430MHz3段グランドプレーン ホームに戻る
◆はじめに(2024/4/26)
垂直アンテナは段数を重ねることによって偏波面が上下につぶれ、高利得アンテナとなって水平方向への輻射が強くなります。これまで430MHz2段GPアンテナや430MHz2段電圧給電アンテナを作ってきましたが、この2つを融合した全長1m弱のアンテナを作ってみようと思います。
高利得アンテナの輻射(*1)
◆3段GPアンテナの構想(2024/4/26)
1/4λGPの上に位相反転コイルを付けた1/2λのエレメントを2段重ねるというイメージです。アンテナ作りは原理的に成立しても構造的に成立するかどうかが課題です。市販部品をどう組み合わせ、どのように加工して作るかがポイントです。
(左)位相反転コイル(*2) (右)3段GPアンテナのイメージ
1段目
いきなり3段全てを作るとトラブルがあった時に原因の究明が困難になるため、3段階に分け下の段から順番に作っていきます。
◆1段目グランドプレーン部(2024/4/26)
- 設計周波数を433MHzとすると、波長短縮率は98%として433MHzにおける1/4λのエレメント長は 300/433/4×0.98
= 170mm となります。
- ラジアルはφ3の真鍮棒を180mmに切ったものを3本作り、M型ジャックの六角ナットに3か所半田付けしました。(半田付け部長さ=10mm)
- 実験段階ではラジエータの長さが調整できるようφ5のロッドアンテナを使い、長さが決まればアルミパイプに置き換えます。
- 給電点のインピーダンスが50Ωになるよう、ラジエータとラジアルの角度は約100度にしました。
(左)六角ナットに真鍮棒3本を半田付け (右)ラジエータのロッドアンテナを取付
◆SWRの測定(2024/4/26)
- 430MHzトランシーバ、SWR計、アンテナを図のように接続しSWRを測定します。アイコムのIC351は1980年に購入したものですが、余り使うことが無いまま押し入れに眠っていたもので、すでに内蔵電源は機能せず、外部電源を使っての登場です。SWR計も同じような時期に購入したハムセンターというメーカーの製品で、10W程のパワーが無いとフルスケールまで針が振れないため、FT817の5Wではパワー不足となるので、IC351に出て来てもらいました。
- ラジエータ長170mmにてSWRは下図のとおりですが、実際の製作ではラジエータ根元部補強でM型プラグのキャップを使用するため、その時のSWRを測定すると、同調周波数は5MHz程上がる事が判りました。
- キャップをした状態で同調周波数を433MHzまで下げるには3mm程エレメントを伸ばすことが必要になり、ラジエータ長は173mmとします。(SWR1.1以下での話であり、殆ど問題のない範囲ではあります)
IC351とPM-400
(左)キャップ無し (中)キャップあり (右)キャップの有無によるSWRの比較
◆アルミパイプに置き換え(2024/4/26)
- 実際のエレメントとして1段目はφ7×163mmのアルミパイプを使います。
- 根元部にはM3×15mmの六角支柱をパイプの内径に押し込みます。また直径合わせのためφ8×40mmのアルミパイプをφ7パイプの上に被せます。
- 先端部は位相反転コイルのφ10×50mmボビンを挿入するため、φ6×35mmのアルミパイプを20mm差し込みます。
- キャップとエレメントの隙間を埋めるため、φ12.5×φ8×10mmのブッシュをグラスファイバーパイプで作りました。
- SWRは433MHzにて1.02でした。
1/4λGPのエレメント
給電部の部品
組み立てた給電部
2段目
◆1/2λエレメントと位相反転コイル(2024/5/3)
- 1/2λのエレメント長は 300/433/2×0.98=340mm とし、φ6のアルミパイプを使います。ただし340mmはコイルが取りつく位置であり、実際のパイプ長さは両端に5mmの余裕を持った350mmです。
