スプリアス領域における不要発射の測定       ホームに戻る

新スプリアス規格(2025/8/1)
新スプリアス規格では不要発射として @帯域外領域 Aスプリアス領域 における測定が求められています。このページではQRPのSSBトランシーバを対象に、現時点で私が理解している範囲で測定を進めてみます。また理解不足の点があれば今後修正していきます。

 JARDの資料

無線設備規則 第一章 第二節 第七条 別表第三号(令和5年12月22日施行) から抜粋

今回の測定は7MHzSSBトランシーバーを対象とし、下表の赤字部が該当します。

基本周波数帯、モード

空中線電力

帯域外領域

スプリアス領域

BN(必要周波数帯)

±2.5BN

30MHz以下、SSB(J3E)
(41項にアマチュア用の例外規定あり)

1W〜5W

50mW以下かつ40dB

50μW以下

4kHz未満

±10kHz

1W以下

100μW以下

5054MHzSSB(J3E)

1W50W

1mW以下かつ60dB

60dB

25kHz未満

±62.5kHz

1W以下

100μW以下

50μW以下

144〜146MHz、SSB(J3E)

1W〜50W

1mW以下かつ60dB

60dB

1W以下

100μW以下

50μW以下

430440MHzSSB(J3E)
(10
項にアマチュア用の例外規定あり)

1W50W

1mW以下かつ60dB

60dB

1W以下

100μW以下

50μW以下

音源の準備(2025/8/1)
スプリアス領域における測定方法は、「1500Hzの変調をかけSSBの飽和する電力を確定し、その80%になった変調入力レベルと同じ疑似音声入力とする」とのことで、1500Hzの正弦波と疑似音声の音源が必要です。疑似音声発生器を作るのも興味深いですが、CQ出版のサイトからダウンロードできるので、まずはそれを使ってみましょう。また疑似音声を発生してくれるサイトもあります。

  1. CQ出版社のサイトに入り、2017年6月号の疑似音声発生器の製作から音源をパソコンにダウンロードする。
  2. ZIPファイルを解凍すると「試験用音源」のフォルダ内に @20PN(M)131kHz_疑似音声_0dB A1000Hz_0dB B1500Hz_0dB C1000Hz_-10dB が現れます。それぞれ33MB程の容量で、クリックすると発生音を聞くことが出来ます。
  3. 「20PN(M)131kHz_疑似音声_0dB」をクリックすると疑似音声(FM受信機でスケルチを外した時のような”ザー”という音)が流れます。
  4. 「1500Hz_0dB」をクリックすると1500Hzの”ピー”という音が流れます。

tinySA Ultraの測定範囲を拡大(2025/8/1)

  1. 7MHzにおいては下表のように1GHzまで測定する必要があります。
  2. tinySA Ultraの測定周波数は通常800MHzまでですが、ウルトラモードにすると測定範囲を5.3GHzまで拡大することが出来ます。
  3. 設定順 : 画面をタッチ→CONFIG→MORE→ENABLE ULTRA→4321
  4. 測定周波数範囲は 9kHz〜1GHz に設定します。

送信周波数の範囲

測定周波数範囲

9kHz〜100MHz

9kHz〜1GHz

100MHz〜300MHz

9kHz〜第10高調波

300MHz600MHz

30MHz3GHz

600MHz5.2GHz

30MHz〜第5高調波

スプリアス領域の測定(2025/8/1)
測定対象として7MHzSSBトランシーバの
7H5機を使い、測定方法はJARDのスプリアスに関する資料を参考にしています。パソコンのイヤホン端子とトランシーバを結ぶシールド線を準備しますが、シールド線の途中に5KΩ程度のVRを入れておくと音量を調整する時に便利です。

  1. パソコン(1500Hz)→7H5機→パワー計の順に接続する。
  2. パソコン(1500Hz)の音を大きくし、パワー計が飽和した電力の80%程(≒2W)になるよう音を絞り、低周波電圧計(ミリバル)の値を読む。(5mVでした)
  3. パソコン(疑似音声)→7H5機→パワー計の順に接続し、1500Hzの時と同じ低周波電圧(5mV)になるよう疑似音声の音量を調整します。なお疑似音声の”ザー”という音は音量が一定ではなく電圧計の針は細かく振れています。また出力は1500Hz時に比べ1/3程(0.7W)に減りました。
  4. パソコン(疑似音声)→7H5機→BNC/SMA変換コネクタ→30dBアッテネータ→スペアナ の順に接続する。
  5. スプリアスとしては2Tの476.6MHzが-59.7dBm(1.07μW)で観測できましたが、現れる周波数はスキャンの都度変化しており、倍数波や通り抜けではなく瞬間的に現れる信号(雑音?)をスプリアスと呼んで良いのかは疑問です。
  6. なお、スプリアス領域においてdB表示でスプリアス強度を求められる場合は、1500Hz変調時の飽和電力が基準になります。
  7. 疑似音声は音量が細かく変動して安定したデータが取れないため、数個のデータを取って、その中で一番良いもの(チャンピオンデータ)を利用しています。

測定環境

スプリアス

周波数

電波形式

飽和電力

周波数範囲

アッテネータ

周波数

強度

規格限度値

判定

7.1MHz

J3E

2.5W(34dBm)

9kHz1GHz

30dB

476.6MHz

1.07μW

50μW以下

適合

 
(左)疑似音声で変調時の波形(9kHz〜1GHz) (右)製作したパソコンとトランシーバを結ぶVR付きケーブル

 測定の様子

<完了>


参考資料

  1. 総務省無線設備規則
  2. JARDのスプリアスに関する資料
  3. 疑似音声発生器製作記事
  4. CQ出版社 ダウンロードサイト 疑似音声発生器の製作
  5. ITU-T G.277準拠疑似音声発生サイト