固定用144MHz1/2λ電圧給電アンテナ                戻る

はじめに(2021/4/23)
移動運用ではロッドアンテナを使った
144MHz1/2λ電圧給電アンテナを愛用しています。1/4λのロッドアンテナに比べるとSにして2〜3良く、これを固定でも使えるようにしてみたいと思いましたが、屋外で使う同調コンデンサをどのようにするかで行き詰まっていました。10Wで使うことを想定すると耐電圧は100V以上必要になり、50Vのセラミックトリマでは不足します。かといって500V仕様のタイトバリコンではマッチングボックスが大掛かりになってしまいます。そんな折アンテナ関係の本を読んでいたら同軸をコンデンサとして使う記事を見つけ、実測すると0.8D2Vでは容量にして1PF/cm、耐電圧は300Vでも大丈夫そうなので早速実験してみました。

実験をしてみる(2021/4/23)

  1. 下の回路図のように同調回路部をラグ板に組み、FT817をFMモードの0.5W出力にして、144.200MHzでSWRを測定します。
  2. L1の巻き数やタップ位置は144MHz1/2λ電圧給電アンテナと同じです。
  3. トリマを同軸0.8D2V(フジクラ 0.8-QEV)に置き換え、少しずつ切り詰めて行くと42mmでSWRは1.1になりました。

 
(左)セラミックトリマを回しSWRを1.0に近づける (右)セラミックトリマを同軸0.8D2Vに置き換え、切り詰めながらSWRを1.0に近づける

◆同調コンデンサの耐電圧計算(2021/4/23)

送信機の出力P=10W、インピーダンスZ=50Ωの場合、C点の電圧は

C=√(P×Z) = √(10×50)=22.4V

トランスの電圧は巻き数比に比例するため、L1の巻き数比からA点の電圧は実効値で

A=22.4×7/1.5=104.5V (尖頭値では157V)

0.8D2Vは耐電圧測定で AC 300V(1分間) とのことなので、安心して使えそうです。ただし同軸の切り口は芯線と網線がむき出しであり、屋外使用の場合は湿度で漏電が起きるかもしれません。防湿対策として切り口にライターの火で溶かした3D2V芯線のポリエチレンを押し付けて固着しました。

◆給電点インピーダンス計算(2021/4/23)

トランスのインピーダンスは巻数比の2乗に比例します。L1は7回巻きで、タップ位置はコールド側から1.5回のところです。

C点のインピーダンスを50Ωとすると、A点のインピーダンスZaは

Za=7^2/1.5^2×50=1089Ω となります。 ( ^ は2乗の意味です)

ツエップ型アンテナの給電点インピーダンスは数KΩと言いますから、こんなものなのでしょうね。

◆製作する(2021/4/30)

  1. コネクタはMP5(M型オス 5D2V用)を使います。
  2. ボビンとしてグラスファイバーのパイプ(外径9mm×内径6mm×長さ45mm)を使い、先端の12mmがコネクタに入るようφ8.5まで削りました。
  3. アンテナ部分はφ6×1000mmのアルミパイプを使いますが、補強のためφ5×30mmのアルミパイプを末端の内部に挿入しました。
  4. 下の画像のようにM型コネクタとアルミパイプにはM2のタップでネジ穴を切りました。
  5. 使うビスは真鍮製ではアルミとの接触部で電解腐食があるためステンレスとします。
  6. コイルはφ0.8のスズメッキ線を7回スペース巻きし、M2のビスで固定したラグに半田付けしました。
  7. ボビン両端の挿入部はエポキシ2液混合タイプの接着剤で固定します。

SWRの調整(2021/4/30)

  1. コイルと並列に6PFのセラミックトリマを接続しSWRが1.0に近くなるよう調整をします。
  2. トリマを外して容量計で容量を測定しますが、容量計が無ければトリマの角度からおおよその容量を推定し、それに見合った同軸を切ります。仮に4PFであれば40mm+αとしてください。
  3. トリマを外したところに同軸を半田付けします。
  4. 再度SWRを測定し、同軸を1mm単位で切り詰めてSWRが1.0に近くなるようにします。この場合は44mmでSWRは1.1した。

 SWR調整のため6PFのセラミックトリマを使用

 セラミックトリマを同軸0.8D2V(44mm長)に置き換える

 タップ位置(写真を撮り忘れたので144ZEP2の画像を流用)

仕上げ(2021/4/30)

  1. 熱収縮チューブでコイル全体を覆って固定します。
  2. 給電線の先端にMPコネクタが付いており、それに合わせるため、中継コネクタとしてMA−JJを使います。
  3. 自己融着テープでコネクタからコイル部分までを巻いて保護します。自己融着なのでテープが重なった箇所は一体化しているため隙間は無いはずですが、下側のMA−JJ側から巻いてアルミパイプ側で終わるようにし、テープの重なった部分から水が入りにくいようにします。
  4. アンテナの先端部の防水対策はパイプの中にバスボンドを詰め、その上から6mm用端末保護キャップ(ホームセンターのネジ売場にあります)を被せました。

 熱収縮チューブで固定・保護

 自己融着テープで全体を保護する(MP−5にMA−JJを接続)

 アンテナ先端部にバスボンドを詰め、その上から端末保護キャップを被せる

◆内部構造(2021/5/7)

◆電圧分布(2021/5/7)
アンテナからはどのように電波が出ているのでしょう。図のような高周波電圧計を作り、アンテナに沿って上下に移動しながらメータの振れを図に点線で書いてみました。エレメントの上端部と下端部に山があり、中央部に谷があります。

アンテナの設置(2021/5/7)

  1. 13年使ってきた144/430共用GPをおろし、本アンテナに変更しました。ラジアルが無い分、見た目はスッキリしています。
  2. 給電部はインピーダンスが高いため建物からは離すことが必要で、私の場合は目測ですが木造家屋の屋根からは1m(1/2λ)ほど離れています。
  3. アンテナ直下にSWR計を接続した時のSWRは1.1でした。
  4. アンテナからシャックまでは5DFBを9mほど、M−BNC変換コネクタを介し、3D2Vを560mmでSWRを測定したところ、144.200MHzにおいてSWR1.5でした。
  5. 560mmの3D2Vを270mmのものに交換するとSWRは1.1になったので、同軸の長さには注意が必要です。

 

使ってみた感じ(2021/5/7)
交換する前がアローラインタイプのGPであったため、アンテナのゲインとしては変わりないと思いますが、給電点の高さは同じでも先端部分は1/4λ高くなっており、いつも聞いている局の信号が若干強くなったかとの印象です。

<完了>


参考文献

  1. アンテナ製作マニュアル 電波新聞社
  2. アンテナ・ハンドブック CQ出版社
  3. アマチュアのアンテナ設計 岡本次雄著 CQ出版社
  4. 平河ヒューテック株式会社資料