21MHzSSBトランシーバ(21H2) ホームに戻る
◆はじめに(2023/1/13)
2014年に21MHzSSBトランシーバ(21H1)、2022年に21MHz用短縮ホイップと21MHz用アンテナチューナを作りました。21H1機は縦置きでも横置きでも使える構造で、メータも大きくしましたが、その分かさばる点が移動運用には不向きで、もう少し小型のものが欲しいと思っており、春の移動シーズンを前に製作を進めてみようと思います。サイズ的には7H4機と同程度になるでしょう。
(左)21H1機 (中)21MHz短縮ホイップ(全長
1440mm) (右)21MHz用アンテナチューナ
◆回路構成(2023/1/13)
回路構成としては、これまで7MHz〜144MHzで数多くトランシーバを作ってきた実績のある下記ダイアグラムで進めます。
◆仕様(2023/1/13)
- 周波数 : 21.140〜21.270MHz
- 送信出力 : 2W
- 終段 : 2SC1971
- 受信部 : 高1中2シングルスーパー
- 中間周波数 : 12MHz
- 同調方式 : バリキャップと可変抵抗器(主同調+副同調)による
- 電源 : 単3ニッケル水素充電池8本(9.6V)
- 寸法 : 幅134×高さ42×奥行き133mm(突起部を含まず)
- 質量 : 700g
正面パネルのイメージ
◆試作機での回路検討とデータ取り(2023/1/13)
- 試作機は20Pの平ラグ板4枚を使ったもので、これまで色々な周波数で試作機のトランシーバを組んできました。
- ここで回路検討を行い、各部の電圧や電流を測定して回路図に記録しておきます。
- 試作機での検討が終われば、ケース製作や基板設計に移ります。
回路検討のための試作機
◆回路の解説(共通部、送信部、受信部) ← 移動しました(2023/2/10)
基板の製作
◆基板設計(2023/2/10)
- プリント基板は主基板が120×100mm、副基板(電圧降下検出+励振+終段部)は120×37mmの2枚に分けます。
- AR_CADという無料アプリを使って部品のパターンを登録し、その部品を基板上に並べながら配置を決め、部品同志を幅1mmの線でつなぐという作業の繰り返しです。
- 高周波の流れる部分は短く、回路同士が干渉しないように配置を考える、グランド面を広く取るためジャンパ線を多用するなど様々な条件を頭に入れ、密集しすぎた場所は無いか、ガラガラになっている場所は無いか、とバランスよく配置します。
- 回路図とパターン図を印刷して、両方に赤鉛筆で印を入れながらパターンのチェックを行い、ミスがあれば修正して再度チェックします。
(左)主基板 (右)副基板
◆プリント基板の製作(2023/2/10)
基板の製作手順についてはプリント基板のページをご覧ください。今回は21MHzということもあり高周波的に問題が無いため、高価なガラエポではなく紙フェノール基板を採用しました。
@パターン図を裏返して印刷 A表裏両面を透明ビニールテープで補強、あるいはラミネートする Bプリント基板に両面テープで貼り付ける
(左)ドリルで穴をあける (中)LED照明で手元を明るくする (右)太陽光に透かし穴明けモレのチェック
@銅箔の表面をスチールたわしで磨く A指の腹で銅箔面をなぞってバリ(出っ張り)が無いことを確認 B水洗してからシンナーで拭いて表面の脂分を取り除く
◆エッチング(2023/2/17)
- 基板作りの中でエッチングをうまくできるかどうかがポイントになります。
- 特に冬場は冷めやすいため液の温度管理が大事で、湯沸かしポットを横に置いて、赤外線温度計で液の温度を測り、40℃を切り始めたら湯煎している容器に湯を追加します。
- 銅箔が溶けたタイミングで基板を水に入れてエッチングの進行を止めます。
- 水を流しながらスチールたわしでマジックインキを落として水洗し、シンナーで銅箔面の汚れをぬぐいます。
- 最後にフラックスを塗って、乾燥すれば基板の完成です。
パターン描き (左)塗り始め (右)塗り終わり
(左)湯煎してエッチング液が40〜45℃になるようにする (右)水に入れてエッチングを止める
スチールたわしでマジックインキを落とし、シンナーで油分をぬぐい、フラックスを塗る
部品の取り付けと調整
◆コイル巻き(2023/2/24)
