VCHアンテナの製作                                  ホームへ戻る

◆はじめに(2024/1/12)
7MHzの移動用として2010年に初めて作り、FT817や自作トランシーバを持って移動運用を行い、日本各地とQSOすることができました。設営や収納でエレメント部を曲げたり伸ばしたりと繰り返すため、銅線の接続部分が切れかかったものを修理しながら使ってきました。VCHアンテナは7〜28MHzまでコイルのタップ位置を変えることでマルチに対応できるものですが、私の場合は7MHzでしか使わないため、タップ切替用のリード線(容量環としても使う)を省略したものを新たに作ろうと思います。

 2010年当時の移動運用セット

VCHアンテナとは(2024/1/12)

  1. QRPクラブに所属されているJP6VCH松木真一郎さんが移動運用を重ねながら開発されたもので、電波が強く放射される電流腹を地上高く持ち上げ電波を遠くまで飛ばしたいという気持ちが現れています。またクラブメンバーによってコイルやエレメントの構成など様々なパターンが追試され、場数を踏んだアンテナといえます。
  2. 全体は1/2λの垂直アンテナですが、上部エレメント+コイルで1/4λ、下部1/4λエレメントの途中で給電するという構造です。
  3. この下部1/4λエレメントの途中で給電するがミソで、電流腹の最大点を高い位置に持ち上げることで効率良く電波を飛ばし且つ受けることが出来ます。
  4. グランドエレメントの端部で給電すれば電圧給電アンテナになりますが、10m長のポールが必要になり持ち運びが大変です。そのためコンパクトに収納できる4.5mの釣り竿を使うと中央からずれた位置が給電点になります。
  5. グランドエレメントは地面に這わすため、大地の影響を受けて短縮率が変わり、本来の長さより短くなります。
  6. 給電点のインピーダンスは数100Ωと言われており、4:1のバランで合わせることもできるようですが、場所を変えて設営すると周囲の影響を受けて一定の値にはなりにくいため、アンテナチューナーを使用する方法を取ります。

 VCHアンテナの構造(*1より引用)

◆今回製作のVCHアンテナ(2024/1/12)
7MHz専用であるため上図にあるバンド切替用のリード線(ミニループハットとしても使用)は省略します。そのため容量環として動作するものが無くなるため、コイルの巻き数を30回→32回に増やします。

材料を集める(2024/1/12)

  1. グラスファイバー製4.5m釣り竿 : 1本 (大阪漁具 桃源郷 硬調450 仕舞寸法543mm)。仕舞寸法が400mmの「タカミヤ 白滝V 450」もあります。
  2. 500mlペットボトル : 1個 (炭酸飲料用のしっかりしたもの)
  3. 盆栽用のアルミ線 : 1本 (1.5mm×約7m) ホームセンターの園芸コーナーにて40m物を600円弱で購入
  4. 自在ブッシュ : 5本 (100mmに切ったもの) ホームセンターの電気コーナーにて購入
  5. ビニール線 : 1本 (1.25SQ(50芯)×約9m)
  6. 1.5D2V同軸1.4m : 1本
  7. バナナプラグ : 2個
  8. B2圧着端子 : 2個 (ホームセンターの電気コーナーにて購入)
  9. 園芸用のビニタイ :: 2本 (100o長) ダイソーの園芸コーナーで購入
  10. ロープ1m : 2本 (釣り竿をフェンス等に固定するもの) クレモナロープ 直径5mm
  11. ABSパイプ(外径10mm×内径6mm×80mm長) : 1本
  12. 結束バンド : 3本
  13. ロープ止め(φ6×250mm) : 1本

  (左)盆栽用のアルミ線 (右)自在ブッシュ

 
(左)B2圧着端子 (右)φ6×250mmロープ止め


コイルを巻く(2024/1/19)

