スプリアス対策            ホームに戻る

◆フィルタの種類と機能(2025/6/13)
スプリアスの出方には幾つかのパターンがあり、@主信号の近くに現れるのか、A上側の周波数に幾つかあるのか、B1箇所だけなのか、まず見極めることが必要で、その現れ方によって必要なフィルタを選びます。1つで済む場合もあれば、複数を組み合わせるか、あるいは何段も重ねないと必要な減衰量を確保できない場合もあります。

  1. LPF(ローパスフィルタ)は設定周波数より下の周波数は通しますが、上の周波数は減衰するため、主信号より上にいくつも高調波が出ている場合に有効です。(*1)
  2. BPF(バンドパスフィルタ)は設定周波数を通すため、上下に不要な成分がある時に使います。(*2)
  3. トラップは設定周波数を減衰させることが出来るため、狙い撃ちしたいときに有効です。(*3)
  4. 減衰極付きLPFはトラップと同じように特定の周波数を減衰するもので、多段LPFの中に入れて使います。(*4)

◆対策回路の検討(2025/6/13)
ここでは
144H5機についてスプリアス対策の実験を進めます。

  1. 144H5機では下の増幅回路の入力信号そのものに近傍スプリアスが含まれており、それを取り除く事が第1段階であるため入力段にBPF(T型フィルタ)を追加します。
  2. 次に高調波を抑えるために出力段にLPF(定K型)を追加します。
  3. 最終的にBPF(元から入っていたもの)を通して、きれいな信号を作ります。

回路実験(2025/6/13)
15P平ラグ板の上に実験回路を組みました。信号源は144H5機の主基板にある2SK439の出力信号(1mW)を使います。

 
(左)実験風景 (右)平ラグ板に組んだ実験回路

対策回路の効果(2025/6/13)
スプリアス領域における正式な測定方法は、「1500Hzの変調をかけSSBの飽和する電力を確定し、その80%になった変調入力レベルと同じ疑似音声入力とする」とのことですが、以下の測定は1000Hzの正弦波による簡易的な測定です。

  1. @のように入力信号そのものにスプリアスが含まれていました。
  2. Aは上の回路の追加BPFとLPFがない場合のANT端子の出力です。
  3. BではLPFを追加することで2倍波(288MHz)が抑圧されました。
  4. CではBPFを追加することで主信号(144MHz)周りのスプリアスが抑えられ、60dBc近い値と思います。

 @スプリアスが含まれた入力信号

 A追加のBPFとLPFが無い場合の出力信号

 BLPFを追加すると2倍波が抑圧された

 C更にBPFの追加で近傍のスプリアスが抑えられた

最後に(2025/6/13)
スペアナを持っていなかった時は、トランシーバーの信号を受信機でモニタしながら、歪が無いか、音に濁りは無いか、ラジオやテレビに雑音は入らないかなどを調べ、変調音が素直であればこれで良しと判断していました。しかし
tinySAというスペアナを手にすると、これまで見えなかったものが見えるようになったため、最初は自作リグの不出来さにため息をつきましたが、時間が経つとその気持ちが緩み、むしろスプリアス対策自体が興味の対象となり、それを実行することが楽しみになってきました。「見える化」して実態をつかむ → 原因を調べる → 対策を考える → 実行する → 問題が解決する。これは現役時代にやっていた"KAIZEN"そのものですね。

<完了>


参考文献(*印)

  1. 高周波回路の設計・製作 鈴木憲次著 CQ出版社
  2. FCZ誌 No.73 1981年5月号 FCZ研究所
  3. 高周波回路設計ノウハウ 吉田武著 CQ出版社
  4. トロイダルコア活用百科 山村英穂著 CQ出版社
  5. 疑似音声の音