- 位相反転コイルは430MHz2段電圧給電アンテナの実験結果から、0.8UEW 内径φ10×9回巻き とします。
- エレメントにM2のタップでネジを切り、ビスとラグを使ってコイルに接続し、反対側はM2のナットで固定します。
- コイルはボビンに巻きますが、調整時は外側に出しておき、調整が終わればボビンに巻き付けても良いでしょう。
- 430MHz〜440MHzまで周波数を変え、ボビンの外側でコイルのピッチを調整したところ、低い側でSWRが下がりました。
- 巻き数を1回減らして8回巻にし、ボビンに巻きなおしてピッチを調整し、SWRは下図のように1.1以下になりました。
(左)位相反転コイル<調整のため外側に出した> (中)ピッチを調整 (右)巻き数を減らしてボビンに巻く
3段目
◆1/2λエレメントと位相反転コイル(2024/5/3)
- エレメントの太さは下側から徐々に細くするためφ5×345mmのアルミパイプを使いました。
- エレメントの先端にはバスボンドを充填し、保護キャップを被せます。
- 2段に比べて帯域は狭くなったものの、SWRは帯域10MHzにおいて1.2以下であり、安心して使える結果になりました。
◆全体の構造(2024/5/3)
- 1段目のGPから段階的に作ったアンテナの全体構造をまとめてみました。
- 段数が増えて長くなってくると基部の構造をしっかりとしたものにする必要があり、今回はM型ジャックにM型プラグのキャップを使い、絶縁用のブッシュはグラスファイバーのパイプを加工して作りました。
- 自作の基本は「いかにして市販の部材を探し、加工し、組み合わせるか」です。パーツ店、ホームセンター、100均、釣り道具店、手芸品店、園芸品店など、普段から「何かに使えないか」という目で見ておくことが必要です。
- 下の段から上へ行くほどエレメントの径を細くしましたが、これはこれまで作ってきたアンテナの残骸を有効活用するためであり、上から下まで同一径で通すという考えでも一向にかまいません。エレメント長は全体で900mm程なので、1m切りのパイプを買えば無駄が少ないでしょう。
アンテナのまとめ
◆各部の固定方法(2024/5/10)
- アルミパイプとボビンなどの接合部には「バスボンドQ」を使い、水が侵入しないようにします。
- コイルにはφ12の熱収縮チューブを被せ、ライターの火で加熱して固定し、その上から自己融着テープを巻きます。
- 熱収縮チューブを被せることによるSWRの変化は殆どありませんが、その上から自己融着テープを巻くと同調周波数が5MHz程下がるため、コイルの巻き数を8回から7.5回に減らしました。
- また、438MHzあたりでSWRが最低になるようにコイルのピッチを調整し、その後にテープを巻くと433MHzあたりにSWR最低点が移動します。
- なお、自己融着テープは下側から巻き始め、少しずつ引っ張って伸ばしながら、下側のテープに半分ほど被せて巻いて行くと雨水が侵入しにくくなります。
(左)接合部はバスボンドを充填 (中)熱収縮チューブで固定 (右)自己融着テープを巻く
◆輻射パターン(2024/5/10)
さてアンテナからはどのように電波が出ているのでしょう。430MHzに同調させたヘアピンコイルの電界強度計を作り、アンテナに沿って上下に移動しながらメータの振れを図に点線で書いてみました。
◆屋外にアンテナを設置する(2024/5/10)
- SWR計から給電部までの同軸長が10m近くあるため正しい測定方法ではありませんが、いびつな特性ながらもSWR1.4以内に収まりました。
- 利得については測定する手段が無いのでなんとも言えませんが、1/2λを2つ重ねるとダイポール比で3dBとのことなので、3つ重ねれば5〜6dB位にならないかと期待しています。
- 真鍮のラジアル3本には屋外用の黒いペイントを塗りました。
屋外に出したアンテナに同軸9.9mをつなぎ室内でSWR測定した結果
<完了>
参考文献(*印)
- やさしいアンテナ入門 CQ誌2006年12月号付録
- アンテナ工学ハンドブック 電子通信学会編 オーム社