね。

 430MHz〜440MHzを表示

◆FT817の電波を観測(2025/2/21)

  1. 測定範囲を40MHz〜100MHzに設定
  2. FT817(50MHz AM 0.5W)→50Ωダミーロード→30dBアッテネータ→tinySAの順で接続する。
  3. -60dBまではスプリアスが見当たらず、見事な波形です。

 FT817 50MHz AM 0.5Wの波形

◆430S1機のスプリアスを調べる(2025/2/21)

  1. 430S1機→50Ωダミーロード→30dBアッテネータ→tinySA の順で接続し、スプリアスを調べました。
  2. 局発372MHzの通り抜けが一番大きく、主信号との差は-46dB(1/40,000)、他はそれ以下となっています。

 
(左)100MHz〜800MHzの範囲で430S1機のスプリアスを観測 (右)430.2MHzの近傍を見る


SGとして使う

無変調モード(2025/2/28)

  1. 50.2MHz無変調の信号を作ります。
  2. 画面をタッチするとメニューが現れる MODE→Signal Generator→FREQの中央にあるSetをタッチ→50.2M→LOW OUTPUT をタッチしてONにすると信号発生
  3. レベルを変えたいときはSetで設定するか、1dBか10dBで設定する。
  4. 出力は-18.5dB(14μW)が最大.。
  5. 自作した受信機を調整する時のキャリヤ発生器として使うと、周波数設定や出力レベルの微調整ができて便利です。

 SGを選択

 機能設定画面

 
(左)10MHzの無変調信号をオシロで見る (右)FFTで見る

変調モード(2025/2/28)

  1. MOD→AMまたはFMを選択→BACK→LOW OUTPUT で信号が発生します。
  2. AMは変調度、FMは周波数偏移を設定できます。

SWEEP機能(2025/2/28)

  1. 設定した周波数を中心に、指定した範囲の周波数を、指定したポイント数で、指定した時間でスキャンする機能です。
  2. 左画面は、10MHzを中心に±5MHzの範囲を、450のポイントに分け、5秒でスキャンするよう設定しました。
  3. 右画面では、信号が5MHzから15MHzまで左から右へと移動し、15MHzに達すると5MHzに戻ります。
  4. FT817をSSBモードにしてモニタしてみると、「ピロピロピロ」と音程を変えながら信号が流れていきます。
  5. フィルタの性能評価などに使えそうです。

 
(左)SGの設定画面 (右)FFTで観測する


付属品を作る

◆検出用ワンターンコイル(2025/3/7)

  1. 同軸1.5D2Vの芯線を50mm程出し、直径10mm程に曲げて網線に半田付けし、φ5の熱収縮チューブで保護しました。
  2. 狭い場所とか、緩く結合したいときに便利ですが、周囲の信号も拾ってしまうので、その点は認識した上で使うことが必要です。

  ワンターンコイル

◆傾斜スタンド(2025/3/7)

  1. 本機を机に置くと画面が水平になって見にくいため、幅100mm×長さ110mm×1mm厚のアルミ板をクランク型(20×70×20mm)に曲げて傾斜スタンドを作りました。
  2. 充電用のUSBケーブルを差し込んだままでも使えるよう、幅15×深さ10mmの切り欠きをつけています。
  3. 傷つき防止用に幅20mm×長さ130mmのフェルトシートを両端に貼りました。
  4. 使わないときは本機を裏返しに置くと、画面の保護になります。

  (左)傾斜スタンド (右)本機をスタンドに置く

 USBケーブル用の切り欠き(赤丸部)

◆30dBアッテネータ(2025/3/7)

  1. tinySA Ultraの最大許容入力は6dBmであり、計測中にうっかり過大な入力を与えてしまう危険性があるため、外付けのアッテネータがあると安心です。
  2. BNCジャックと3D2V用のBNCプラグを20×20×1.5mm厚のアルミ板に固定したものをM3×30mmのビス4本とナットでつなぎ、その間に抵抗を半田付けした簡易的なアッテネータで、特にシールドはしていません。
  3. 50Ωになるような計算値は下記の通りですが、E24系列の抵抗を使用するため、誤差は4%程になります。
  4. 手持の関係で51Ωの抵抗は1W、820Ωは1/4Wを使いました。

   30dBアッテネータ

ネットで探すと下の画像のようなSMAタイプのアッテネータ(50Ω,2W,6GHz)が数社から出ています。コンパクトでtinySAに取り付けるにはうってつけですが、評価を読むと品質や値段も様々(2,000〜20,000円)で、どれが良いのか迷います。

 市販のアッテネータ


その他の機能

◆画像の取り込み(2025/3/7)
当ページでは画面の表示状態をデジカメで撮って、その画像をパソコンに取り込んでいましたが、画面の正面にデジカメを持ってくると映り込んでしまうため、少し斜めから撮るようにしていました。しかし、本機にはSDカードが付いているので、画像を取り込む方法があるのだろうと調べてみました。

  1. 画面をタッチ STRAGE→SAVE CAPTURE→"123"等何か名前をつける→ENTER これでSDカードに"123.bmp"という画像として保存されます。
  2. 本体の下面にあるSDカードを爪で押すと飛び出て来るので、それを外しパソコンのカードリーダースロットに差し込む。スロットが無い場合はUSB用のSDカードリーダーを準備する。
  3. エクスプローラ等でパソコンにデータを取り込む。
  4. データはbmpなので、必要に応じjpgにアプリ(ペイント等)で変換する。

 SDカードリーダー

◆ウルトラモード(2025/3/7)

  1. 本機には測定周波数を6GHzまで拡大できるウルトラモードがあります。
  2. 購入時は無効になっていますが、ロック解除コードを入力するとウルトラモードが有効になります。
  3. ただし測定時における欠点もあるとのことなので、それを理解した上で有効にしてくださいとウルトラモードの解説サイトに書いてあります。

パソコンによる操作(2025/3/7)

  1. tinySAのサイトからアプリをダウンロードし、USBケーブルを接続するとパソコン操作が可能になり、大きな画面で見ることもできます。
  2. 詳しくは「tinySA活用ガイド」をお読みください。この本には付加回路や応用方法についても書かれています。

◆使用感(2025/3/7)

  1. でかくて、重くて、高かったスペアナが、よくもまあこんな小さな箱に入ったもんだと感心しきりです。
  2. 表示文字は小さいものの手元に置けるので、4インチ画面であれば読み取りに問題はありません。
  3. 発振器からどんな電波が出ているか、周波数や信号レベルで表示され、見えなかったものが見えるようになり、急に視野が広まった感じで、良い買物をしたと思っています。

<完了>


参考文献

  1. tinySA活用ガイド 鈴木憲次著 CQ出版 \2,860
  2. tinySAのサイト
  3. スイッチサイエンスのサイト