144MHz 2段電圧給電アンテナ                   戻る

◆1段から2段へ(2021/6/25)
給電方法の違う2種類の電圧給電アンテナを作りましたが、もう少しゲインのあるアンテナが欲しくなります。下の図は1段と2段の垂直面指向性を現していますが、2段にすることで水平方向への放射が3dBほど増え、これは電力比で2倍に相当します。 計算式では 10log(2/1)=3dB ですね。

  (*2)
(左)1段の垂直面指向性 (右)2段の垂直面指向性

◆半波長迂回路(2021/6/25)
コーリニアアンテナではλ/2ごとに電流を同相に揃えるため、間に位相反転用のλ/2スタブ(半波長迂回路)を入れますが、製作記事ではヘアピン状のものを多くみかけます。しかし144MHzの場合は510mm長の折り返しスタブを丸めても直径170mmになり、風雨にさらされても形状変化を最小にするため、どの様にしっかり作るのかが課題でしょう。そんなとき資料を探していると「アンテナ工学ハンドブック」にフランクリンアンテナという項目があり、位相反転用の半波長迂回路の代わりにコイルを使っている図を見つけました。しかし
「λ/2相当」と書いてあるだけなので、「コイルとして何回巻けば良いのか」から実験のスタートです。

  (*1 P140 フランクリンアンテナ)

◆λ/2スタブのインダクタンスは?(2021/6/25)
スタブとは「切り株」のことで、垂直のアンテナから横に飛び出している様子が語源とのことです。さてλ/2スタブのインダクタンスが判ればそれ相当のコイルを巻けば良いことになるため、測定してみました。

  1. 1020mm(λ/2 短縮率98%)のビニール線をLCFメータ(秋月のキット)にて @スタブのように折り返す Aループ状にする でインダクタンスを測定しました。
  2. @は0.8μH Aは1.4μH と形状の違いによってインダクタンスが異なりました。
  3. 空芯コイルの計算式から 0.9銅線を内径12.5mmにて @10回巻 15mm長で 0.85μH、A16回巻 25mm長で 1.5μHになります。

 折り返した1020mm長ビニール線のインダクタンスは0.8μHだが、ループ状にすると1.4μHになる

◆2段アンテナの実験(2021/7/2)
2段目コイルL2の巻き数におおよその目途がついたので実験に入ります。

  1. 1段目を作りC1を調整するとSWR1.05になりました。
  2. L2として10回巻きを作り、1段目の先に2段目を接続するとSWRは1.5でした。
  3. 試しにL2の中にバーアンテナのコアを入れたところ、SWRは変化し1.0近くまで落ちました。L2の巻き数(インダクタンス)不足と考えられます。
  4. ちなみに真鍮棒を入れるとインダクタンスを減らす事が出来ます。(フェライトコアほど大きな変化はありませんが)
  5. L2を16回巻(L=25mm)に交換し、ピッチを調整したところSWRは1.1まで落ちました。
  6. 16回巻きコイルのインダクタンスを測ったところ1.5μHでした。

上記実験はエレメントとしてビニール線を使っていますが、アルミパイプにすれば値は変わると思います。

 

 空芯コイルにフェライトコアを入れるとインダクタンスを増やすことができるため、コイルの巻き数が不足しているかどうかの判断が出来る

エレメントからの輻射(2021/7/2)

  1. どのように電波が出ているかを調べるため、ビジュアル電界強度計をエレメントから10数cm離し、上下に移動してLEDを観察します。
  2. 下図の点線が電圧分布で、エレメントからの電波輻射がLEDの光りかたによって分かります。
  3. L2の位相反転コイルが働いて、上下エレメント共に電波の出ていることが目視できました。

  (左)電圧分布の測定 (右)ビジュアル電界強度計

◆試作してみる(2021/7/9)

  1. 手持ちのアルミパイプを継ぎ足し、ボビンやコネクタなどを組み合わせて試作品を作ってみました。
  2. L1の巻き数は144ZEP4の実績から4回巻きにしています。
  3. 全長は2m以上になり木造家屋2階の天井からつりさげての測定ですが、1段目はL1のピッチ調整でSWR1.1まで下がりました。
  4. 2段目をつないでL2のピッチを調整したところSWRは1.2になりました。

 L1コイルと基部

 L2コイル

製作は保留(2021/7/9)
144MHz2段電圧給電アンテナの質量は120gほどなので重さ的な問題はありませんが、風が強い日や更に台風となると支柱から含めた構造的な強度が気になります。2018年の台風21号で自宅の屋根が被害を受けたこともあり、その点は慎重にならざるを得ません。実験及び試作でデータ取りはできたので、現在使用中の1段電圧給電で台風の時期を経験してからとし、実機としての製作は一旦保留とします。

<保留>


参考文献(*印)

  1. アンテナ工学ハンドブック 電子通信学会編 オーム社
  2. 図解 やさしいアンテナ入門 CQ ham radio 2006年 12月号付録
  3. 月刊FBニュース 第七回 V/UHF3バンドアンテナ解体新書