430MHzSSBハンディトランシーバ(430H1)         ホームに戻る

はじめに(2025/3/21)
今年の1月にtinySA Ultraというスペアナを購入し、これまでに作ってきた自作機のスプリアスを測定してみました。その結果、新スプリアス規格内に収まるものもあれば、怪しいものもあり、改めてリグ作りの難しさを痛感しました。しかし、これまで見えなかったものが見えるようになったため、不十分な性能のリグについては作り直そうとの思いが強くなり、今後の方向性が見えてきました。

 tinySA Ultra

新スプリアス規格と自作リグ(2025/3/21)

  1. これまで作ってきたリグのスプリアスを測定すると40〜50dBでした。1Wを超える機器に求められる60dBとか70dBといった数値は、逓倍と周波数変換をして目的周波数を作る方法では各所にシールドやフィルタを入れることが必要になり、気楽にリグ作りを楽しもうという自作派にとっては高いハードルだと感じます。
  2. しかし総務省の無線設備規則によれば、1W以下であればdBではなくμWであるため、QRP機であれば実現可能な数値ではないかと思い直しました。
  3. ただ変調をかけた場合の帯域外領域における測定方法は中々難しそうで、まだそこまでは理解も準備も進んでいません。
  4. なお当ページに記載している内容は現時点での私の解釈レベルであり、理解不足の点があれば今後修正していきますので、ご容赦ください。

無線設備規則 第一章 第二節 第七条 別表第三号(令和5年12月22日施行) から抜粋

基本周波数帯

空中線電力

帯域外領域

スプリアス領域

BN

±2.5BN

30MHz以下

1W〜5W

50dB

50dB

4kHz

±10kHz

1W以下

1mW以下

50μW以下

50〜54MHz

1W〜50W

1mW以下かつ60dB

60dB

25kHz

±100kHz

1W以下

100μW以下

50μW以下

144〜146MHz

1W〜50W

1mW以下かつ60dB

60dB

1W以下

100μW以下

50μW以下

430〜440MHz

1W〜25W

2.5μW以下

2.5μW以下

1W以下

25μW以下

25μW以下

上表で赤字の1W以下が25μWなのに、青字の1W〜25Wが2.5μWというのがどうも解せませんが、間違いではありません。(QRPerを優遇してくれているのかな??)

 総務省の資料から引用

◆スペアナで実測(2025/3/21)

  1. 430MHzSSB100mWの430S1機をスペアナで実測してみました。
  2. ジェネレータ部では3逓倍したVXOの44MHzと局発14.313MHzを合成して58MHzを作り、トランスバータ部では41.333MHzを9逓倍して372MHzを作り、それらをDBMで合成して430MHzを得ています。
  3. 複同調を各所に入れて必要な周波数成分を取り出すようにしていますが、それでも不要成分を除ききれずアンテナ端子には372MHzが-46dBで現れています。
  4. ただし主信号が100mWであるため、その-46dBであれば1/40,000の2.5μWとなり、上表の規格内に入ります。仮に調整が甘くて40dBになったとしてもスプリアスは10μWであり、これでもセーフです。

 430S1機のスペアナ画面

◆自作機のJARD保証認定(2025/3/21)
自作機のJARD保証認定に関する調査ついては、JE1UCI冨川さんが「JARL QRP CLUB会報 2024102日発行vol.67-03に投稿されており、要点としては

  1. 自分で純粋に設計製作した送信機については、申請書に「第〇送信機は、平成17年に規定された新スプリアス規格に基づき設計・製作した」と記入すれば良い。
  2. 測定するスペアナはtinySAでも良い。
  3. JARDから問合せがあれば、スペアナの画面を提出できるようにしておく。

雑誌の製作記事を見て作る場合、出力1W以下の解釈、スプリアス領域の不要発射の測定 など、詳しい内容を知りたい方はJARL QRP CLUBに入会していただき会報(会員限定版)をご覧ください。入会金なし、年会費は無料です。

100mWのハンディ機(2025/3/21)
QRP機にするとスプリアス的には有利ですが、電波の届く範囲は限られてきます。そのためゲインのあるビームアンテナを使うか、移動運用で山に登れば交信範囲はぐんと広がることから、100mWのハンディ機製作を今回の課題としました。


設計編

 これまで作ってきた単3×8本使用のハンディトランシーバ

特徴(2025/3/28)

  1. コンパクトな430MHzSSBトランシーバーで、アンテナとマイクを接続すれば即運用できる。
  2. 10回転ヘリポットによる容易な同調。
  3. スキャン回路により180kHzを5秒で自動ワッチ。誰かが出ていればビート音で気付く事ができる。
  4. 電源電圧が8V以下になるとLEDが点灯し充電のタイミングを知らせてくれる。
  5. ツマミやコネクタ類は全て正面パネルに集約しており操作性が良い。

仕様(2025/3/28)

  1. 周波数 : 430.140〜430.320MHz
  2. 送信出力 : 100mW
  3. モード : SSB
  4. 終段 : 2SC2407
  5. 受信部 : 第1中間周波数=46MHz、第2中間周波数=14.318MHz Wスーパー
  6. サイズ : 幅132×高さ44×奥行155mm(突起部を含まず)
  7. 電源 : 9.6〜11V(単3ニッケル水素8本)
  8. 質量 : 

◆ブロックダイアグラム(2025/3/28)

◆構造を考える(2025/3/28)

  1. 基板はトランスバータ部とSSBジェネレータ部の2枚に分けます。そして残りスペースに電池ボックスを配置しようと思うと、単3×8本のホルダでは余剰スペースが出来てしまうため、6本と2本に分けることにします。
  2. 正面パネルにツマミやコネクタなど全ての機能を集約します。またリグを立てて使うことが前提であり、スピーカーは手前の側面に取り付けます。
  3. アンテナ端子も正面パネルにあるため、2024年8月に製作した電圧給電ロッドアンテナを直に取りつけることが出来ます。また八木等の外部アンテナを取りつけてゲインを稼ぐこともできます。

 正面パネル

 側面図

<続く>


参考文献

  1. アマチュアのV・UHF技術 CQ出版社
  2. 50→430MHzトランスバータキット CV607B回路図 サーキットハウス社
  3. HAM Journal 1991年4月号 50→430MHzトランスバータの製作 JA6RWM 上村誠 CQ出版社
  4. HAM Journal 1991年4月号 430→144MHzクリスタルコンバータの製作 JA6WVR 坂梨健次郎 CQ出版社
  5. 西無線研究所 NTS710回路図
  6. 八重洲無線 FT-790mkU取扱説明書
  7. ダイナミック・ハムシリーズ リニアアンプスタイルブック CQ出版社
  8. 高周波回路設計ノウハウ 吉田武著 CQ出版社
  9. 総務省無線設備規則
  10. JARL QRP CLUB ホームページ
  11. JARDのスプリアスに関する資料