  1. ペットボトルの底部中心に釣り竿を通す穴をあける。(竿の先端から1.5m程で止まる直径までテーパーリーマーで広げる)
  2. 千枚通しで巻き始めの穴を2ヶ所あける。
  3. 自在ブッシュを100mm(32溝分)に切り、両面テープに並べて貼り付け、カッターで切り離す。
  4. ペットボトルの周囲を5等分した箇所に自在ブッシュを貼りつける。(底部の突起を目安にする)
  5. 巻き始めの穴にアルミ線を通し、端部に圧着端子をかしめる。
  6. 自在ブッシュの溝にアルミ線をはめ込みながらコイルを巻く。
  7. 32回巻いたらアルミ線を通す穴を2ヶ所あけ、巻き終わりの穴とする。
  8. アルミ線の端を穴に差し込みコイルが緩まないようにする。
  9. 自在ブッシュの端より15mm程残してペットボトルのフタ部分を切り離す。
  10. 巻き終わりのアルミ線端部に圧着端子をかしめる。

  
(左)ドリルで下穴をあけテーパーリーマーで広げる (右)巻き始めの穴をあける

  
(左)両面テープに自在ブッシュを貼る (中)カッターで切り離す (右)切り分けたところ

 
(左)自在ブッシュを貼りつけ (右)5等分位置

 
(左)巻き始めの穴にアルミ線を通し圧着端子をかしめる (右)コイル巻き完了

 
(左)ふた部をカッターで切り離す (右)巻き終わり部に圧着端子をかしめる

 インダクタンスは31.4μHでした

エレメントを取りつける(2024/1/19)

  1. 上エレメント用の同軸(1.5D2V 1.4m)の外被を5mm程はがし、巻き始めの圧着端子に網線部を挿入し、かしめる(半田付けする場合は手早く行う)
  2. 同軸を動かしても圧着端子との接続部分に過度な力がかからないよう、バインド線で同軸を2ヶ所固定する
  3. 下エレメント用ビニール線の外被を5mmはがし、巻き終わりの圧着端子に銅線部を挿入し、かしめる(半田付けする場合は手早く行う)
  4. 下エレメント用とグランドエレメントの端部にバナナプラグを取りつける(半田付けする)

 
(左)上エレメント接続 (右)下エレメント接続

 
(左)バナナプラグ (右)ペットボトルの中に下エレメントとグランドエレメントを収納


釣り竿の固定方法(2024/1/26)

  1. 釣り竿はロープ2本で固定しますが、場所によっては上部1ヶ所しか固定できない場合があります。
  2. そんな時のために釣り竿の根元部分(太い方)にABSパイプ(外径10mm×内径6mm×80mm長)を結束バンドで固定しておきます。
  3. ABSパイプの中にロープ止め(φ6×250mm)を通しておき、設営時には先端部を出して地面に差し込みます。
  4. 釣り竿とABSパイプの隙間をグルーガンで充填しておけば、接着はできませんがズレ止めにはなります。

 ロープ止めを収納

 ロープ止めを出す

 隙間をグルーガンで充填

VCHアンテナの設営(2024/1/26)

  1. 公園とか河岸とか周囲に障害物の少ない場所を選びます。釣り竿を結び付ける柱やフェンス、木の枝等があれば利用しましょう。
  2. 何もない場所では、自転車のサドルを使う手があります。また自転車を倒してハンドルに結びつける方法もあります。
  3. 釣り竿を延ばして先端をコイルの穴に通し、上エレメントをビニタイで釣り竿に止めます。
  4. 釣り竿をフェンス等にロープで括り付けて立てます。
  5. 下エレメントとグランドエレメントをアンテナチューナーに接続する。
  6. グランドエレメントは出来るだけ真っすぐに地面に伸ばします。エレメントを伸ばした方向に指向性が出るとのことです。

 
(左)上エレメントをビニタイで止める (右)7H5機とアンテナチューナー 

 
(左)手すりに固定 (右)自転車のサドルに固定

 移動運用セット

<完了>


参考文献

  1. 新QRP通信 第6回 VCH式移動用釣り竿アンテナの作り方 JP6VCH 松木真一郎著 CQ誌 2006年11月号
  2. 新QRP通信 第10回 VCH式移動用アンテナ・応用編 JP6VCH 松木真一郎著 CQ誌 2007年5月号
  3. 簡単・シンプルな7MHzVCHアンテナの作り方 JP6VCH 松木真一郎著 CQ誌 2008年5月号