基板が出来上がると次はコイル巻きです。これまで作ってきたリグを分解したときに回収したコイルがいくつもあり、新たに2個巻くだけで済みました。ボビンのケースには何回巻きかを書いておくと便利です。
21H2機に使うコイル
◆部品取り付け(2023/2/24)
- 部品取り付けは一気に進めるのではなく、ブロックに分け段階的に動作確認しながら進めます。パターンのミスがあるかもしれないし、部品取付ミスがあるかも知れません。ゆっくりと着実に進めます。
- パターンミスがあればナイフや彫刻刀を使ってランドを切り、あるいはビニール線を使って接続経路を修正します。
- 基板にはφ0.9の銅線をL型に曲げて作った接続ピンを取り付けておくと、外部からの配線をつなぐ端子として、またテストポイントとして使えます。
(左)動作確認をしながら部品取り付けを進める (中)パターンミスは彫刻刀でランドを切って修正 (右)接続ピン
◆試験台による動作確認と調整(2023/2/24)
- トランシーバとして正常に動作するか、予定した出力は出ているかなど、ケースに取り付け配線を終えてしまうと修正作業が困難になるため、その前に試験台に載せて不具合点を洗い出します。
- ラグ板配線の試作機では動作OKでも、プリント基板化すると図面上の回路は同じにもかかわらず高周波的には別物であるため、この作業は必要です。
- 送信部のコイルを調整すると同調のピークで動作が不安定になるため、増幅用2SK241のゲートにQダンプの4.7KΩを追加しました。
- 終段のバイアス電流やコレクタ電流を測定する「電流測定端子」は、電流測定後は半田付けしておきます。
(左)試験台で動作確認 (右)動作安定化のため追加した4.7KΩ
バイアス電流測定後に半田付けした電流測定端子
◆ケースの製作(2023/3/3)
- ケースは1mm厚のアルミ板で作り、正面パネルのみ1.5mm厚とします。
- 各部材を組み合わせる箇所にはマジックインキで「A,B,C,D」と書き込み、更に「上、下、↑」など、組み間違いが無いように印を付けます。
- 使用するネジのサイズはM2ですが、カバーを取りつける箇所はM3で、ナットはカレイナットを使います。
- 穴をあけてから部材を組み立てて、ずれは無いか、直角は出ているかをチェックします。穴の位置がずれていれば細い丸ヤスリで修正し、机に置いたときガタが無いかを確認します。
- 機械加工するわけではないのでミスは発生します。ミスは早めに見つけて対策します。焦りは禁物で、時間をかけ、時々気分転換やストレッチをしましょう。四角い箱を作るのは難しい事なのです。
(左)ケースの部材 (中)組み立てたところ (右)ビスナット部分
◆パネルの加工(2023/3/3)
- 15cmのスケール(物差し)と千枚通しを使ってケガキ線を引き、穴を開ける場所にポンチで印を付けます。
- 穴開けは3o程度の下穴をあけてから、テーパーリーマーで穴を広げる方法もありますが、私の場合は3〜10mmまでのドリルを1mm単位で用意し、マイクジャックの穴は6mm、可変抵抗器の穴は7mmなど部品に対応した穴径を一気に開けています。
- メーターの角穴は9mmの穴をあけてからハンド二ブラで角穴に広げます。そしてメーターがすっぽり収まるようヤスリで穴を仕上げます。
- 丸皿ビスを使う箇所は面取りドリルを使って皿モミ加工をします。
正面パネル
操作用の部品を取り付ける
◆シールの作成(2023/3/3)
- リグの塗装は省略し、文字入れはレタリングではなく、光沢のシール紙に印字したものを切り取って貼り付けます。
- 正面パネルはダイソーで購入した「スポンジサンダー NO.240 3枚入り」で横方向に磨き「ヘアーライン仕上げ」をします。透明ラッカーをスプレーしておくと良いでしょう。
◆スピーカ穴加工(2023/3/3)
- スピーカの穴もシールに印刷しておき、カバーに貼り付け、2mmのドリルで穴をあけました。
- 穴のパターンについてはスピーカ穴のページをご覧ください。
- 四隅にはスピーカを固定する穴をあけ、皿モミをして、M2の皿ビスでスピーカを取りつけます。
◆基板の取り付けと配線(2023/3/10)
- 内部の配線は0.3の単線を使い、共通部(黄色)、送信部(青色)、受信部(赤色)、AGC(緑色)のように色分けます。.
