430MHzトランスバータの製作(430T1)         ホームに戻る

はじめに(2024/3/29)
430MHzトランスバータを、送受別々の基板にベタアースと空中配線で試作を進めました。FT817と比較すれば受信感度は若干悪いものの実際のQSOをワッチできたことと、送信出力は最大150mWまで出て、モニタした範囲ではきれいな変調であることは確認できたので、送信部と受信部を1枚の基板にトランスバータとしてまとめようと思います。プリント基板化すればチップコンデンサが使えるため高周波的には有利ですが、試作段階で回路を固定するのは早すぎるため、試作編と同じ空中配線とし自由度を残しておきます。

部品配置の検討(2024/3/29)

  1. 受信部と送信部の部品配置は試作編とほぼ同じですが、送受の電源切替回路とアンテナ切替リレーを追加します。
  2. リレーはオムロンのG5Y-154Pという高周波リレーで、現在は生産中止となっていますが、サトー電気ではオムロンやパナソニックの高周波リレーを扱っていますので、用途に応じたものを選んでください。
  3. 基板のサイズは114×80mmで、下の画像の緑色の点線はシールド板を表しています。
  4. リレーや7Kコイルは端子部を上側にして取り付けます。
  5. DBM、送受電源切替、半固定抵抗を使う部分に関しては別基板で回路を組み、両面テープで貼りつけます。

 部品配置

◆配線を進める(2024/3/29)

  1. 部品配置は上図のとおりですが、配線経路は試作機を見ながら都度決めて行きます。
  2. シールド板を先に取り付けてしまうと半田付けが難しくなるため、全ての部品を取り付けた後に、シールド板を取り付けます。
  3. シールド板を取りつける場所は細いマジックインキで線を引いておき、その線を避ける位置に部品を取り付けます。
  4. 線の上を部品が通る場合は、シールド板の方を切り欠きます。
  5. 銅箔面がグランドのため、アースの配線をする場合は熱が逃げやすいので、60W程度の半田ごてが必要です。
  6. リレーは裏向き(端子側を上側)に置き、0.3mm厚の真鍮板を幅6mmの帯状に切ったもので巻き、基板に半田付けしました。リレーのアース端子を真鍮板に接続することで、アイソレーションの向上を目指します。
  7. 送受切替部は20×10mmの別基板に組み、両面テープで貼り付けました。

 受信部の配線を進める

  (左)リレーは真鍮板で巻いて取り付け (右)送受切替部は別基板に組む

 部品取り付け完了

<続く>


◆シールド板の取り付け(2024/4/5)

  1. VHFのコイルは7Kのケースに入っているため不要な結合はありませんが、UHFのコイルは空芯であり入出力で結合してしまうと発振してしまうため、間にシールド板を入れることが必要です。
  2. シールド板としては0.3mmの真鍮板を幅16mmの帯状に切ったものを使います。
  3. 試作機を作って判ったことの1つに、銅板は熱伝導が良すぎて半田ごての熱を持って行かれます。そのため熱伝導率が銅に比べて1/3程度の真鍮を使用することにしました。
  4. 配線や段間の結合コンデンサを跨ぐよう、シールド板に切り欠きを設けます。
  5. シールド板を支えるため基板に間隔をおいて1mmの穴をあけ、そこにL型に曲げた0.9mmの真鍮線(ダイソーで購入)を両面基板の裏面に半田付けして支柱とし、そこにシールド板を取りつけます。
  6. シールド板の寸法は実寸を測って図面を書き、その寸法に従って真鍮板を切り取ります。
  7. 切り取った真鍮板はバリがあるため、怪我をしないよう細かいやすりで角を滑らかにしておきましょう。

 
(左)基板上に立てた15本の支柱 (右)両面基板の裏面にL型に曲げた支柱を半田付け

 
(左)シールド板の図面 (右)切り取った真鍮板

 支柱にシールド板を半田付け(仮止め)

◆受信部素子の変更(2024/4/12)

  1. 動作確認のため基板をアルミ板に固定し、入出力端子としてのBNCコネクタを取りつけ、まずは受信部から調整を始めます。
  2. 高周波増幅と混合に使っている3SK78はUHFチューナー用の素子ですが、使用方法が悪いのか期待したほどの性能が出ず、FT817と比較すると随分見劣りがします。
  3. 試作編で感度アップのため混合の後にアンプを1段追加すると、信号は強くなったもののノイズも増えたため結局元に戻して終わりました。
  4. 10年前に作った2SC3355(fT=6500MHz)使用の430MHzクリコンがあったので、試しに親機に接続してみたところ意外と感度が良く、信号が浮き上がって聞こえました。
  5. 3エリアでは毎日19:30から430.290MHz、また20:30からは430.170MHzにてCQを出し数局がレポート交換をしています。その信号を受信しながらFT817と比較してみると、多少は劣るものの3SK78よりは随分感度が向上し、実用レベルに達したと思いました。
  6. そのため3SK78を2SC3355に変更しました。プリント基板では難しい変更作業も空中配線ならばなんとか可能です

 
(左)基板をアルミ板に固定しBNCコネクタを取りつける (右)高周波増幅と混合を2SC3355に変更

◆送信部の調整(2024/4/19)

  1. 2SK125パラのドレイン側トリマを回すと動作が不安定になる現象があり、ゲートのアースを最短でできるよう銅板片をもう1枚追加した。
  2. 動作は安定してきたが出力が30mWしか出なかったので、2SC3355のエミッタ抵抗100Ωを47Ωに変更して出力は70mWになった。
  3. 2SC3355コレクタのタップ位置を5mmほどホット側にずらして出力は100mWになった。試作機と同じように作っていても物理的な差で違いが出るようです。
  4. 送信部の調整が終わったので、仮止めしていたシールド板を正式に半田付けします。

 @は元々あったアース銅板、Aは追加したアース銅板

◆ケースに取り付ける(2024/4/19)

  1. トランスバータのケースからサーキットハウスCV607Bの基板2枚を外し、今回製作の基板を取り付けました。
  2. 受信部と送信部は再度調整します。
  3. 46MHzSSBジェネレータはVXO用水晶や同調コンデンサを変更し、58MHz用にします。

 
(左)トランスバータ内部の様子 (右)親機の上にトランスバータと周波数カウンタを置く

◆試運転(2024/4/19)
430MHzSSBは出ている局が少ないものの、土日には移動局の声を聞くことができることもあるので、J-クラスタで確認しても良いでしょう。日曜日のある日430MHz2段GPと組み合わせ、大阪市阿倍野区の「あべのハルカス」移動局(地上高300m、直線距離で20km)と59でQSO出来ました。電波が飛んで行っていると実感できた瞬間です。

<完了>


参考文献

  1. 50→430MHzトランスバータキット CV607B回路図 サーキットハウス社
  2. アマチュアのV・UHF技術 CQ出版社
  3. HAM Journal 1991年4月号 50→430MHzトランスバータの製作 JA6RWM 上村誠
  4. HAM Journal 1991年4月号 430→144MHzクリスタルコンバータの製作 JA6WVR 坂梨健次郎
  5. 高周波回路の設計・製作 鈴木憲次著 CQ出版社
  6. 高周波回路設計ノウハウ 吉田武著 CQ出版社
  7. ダイナミック・ハムシリーズ リニアアンプスタイルブック CQ出版社