- ボリュームへの配線は2芯の細いシールド線、高周波が流れる部分は同軸の0.8DQEVを使います。
- 低周波増幅部のボリュームに接続するシールド線の接続ピン以外は基板の周辺に設置していますので、配線が基板上に被ってくることがなくスッキリしています。
- 終段の2SC1971はエミッタがフィンに繋がっているのでケースに直接ねじ止めしています。
- ベースバイアス用のシリコンダイオードと2SC1971は密着させ、シリコングリスを塗って熱的に結合しておきます。
終段2SC1971のフィンをケースにねじ止めして放熱
◆周波数目盛り(2023/3/10)
- 基準となる5度単位の目盛りを作っておき、送信周波数を周波数カウンタで読みながら10kHz単位の周波数とその時の角度を記録します。
- 記録した数値の周波数目盛りを作り、トランシーバに貼り付けます。
- 再度送信周波数を周波数カウンタで読み、もしズレがあれば目盛りを作り直します。
→
(左)基準目盛り (右)作成した周波数目盛り
◆動作確認と調整(2023/3/17)
- 試験台に載せた時に調整をしているため、ケースに収め電池を内蔵した状態での最終調整になり、調整量はごくわずかでした。
- FFTによる出力波形の観測では試作機と同等レベルであり、ラグ板配線を基板化したことによる問題は生じませんでした。
(左)ツートーンジェネレータの波形 (右)出力波形(FFTの1目盛りは12.5MHz)
◆使用充電池(2023/3/17)
1973年に三洋電機から販売が開始されたニッケルカドミウム充電池のカドニカ(1.2V
450mAH @450円?)に始まり、1997年頃からはニッケル水素が販売され、単3で当初1100mAHだった容量が徐々に増えて2500mAHほどになりました。2005年から販売され継ぎ足し充電が可能な三洋のエネループを長年愛用してきましたが、ちょっと高価な点もあり今回はパナソニックのエボルタ充電池(スタンダードモデル 1950mAH)を8本購入しました。価格はアマゾンで2,090円(@261円)。パナソニックのホームページでは継ぎ足し充電可能とあり、移動運用前は常にフル充電でありたい者にとって嬉しい仕様です。
エボルタ充電池(スタンダードモデル)
◆電池の浮き上がり防止(2023/3/17)
単3電池は8本用の電池ボックスに入れますが、リグを倒した時に電源が入らなくなりました。原因は電池とカバーの隙間が3mmあり、衝撃で電池が浮き上がってしまったからです。対策としてカバーにフェルトテープ(2mm厚を2重にする)を貼り付けて電池の浮き上がり防止としました。スポンジ製の隙間テープ等でもよいでしょう。
(左)カバーに貼り付けた浮き上がり防止用クッションテープ (右)2重貼りで4mm厚に
◆移動ワッチをしてみる(2023/3/17)
私が住む伊丹市北部では新築の屋根には太陽光発電を付けている家が多くなっています。日中に21MHzや50MHzを受信すると20kHzおきに「ザー」というノイズがS9で聞こえ、ノイズの谷間でもS5程振っています。日没になるとそのノイズは消えるため、おそらくインバータから発しているのでしょう。7MHzや144MHzでは聞こえません。固定での日中運用は難しいので今回のリグは移動運用を目的に作っています。先日近くの公園へ行ってワッチすると、コンディションも良かったのでしょう、全長1,440mmの21MHz短縮ホイップと3.4mのラジアル線1本でも6(竹富島、与那国島)や8(美唄)の局が受信できました。
宝塚市山手台南公園で移動ワッチ
◆日没後のワッチ(2023/3/17)
18:30頃を過ぎると近隣の太陽光発電のインバータが停止するのか、これまでS5程振っていたノイズがS1ほどまで落ち急に静かになります。アンテナは自宅の屋根裏に張った7MHzベントタイプのダイポールです。
- 2023/2/25 20時過ぎにFKというプリフィックスのフランス語らしきQSOがRS33ほどで入感.。ニューカレドニアまでは距離7,000km。
- 2023/2/27 18時過ぎにロシア・ハバロフスクのR0CDO局が59で入感 距離1500km。
- 2023/3/2 19時過ぎにプリフィックスABの局をRS55で受信 アメリカ西海岸としても距離9,100km。
- 2023/3/4 11時過ぎにフィリピンのDU3T局がRS58で入感 距離2670km。
- 2023/3/9 18時過ぎに沖永良部島JE6TAY局がRS59で入感 距離1050km。
- 2023/3/11 16時過ぎ北海道紋別JH8RJS局がRS55で入感 距離1260km。
- 2023/3/26 16時過ぎ中国・上海BA4DL局がRS59で入感。 距離1355km。
実運用に関してはリグの更なる検証とアンテナ系の整備を進めたいため本稿は一旦締め、実績等は後日追記したいと思います。
◆革ケース作り(2023/7/7)
移動運用時におけるアルミケースの傷つきや擦れ・凹み防止対策として革のケースを作りました。
<一旦終了>
参考文献 (*印)
- 高周波回路の設計・製作 鈴木憲次著 CQ出版社
- ビギナーのためのトランシーバ製作入門AM
SSB編 千葉秀明著 CQ出版社